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剣士の国  作者: quo
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大使館

エド達が村に帰ると宿の改装が行われていた。

大使館としての機能を持たせるために、外に塀を立て、貴賓室や剣士の詰所を作っている。


エドはルカに、先々、塀の中が国になると言った。

ルカは帰りすがらの話で、何となく分かった。

此処が国の特使が人質にならないようにするためだ。ここを兵で攻める事は国を攻めるに等しい。


エド達を剣士達が出迎えた。二個小隊の一部が駐留の準備をしている。

エドが馬を降りると、小隊長が現れ状況を説明した。現在は一時的に村の集会所を借りている。

そして、増員に備えて村の外れに簡易の兵舎を作る準備をしていると言う。


エドが人数が少し多いのではと言うと。小隊長が出てきて言った。

軍の命令で、こちらの守りを手厚くするようにと命令が出ているそうだ。


エドは不審に思った。軍から借りているはずだが命令が直接、軍から発せられている。

アリア達の方も同じなのか。


ルカにアリアの下へ行って、確かめてもらおうと振り返ると、馬を降りようとするルカに剣士の一人が手を差し伸べている。

初めての事だったのか、ルカは戸惑いながらも剣士の手を取り馬から降りた。

書記官は荷物のようにぞんざいに馬から降ろされている。


護衛の剣士達は小隊の剣士達に何かを話している。

襲われた事か。言うなと言ったのに。


話を聞き終わった剣士達はルカの馬を丁寧に扱っている。

エド達の馬は捨て置かれている。


エドは思った。剣士達は軍のよりルカの命令を聞くのではないか。


エドがアリアのところに行って確かめてほしいことがあると言うと、剣士の一人が護衛に付くと言い出した。


ルカに護衛は必要ないだろう。


結局、ルカに二人の剣士が護衛に付くことになった。

おそらく、剣士の二人はルカについて行きたいだけだろう。



リリスはカイン達との連絡場所である宿に向かっている。

ナタリアの茶菓子のざらざらとした食感が残っている。


味は悪くなかった。激しく動いた後に食べると疲れが早く回復すると言う。

本当だろうか。


ミストラを誘おうかと思ったが、ナタリアの茶菓子を食べた後は自室に籠ってしまった。

仕方なく一人で行くことにした。


宿に着いて主人に伝言か手紙は無いかと言うと、何もないと言われた。

そう、都合よく当たりは引くわけはない。

宿を出ると例の串焼き屋がある。行き交う人々。子供の声。荷馬車の音。

最近では拠点にミレイラのところにと、何かと忙しかった。


気分転換に町を散策でもしようか。


リリスが通りに出ようとしたとき、男が近づいてきた。

町の人間にしては身なりがいい。


「リリス様でしょうか」

リリスがそうだと言って腰の短剣に手を伸ばすのを見た男は青ざめている。

刺客の類では無そうだ。


男はカインの伝言を預かっていると言った。宿ではなく直接渡すように指示され、アリアかガーランドが現れるのを待っていたと言った。


リリスは手紙を受け取ると、そそくさと立ち去った。

斬られるとでも思ったのか。


リリスが通りの裏手に入って手紙を開封した。

上質な紙の便せんが二枚。いずれもカインの文字だ。


手紙にはエルンスト個人に金が流れ込んでいると書かれている。

そして、内密と前置きされ、「西側からも金が流れ込んでいる可能性がある」と書かれていた。


ミストラの国からなんでだ。


手紙には、調査中であるとされている。

アリアは地図を受け取った後のアリアの態度を思い出した。

余計な情報が上がって来たのが気に食わなかったのか。


これが本当なら、ディートスとかいう黒幕の件は、西の国がエンデオを通じてローレリア領を手に入れるための狂言と言えなくもない。

しかし、調査中だ。エルンストの件だけミストラに伝えるか。アリアにはどうする。


リリスはアリアとの一戦を思い出した。

あの女の剣に迷いはない。真直ぐな剣だ。

ナタリアの言葉が頭を過る「アリアは何かを知っている」


リリスはミストラにではなく、アリアに直接聞いてみることにした。

真直ぐな剣の使い手は、どんな反応をするのか。


リリスはふと思った。「私は手紙の内容よりアリアに興味を持っているんじゃないか」

自分が剣を交えていた時、正直に負けていると持っていた。

ルカもそうだが、アリアにも魅かれる何かがある。


リリスはもう一枚の便せんに目を通した。

カインは当面、生家に留まって情報を集めると書いてあった。

情報のやり取りは、宿に使用人を住まわせる。使用人を使えば早いとある。


実家に帰っていたのか。しかし、こんな情報を集めることが出来る実家とは一体、何を営んでいるのか。

リリスは便せんに透かしがあるのに気付いた。

「フォルト家」の物だ。


リリスは裏の仕事をしていた時に聞いたことがあった。

ソレイク領の金の流れを操っている名家だ。

カインはフォルト家のゆかりの人間なのか。


リリスは余計な詮索をやめた。自分が王族の血筋であることは、他の二人には行っていない。

ガーランドも意外にも貴族の出身かもしれない。


私たちとルカにアリア、ミストラにナタリア。ミレイラとティファニアもそうだ。

もしかすると、皆は誰かに呼ばれたのかもしれない。


「一蓮托生」

その言葉を思い出したリリスは、拠点へ帰ることにした。

通りに出ると、遠くに槍を担いだ大男が歩いてくる。


あいつも「一蓮托生」だ。


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