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剣士の国  作者: quo
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帰る場所

契約が終わったあと、村長にエドはランセロッツ家の反応について聞いた。


名目上は国交樹立への助力とローレイラの主要産業だった絹の輸入、そしてその技術移転。

そして、各領地での貿易振興。

要するに金であったが、内々に剣士団の派遣を申し入れている。


絹に関しては、西方の国の一つが興味を示している。国の専売にすれば、なかなかの収益になる。

しかし、名目上は金が無いと言いう事で、剣士団の派遣で補うと言う形をとりたい。


ティファニアに関して、どんな脅迫がなされているのか。

場合によっては亡命者としての受け入れも可能である。


そして、王が軍を何処まで動かすかによるが、拠点までを国の勢力下に置くか。


エドは王朝のお墨付きで、アリア達が逃げた剣士を追い、ディートスを捕縛する。あとは緩やかに手を引くことが理想だと考えている。

後は賠償金の話が必ず出てくる。いくらまで値切るか。

国の技術でも使い古しで脅威が少ない物を提供することに乗ってくるか。


欲を言えば、三領主の均衡を崩さぬ程度に東国に浸透し、国が東国と西方の面国々との交易の窓口になるのが理想だ。

そのためだったら、国境の街道整備は国が見てもいい。


だから、ランセロッツ家が、そしてティファニアがローレイラをあきらめるとなれば、こちらは関知しない。

そして、脅迫の内容次第ではランセロッツ家からも手を引き、危険だが監査役の連中だけで異国の地で狩りを続けてもらわなければならない。


エドは部屋の隅のルカをみた。

指示通りに無表情であったようだが、書記官がこちらに目配せをしている。

ここからの話を聞いたらどうなるだろうか。


アリアはここまで予測して、代わりにルカを寄こしたのか。


村長はランセロッツ家の反応について語りだした。

「ティファニア様の身を案じていらっしゃいました」

「後ろ盾が必要な事を仰られていました。なにか、圧力をかけられえているようです」

「安全が確保されるなら、屋敷も領地も要らなとまで。そこにあなた方の貿易、ひいては国交の話です」

「不安は口にしておられましたが、会うことに戸惑いはありませんでした」


エドは思った。想定の範囲内の反応だ。

そして、ミレイラの話は出てこない。やはり自分の娘がかわいいものだ。

かの家の後継者は決まっている。ティファニアはミレイラの事は見捨てないだろうが。


ティファニアがローレイラに留まる事を決意したときにランセロッツ家がどう動くか。

ランセロッツ家が継続を願って動かなくなれば、東国への国交樹立の足がかりを失う。


仮に、ディートスの配下が言った庇護者、そして新しい地がローレリア領だとしたら、軍がローレリア自体を消しにかかるだろう。


絶対にそうはさせない。


エドは、またルカを見た。相変わらず表情はない。

話しの筋は見えているのか。



村長との話が終わると、エドたちはランセロッツ家に向かう準備を始めた。

剣士がランセロッツ家周辺はきれいだと報告してきた。

かねてから見張らせてはいたが、話が漏れる心配はない。


あとは、剣士団と到着は深夜になるだろう。

待っていられないし、大人数ではいけない。

これまで通りに剣士二人と書記官。ルカはどうするか。


戦力的には欲しいところだが、報告書によれば余計なことをする訳ではないが、なにかを引き寄せる感じがする。

しかし、追っている剣士が現れれば、二人の剣士では歯が立たないだろう。


ルカに付いてくるかと尋ねると行くと言う。

書記官の目が何かを訴えている様だが、帯同することにした。



ルカが荷物をまとめて馬に積んでいると、あの少女がやって来た。

「話せませんか」

ルカと少女は宿の前にある長椅子に腰かけた。

ちょうど木陰になって涼しい。


「町の道場に行きます」

少女は言った。

「ルカさんをを見て、私には無理だと思いました。でも、自分に嘘をつきながら生きたくはない」

「才が無いと思うまでやってい見たい。父はいつでも帰って来いと言ってくれます」

「いつでも帰る事が出来る。これは甘いことだと思いますか」


ルカは首を振った。

「ルカさんは斬っても何も残らないって言いましたけど、私はルカさんの剣のおかげてここにいます」


少女は村に居るときには声をかけてほしい。そして工房の休み時間が終わると言って走り去った。


ルカは少女を見送った後、長椅子に腰かけるとぼんやりと地面を見つめた。

蟻が蝶の羽を運んでいる。


巣穴に持って帰るんだ。


ルカは自分が、いつでも戻る事の出来るところがどこかと言えば、執行人としての狩り場しかないと思った。

昨日のでテーブルを囲む家族の姿。

アリアは疲れて引退したら、家に戻るのだろうか。その時、私は何処に居ればいいのか。


一人は嫌だ。帰るところが欲しい。


剣士の一人がルカを呼んだ。出発の時間だ。

ルカは特使の一団と一緒にティファニアの生家に向かった。


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