ボクっ娘天才少女がヤンデレに捕まって一生幸せに暮らす話
天啓が降りてきました
明日のご飯は何にしよう。そんなことをぼんやりと考えながら、カレーの鍋をかき混ぜる。
とても贅沢な悩み。社畜をやっていた頃には考えもしなかった。
それもこれもあの子の……
「―り!麻里!」
後ろから呼ばれていることに気づいて、慌てて振り返る。
「ごめんね、由宇。ちょっとぼーっとしてた」
「まったく、いくら呼んでも上の空なのは悲しい。なにか考え事なのか?」
言葉の通りに悲しそうな顔をする由宇。
由宇の幼げな顔立ちも相まって罪悪感がすごい。
このままではいけないと思って、ちょっとした冗談をはさむことにする。
「大したことじゃないわ。それよりもごめんなさい。まだカレーは出来てないの」
「そうなのか?麻里の作るカレーはおいしいから食べるのが楽しみだ!って、そうじゃなくてだな」
ノリツッコミみたいな返しかたをされて、思わず少し吹き出してしまった。
それを誤魔化すかのように、今度こそ本題に入る。
「それじゃあどうしたの?」
「ふっふっふっ…麻里!新しい薬ができたぞ!」
そう言って由宇は、着ていた白衣のポケットから試験管を取り出した。
「由宇、またよくわからないおくすり作ったの?よっぽど暇なのね」
うわぁ…すごいドヤ顔してる。褒めてはないんだけどね。
高砂由宇。16歳にして人類の歴史を半世紀進めたとすら言われる天才少女である。
でも今は――
「ボクはもう、不自由のない人生を数回送れるほどにはお金を持っている。そしてこれ以上働く気はない!なので好きなことができるというわけだな!」
この調子である。
「はいはい、それはもう何度も聞いたわよ。それで?今日はどんなお薬?」
私の仕事は由宇の身の回りのお世話だけだけど、たまに新薬のテストなんかもしている。
ボーナスが貰えるし、由宇のお手伝いができるなら私としても悪くはない。
今回のお薬は――見た限りでは無色透明で少しどろりとしている。
「今日は、えっと…風邪薬?」
「なんで疑問形なのよ…怪しいものじゃないでしょうね」
「だ、大丈夫だ!ボクも一回飲んだしな。変な副作用とかはないと思う」
……まぁ、いいか。
私は由宇から試験管を受け取って一気に呷る。
「……どうだ?なにか変化はあるか?」
不安げにこちらを見上げる由宇にちょっとドキドキする。
「いつも通り、だと思うわよ?」
「えっと、動悸がするとか、何か感情が湧き上がってくるとか」
「特にはないわね」
強いて言うならいつも通り由宇にときめいてる。
「……そうか。ありがとう、麻里」
気持ち肩を落とした様子で、部屋に帰っていく由宇。
どうしたんだろう。
私は好奇心を抑えきれずに由宇の後をつける。
由宇が部屋に入ったところで、ドアをそっと開けて中の様子を見てみると―
「むう、どうして惚れ薬が効かないんだ?理論は完璧だし、実験でも効果が出たというのに…」
惚れ薬?なるほど、そういうことだったのね。
それならそうと言ってくれれば、私は…
「こうなったら次はさらに強い薬を作って…いや、いっそのこと一度媚薬にでも頼ってみるか?」
さてと、準備をしなくちゃね。
「由宇ー、ちょっといいかな」
準備が出来たので部屋まで由宇を迎えに行くと、ポケットに何かしまいながら出てきた。
さっき言ってた媚薬かな?
「どうしたんだ?麻里」
「大事な話があるんだけど、私の部屋まで一緒に来てくれない?」
それを聞いた由宇は驚いているけど、それも当然だろう。
なにせ私は由宇を今まで自分の部屋に入れたことはないし、なんなら覗かないように頼んですらいたのだから。
「そっ、それは麻里の部屋に入れてくれるってことか?」
期待に満ちた目。
私も由宇に自分の部屋を見せるのが楽しみで仕方ない。
「うん。じゃあ行こうか」
私の部屋にはあっという間に着いた。
部屋の前でこちらを振り返る由宇に、部屋に入るように促す。
「…じゃあ、いくぞ」
由宇が緊張した様子で中に入っていく。
…が、すぐに立ち止まった。
まあこの部屋を見たらそうなるのが普通だとは思う。
いたるところに張り付けられた由宇の写真。
由宇のぬいぐるみ。由宇の抱き枕。
全部私の宝物だ。
「麻里…」
由宇が少し怯えたような、未だ状況を理解できていない表情でこちらに振り返る。
私はにっこり笑って由宇に近づき、おもむろに由宇の口にハンカチを押し当てた。
「んぐっ!」
私は意識を失った由宇をベッドに乗せて、手錠と足かせを嵌めていく。
「んっ……」
「あれ?もう起きちゃったのかな?」
「ここは……あれ?」
まだ寝ぼけ眼な由宇、かわいい
「おはよう由宇」
「麻里…?――ってそうだ、ボクは麻里に!」
「そうだよ、由宇のこと捕まえちゃった♪」
「……どうしてこんなことをしたんだ?それにこの部屋は一体…」
冷静に状況を判断しようとする由宇、かわいい
「私はね?ずっと由宇のことが好きだったんだよ?」
「でも由宇が私のことどう思ってるかわかんなかったし」
「由宇はすごい人だから私とは釣り合わないって思ってたし」
「ずっとずっと我慢してきたんだ」
若干怯えてる由宇、かわいい
「由宇が私に惚れ薬なんか飲まそうとするから」
「由宇がいけないんだよ?私は我慢してたのに」
「…でも、両思いみたいだし、もういいよね」
私は由宇に覆いかぶさる。
「……待ってくれ」
「どうしたの?」
「麻里がそんなふうに思ってくれてたなんて知らなかった。でも嬉しいよ」
「そうだよね。だって私たち両思いなんだもん」
「だから、この拘束を外してくれないか?」
「…………」
「受け入れてもらえるか不安だったんだろ?大丈夫、部屋は…正直ちょっと引いたがボクだって麻里のことが好きなんだ。これがあるとボクが麻里を抱きしめられない」
それを聞いた私は、無言でゆっくりと拘束を外す。
すると拘束がとけるやいなや、由宇は私にキスしてきた。
私は抑えがきかず、舌をねじこむ。
しかしそれすら受け入れられて―――
結局そのまま朝まで愛し合って、カレーを食べてからもう一日ベッドの上で過ごし…落ち着いたのは次の日の晩だった。
「それにしても両思いだったなんてびっくりしちゃったよ」
「ボクだって驚いたよ。まさか、麻里の部屋があんな風になってただなんて……」
顔を赤らめる由宇がかわいくて、すかさず首筋にキスをする。
「い、いきなりだな麻里は……まぁ悪い気はしないんだが」
「ずっと一緒にいようね?」
そう言うと、由宇は私の体に手を回し―――どこからともなく手錠を取り出して私にかけた。
「ああ、もちろんさ」
由宇もヤンだったというお話
筆が乗りかけてあやうくノクターン行くとこだった…
麻里は由宇の近所のお姉さんで、社畜してたところをお手伝いさんとして拾われた設定。どこかに入れようと思ってたんだけどね…
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