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剣士の国  作者: quo
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雨の日

「監査役」が現れた。そして男が数人現れ、剣士たちの骸を片付けに取り掛かった。


「監査役」は組織の名前で、一人の肩書ではない。派遣された剣士たちが不正をしていないか、監視する組織で、必要ならば間者を送り込むこともある。


不正の証拠を押さえて、剣士を国に送り返するのが仕事で、その場で取り押さえるくらいの実力はある。

しかし、今日の剣士達のような使い手にはかなわない。だから、強力な剣士が必要だ。そして極刑が決まっていれば、現地処分となる。それらを行うのが「執行人」。要するに殺し屋だ。


彼は、この地域の担当者だ。アリアが今日の宿の事を聞くと、監査役は、管轄外と答えた。

「来て、見て、持って帰る」。アリアはそういうと、楽な仕事だね。と付け加えた。監査役の男はアリアの皮肉を無視して、森の中へ消えていった。


雨水が水面と木の葉を、柔らかに打つ音だけが残った。


アリアは、監査役の態度に憤慨した。そして監査役への愚痴を言い始めた。この案件に着手したころから、気に食わない様子だった。ルカはそれを聞きながら、頬の傷をゆっくりと撫でていた。ルカはアリアに、大雨になるかもしれないと言った。


ルカの雨の予報はよく当たる。アリアはすぐに街道に出て、少し先にある宿場町に行くことを提案した。

ルカがうなずく前に、アリアは彼女の手を引いて森に入り、山道を進んだ。


二人は暗くなる前に宿場町までたどり着いた。雨は強くなっていきていた。この雨でほとんどの宿は満室で、何件も回って一部屋だけ確保した。

幸い、年期は入っているが気の利くいい宿で、部屋着と、ぬるいが水場に湯を準備していた。自由に使っていいそうだ。


二人は湯で体を拭くと、部屋着に着替え、濡れた服を部屋に干した。

食事は携行食を食べた。小麦粉と木の実、少しの砂糖を混ぜて焼き固めたもので、ほんのり甘い。水なしでもなんとか食べることが出来るし、怪我や病気で体力の落ちているときには、お湯に溶かしてスープにして飲むようにできている。


この辺では、よく出回っているものだ。今度、忘れずに買い足しておかねば。


暗くなったので、アリアはランプを借りに行った。良心的な値段だったので、二つ借りた。

二人は武具の手入れと携行品のチェックが終わると、することがなくなった。


雨が屋根を打つ音だけが響く。


アリアは体を伸ばしたり、瞑想をしたりして寝るまでの時間を潰した。

ルカは部屋の隅で剣を抱いて座り込んで、壁にもたれかかった。ランプの周りに蛾が飛んでいるのを、ぼんやりと眺めていた。


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