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剣士の国  作者: quo
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剣士の国の物語

かつて、世界の覇権を握ろうとした剣士の国。

敗れて残ったのは、剣士としての矜持。「一振りの剣であること」

ある世界の荒野に剣士の国がありました。その国の国民はみな、強い剣士でした。子供のころから剣技を学び、その強さを競い合っていいました。強いことこそが正義と、みんなが信じていました。


剣士の国の土地はとてもやせていました。だから多くの国をと戦い、富を得ていました。強いことが正義であり、弱いものから何を奪ってもよいと考えていました。剣士の国は侵略の国になりました。


周りの国々は剣士の国を倒そうと同盟を組んで戦いました。長い長い戦いになりました。


剣士の国の王が戦いの中で倒れました。そして息子が新しい王になりました。しかし、王妃も戦場で倒れ、多くの国民が倒れていきました。小さな子供たちまでもです。


新しい王は考えました。本当の正義とは何か本当の強さとは何か。国民は、剣士は仲間が殺されると、憎しみに任せて剣を振るい、敵を倒していきます。敵も憎しみを込めて剣を振るってきます。


そんな毎日が続きます。


新しい王は一振りの剣を持ちました。王にしか持てない剣です。それは美しく、数えきれないほ鍛えられた剣です。何者でもない清廉であるだけの存在としてそこになりました。それには善も悪もなく、只々、清廉な存在でした。何物をにも染まらず、曲がることはなく、錆びることもなく永遠にそこにあり続けます。


新しい王は気づきました。本当の強さとは何か。


新しい王は、剣を掲げて言いました。「一振りの剣であれ」と。剣士たちは戦いを止め、新しい王に傅いて言いました。「我々は一振りの剣。剣は自ら戦わず、争わず、憎しまず、奪わず、清廉な姿でそこに存在することを誓います。」




剣士の国は降伏しました。賠償を負った剣士の国には何もありませんでした。新しい剣士の王は言いました。我々は剣士。我々は一振りの剣。これをもって国々への賠償としようと。


剣士の国から剣士たちが送られました。精強な剣士たちです。剣士を賠償として受け取った国は、兵力にしました。剣士たちは強かったので活躍しました。


しかし、賠償に充てられた剣士達の生活は過酷でした。食料はその国の兵士の半分ももらえず、任務は倍でした。戦争では常に先頭に立たされ、軍隊が敗走するときには、いつも殿を務めました。剣士のいる国同士で戦いが起きれば、剣士同士で殺しあいました。一振りの剣として。


剣士たちは、一振りの剣。感情などありません。だから戦わない者には剣を振るわず、略奪はしませんでした。だから喜怒哀楽を捨てるため、白い面をするようになりました。白い面をかぶった剣士た剣士達。


賠償が終わり、和睦から長い年月が流れました。この頃になると、剣士たちは傭兵として他国が雇うようになりました。剣士がが多くいることが、その国の武力と財力の証となりました。


ある国の領主は、剣士を雇い、華麗な鎧を着せて、屋敷や自分を警護させて自慢するほどでした。


多くの剣士が賠償の対価として死にましたが、次の剣士達の礎になりました。そして、剣士の国は、豊かになりました。しかし、任務は相変わらず過酷でした。それでも王への誓いは変わることはありませんでした。


剣士たちは誠実です。そして多くの金品を望みません。国が管理していたので、困ることはありませんでした。自分の損得しか考えない傭兵のように、裏切ったり多くの金品を要求すこともしません。だから、人々は商隊の護衛や、山賊退治をお願いするようになりました。剣士の国は、依頼主の身の丈に合った金品し求めませんでした。


そして、その誠実さと強さから、みんなから尊敬されました。いつしか、人々は尊敬の念を込めて「白面さん」と呼ばれるようになりました。



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