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剣士の国  作者: quo
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何処にでもいる男

男はフロドと言った。

ローレリアの端のこの町からエンデオ領に入りたいそうだ。


それなら商隊に乗せてもらうか町馬車を乗り継ぐかで行けるはずだ。

何故そうしないか尋ねると、一人旅で騙された経験があるからだそうだ。

だから、用心棒を雇いたいと言った。


分からない話ではない。一人旅の初心者と見れば騙しにかかる者がいる。

一緒に乗せてやると言ってみぐるみ剥ぐ。賃料を相場を偽る。良く聞く話だ。

しかし、金で動く傭兵も同じような輩はいる。


男は早速、町を出ると言い出した。

急いで帰りたいので町には最低限しか寄らずに野営しながら進みたいと言う。


ガーランドはフロドと言うこの男が野営の経験があるのかと疑問に思った。

普通う、野営は極力避けるのだか。


ガーランドがそんな案では護衛は無理だと言って立ち去ろうとすると、フロドは金をはずむからと引き留めた。

なぜそんなに急ぐのか教えてくれないと、護衛の話には乗れないと言うとフロドは暫く考えてから言った。

「追われているんだ」


フロドの話によると、ローレイラに近い土地に住む小貴族の息子だが、盗賊団に襲われて命からがら逃げだしたと言う。

なせ衛兵に助けを求めないのかと尋ねると、両親が人質に取られていて手が足せない。

身代金を工面するためにエンデオの親戚に会うつもりだと言う。


誰が信じるんだ。


ガーランドは訳ありもいいところだと思ったが、ローレリアの名が出たことで当たりを引いたかもしれないと思った。

そして、金があるのは確かだ。そして、寝られずにいる位だから追われているのも本当かもしれない。


ガーランドは依頼を受けることにした。

追われているならこちらの身の安全も考えなければならない。

出発を明日の早朝にすると言いうと、今晩は自分の部屋で番をしてくれと言う。断ると金を出すとまでいう。


ガーランドは渋々分かったと言うと、赤い髪の女の事を思い出した。

リリスと一緒の部屋でなければ、挨拶して出発していたものを。

まさか知らぬ男と一晩同じ部屋で過ごすとは。悔やんでも悔やみきれない。



ガーランドとフロドは朝一番で町を出た。

フロドには、ここからいくつかの町と村を経由してエンデオに向かう計画を話したが、立ち寄る町や村は少なくしてくれと言われた。


雇われている以上は、雇い主の事を聞かなくてはならない。


フロドは昼を過ぎるころ、次の町には寄らずにその向こうの村まで行きたいと言い出した。

それでは夜通し走ることになる。休憩は隠れたところで寝転がるくらいしかできないと言うと、それでいいと言う。


普通の人間ではない。ある程度の訓練を受けた者だ。

ガーランドは馬が疲れるまで走ることにした。


夜になり馬が疲れているのが分かる。

ガーランドはフロドに休憩すると言った。


フロドは分かったと言うと、手早く自分の寝床を作った。

ガーランドは、明日からの行動予定をフロドと打ち合わせしたあと、携行食で腹を満たした。


フロドの携行食は、この辺りでは見ない物だ。主に小麦粉と蜂蜜、木の実を固めて出来ている。

ガーランドの携行食は固いチーズと干し肉、乾燥して固めた果物だ。


ガーランドはフロドの携行食をみて珍しいなと言うと、たまたま行商人から買ったと言う。

ガーランドは自分の出身地や槍の使い方など、雑談から情報を引き出そうとしたが、フロドからうるさいと言われておしまいとなった。


こんな時、リリスなら巧妙に情報を引き出して何者なのか調べることが出来るのだが。

やはり俺は戦場で槍を振るっていた方が似合っていると思うと、ガーランドも休むことにした。


次の朝、片づけを済ませると一旦村に寄ることにした。

昼の手前で着いたので馬を休めたい。夕方まで留まることにした。

相変わらずフロドの様子はおかしい。しきりに周りの目を気にしている。


野営を続ける見込みなので、携行食や水を買いだめしておこうと店を探していると、後ろについてくる来る者の気配がする。何回か立ち止まっては振り返るが怪しい者は誰もいないように思える。

正直に言って、この手の仕事はリリスが得意だったのでまかせっきりだった。


一人になった時の事を考えて、今度、リリスに教えてもらおう。


携行食に水を買うと、馬のところで待っているはずのフロドがいない。

少し外しているだけか。


当たりを見渡すが見渡すが、やはりいない。

まわりには馬をつないで水を飲ませる者、荷馬車を整備する者、座って休憩する者しかいない。

ガーランドの脇を荷馬車が通る。


御者台の男は商人ではない。独特な感じがする。目の前で人が倒れても驚きもしないような冷たい雰囲気。

ガーランドが声をかける「あんた、フロドを何処へ連れ去るつもりだ」

探り合いなどしない。この男がフロドを連れ去ろうとしている。

そして槍を腰だめに構えると、男が答える前に荷馬車の車輪を薙ぎ払った。


車輪は真っ二つに割れて荷台が傾く。御者の男は飛びのき際にナイフを投げるが、薙ぎ払った槍を持ち替えて回転させて打ち落とした。

そして、槍を戻すと大きく引いて構えて、荷馬車の幌に突き立てた。

「浅かったか」


中からもう一人、男が幌を切り裂き飛び出てきた、肩をわずかに切り裂かれている。

槍を構えて投げようとしたが、騒ぎに集まった群衆に紛れ込んだ。


荷馬車の中に布に撒かれた人間らしきものがある。解くと猿ぐつわをされたフロドが出てきた。

「よくわかったな」と言うと、フロドはガーランドに礼を言った。

悪くすれば槍が突き刺さっていてのだか。



ガーランドとフロドは、急ぎ馬に乗って町を飛び出した。

「あれが追っ手か!」とガーランドが言うと、フロドがそうだと答えた。

何人だと聞いてみたが分からないと言う。


とりあえずは、町から距離を取り安全と思われる場所に避難しなくてはならない。

ガーランドとフロドが街道沿いに走っていると、剣を持った連中が十名はこちらを見ている。

待ち伏せだ。しかし、昼間に人通りのあるところで大胆な奴らだ。


後ろを走るフロドに突破するぞと言って振り向くと、弓をつがえた男がいる。


いつの間に。


弓の男は伏せろと言うと、前にいる連中に矢を三連射した。

リリスと同じ腕前かと思いきや、放たれた矢は馬に当たるか剣の男をかすめるだけだった。


気付くと横に女が並走してきた、短剣を抜くとガーランドに

「彼らを傷つけるのはお止めください。そのまま駆け抜けてください」

ガーランドは何者か分からないが、敵ではなさそうだと思った。


後方の男は次々と矢を放つ。前を塞ぐ連中は矢を剣で打ち払う者、暴れる馬を御するのに戸惑うもので混乱している。

当てるつもりが無いのか。


女が前に出て二人の男に襲いかかる。短剣で剣を打ち払い、斬りつけてくる剣を避けて男のわき腹を剣の柄で突く。

「お早く!」

女は自分に剣を持った連中の前に立ちはだかる。剣を持った男たちは女に殺到する。


残しては行けん。


ガーランドは引き返すと槍を逆手に持ち、男どもを叩きはらい突きはらった。

五人の男が一瞬で落馬して地面に叩きつけられた。

「俺についてこい!」

ガーランドが街道を突き抜けた。女は踵を返し、弓の男は後方に矢を放ちつつ、追っ手に牽制をかけている。


女はガーランドに並走してきた。

「お見事です。ですがこっちです」


女はガーランドを連れて山手の道に入り込んだ。


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