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第12話 協力者

真っ暗な迷路のような道をケイタは秘書の先導で進んでいた。庭園の奥まった場所にある地下への出入り口からこの通路に入ってからというもの、ケイタは数十分近くこの曲がりくねったこの石造りの通路を歩き続けていた


通路に鳴り響く足音にも聞き飽きていたころ、突如秘書が足を止めた


「着きました」


「えっと…」


そういわれて前を確認したケイタだったが目の前には壁しかなかった。訳が分からなかったケイタは、これから何が起きるのかと秘書の様子を確認する。おもむろに秘書が両手を壁にくっつけた時、かすかな魔力の反応と共に石の壁が動き出した


「へぇ、魔力で反応する隠し扉ってわけですか。人間は面白いものを作りますね」


横で見ていたナギが感心していると、秘書が一歩前へと進み正面へ礼をした


「お待たせいたしました陛下」


「構わん。ケイタよく来てくれたな」


そこにいたのは先ほどまで一緒に食事をしていた国王だった。しかし晩餐会の時とは違い落ち着き払っており纏う雰囲気が若干変わったような印象をケイタは受けた。王の隣には黙って佇んでいるマンゼンがいた


「ええ、それで内密の話とは何かお聞きしてもよろしいですか?」


「はは、さっそく本題に移ろうと言うか。まぁよい、そこに座りたまえ」


ケイタは王に差し出された先にあったソファのような椅子に腰かける。テーブルを挟んで対面に王が座り隣にはマンゼン相変わらずマンゼンが立っている


「それで今回おぬしを呼んだのは、我が王国が現状抱えている問題について議論し協力を得たいと思ったのだ。もちろんそれはおぬしの利益…目的の助けにもなると考えている」


「現状の問題…ですか」


ここに至るまでにあったいろいろなことが頭に浮かぶが、まとまった考えは出ず横にいるナギに目配せする


「ふぅん…詳しく話を聞いてみましょうか」


「詳しくお話をお聞かせ願えますか?」


「もちろんだ。…実はこのところ我が王国では邪教徒の破壊活動が活発化していてな。もちろん邪神の軍勢が世界を滅ぼさんと北方から押し寄せるこの終末の世では、どこで邪教徒や魔物が暴れていてもおかしな光景ではなくなっているが…それにしてはあまりに動きが組織的すぎたのだ。そして長年における私やマンゼン等の信頼のおける家臣たちの調査の結果、裏で糸を引いているのが我が側近ギャリンであることが判明したのだ」


「なるほど。やはりあいつが…」


「やっぱりですか。なんか臭いましたからね」


ケイタの意見にナギが横で相槌を打つ


「か、感づいておったのか? うーむそうか…実は我々はギャリンが王国郊外で邪教徒を束ね実験を主導し、あの邪教騎士ベックルと接触したことも掴んでいる。奴がこの国で邪教徒の破壊活動を主導していたのはほぼ疑いようのない事実だ」


「ふーん、でも王様はこんな大事なことを我々に言う気になったんでしょう? 一応ケイタさんはよそ者の流れ者ってことになってると思うんですけど」


「…それで、なんでそんな大事なことを俺に?」


「それは先ほどの決闘の結果であるな」


そう言われ王の横に立っていたマンゼンが反応した


「私とケイタ殿が決闘した際に奥底に眠る魔力の性質を見させてもらったのだ」


「ほう? 大したもんですね」


ナギが関心したように言う


「貴殿の膨大で荒い魔力の中でも意識を研ぎ澄ませば奥底にある強い神聖な力は感じ取れる。その結果から少なくとも邪教徒ではないことは確かなのだが、察するにケイタ殿は聖地から来た聖騎士なのではないかな?」


まったく聞いたことのない単語が出てきてケイタはぽかんとする


「ギャリンはまだ私が即位する前、父である先代のころから使え始めたのだ。ある時都で突如邪教徒が蜂起し宮殿が取り囲まれたことがあってな。あの絶体絶命の状況で颯爽と現れ、邪教徒を瞬く間に追い払ったのがギャリンだった。あの出来事があってから先代はギャリンを全面的に信頼し自らの側近としたのだが、それから奴は権勢を利用し自らに従うものを集め派閥を作り、さらには孤児院なぞ開いてそこで騎士を育成し始めた。いまや奴は政治的影響力だけでなく武力まで手に入れている」


王は深刻そうな顔で両手を組んだ


「我々は奴に対抗するために力を欲しておるのだ。おぬしが聖地から邪教徒殲滅の任を受けて派遣された聖騎士であるなら我々と利害が一致する筈であろう。我々は必要な情報の全てを与え全面的に協力する。…無論欲するのであれば今後は聖地への寄進も増やそう。今の倍だ。どうだろう、考えてくれるかな?」


王の言いたいことは分かったが、ケイタは一つだけ勘違いがあるように感じた


「…聖地ってのは一体何の話ですか?」


王は少し呆れたように目を逸らす。代わりにマンゼンが答えた


「…聖地とは女神信仰教会の総本山であり、この終末の世において邪教殲滅を掲げ人類の守護者として世界中に強力な聖騎士を派遣している。ケイタ殿が来たところであろう? あまりからかわないでほしいのだがな」


「うーん…」


ケイタはまず、なにから説明すべきか分からず考え込む


「ケイタさん、その言い方は皮肉にしか聞こえませんよ…そうですね、いっそもうここでこの二人に正体を明かしましょうか」


ケイタはナギへの返答のつもりで驚いたように目を動かす


「はっきりと敵のめぼしもつきましたし、ここからこの二人の全面的な協力が得られるなら色んなことがやりやすくなりますからね。時には大胆な行動も必要です」


ケイタにはまだ少し迷いがあったが、自分よりはるかに賢いはずのナギがそういうのだから、という思いが勝った。ケイタ一つ深呼吸する


「いや…実は俺は聖地とは関係ありません。この神聖な力は女神に直接、救世主として世界を救うために選ばれたときに授かったものです」


王もマンゼンも言われたことの意味が理解できず硬直していた。そんな二人の目の前に信じがたい光景が現れる。ケイタの背後に現れたその人物の姿に視線が釘付けとなった


「忠実なる我が信徒よ。私の姿が見えますか?」


「あ、あなたは…!」


王が絞り出すような声で答える。神聖な魔力がケイタの後方から、照り付ける日差しのように放たれていた


「私はあなた方の女神ですよ。あなたは今日までよく邪教徒の魔の手から人々の生命と信仰を守りましたね。実に敬虔な行いで賞賛に値します。今あなたの目の前にいる男は邪教徒を殲滅するために私が送り込んだ最強の戦士にしてこの世界の救世主です。しばし邪教徒どもに後れを取れましたが今や反撃の時、その男の助けとなって世界を救うために、今後も働いてくれますね?」


気が付けば王はおもむろに椅子から降りて膝を付き、マンゼンもまた同じ姿勢で涙を流していた

それがナギの問いへの答えであるかのように王は黙って頭を垂れる


「おぉ…本当にあなたなのですか…いと尊き慈悲の女神よ、あなた様のお言葉、この胸にしかと刻み付けました。わが生涯、全身全霊を持ってあなたのために働かせていただくと誓います」


「わ、私もです。持てる全ての力でケイタ様を支えると誓います」


先ほどまでの堂々とした態度が嘘のように平伏する王の様子にケイタは戸惑う。そして彼らにそんな態度を取らせてしまうほどの、この世界におけるナギの存在の大きさに気付かされた


「よろしい、あなた方を信頼しています…では今後の作戦について話しましょうか」


床に座ったままの王、マンゼンを前にナギは自らの戦略を語り始めるのだった



――――――――――――――――――――



夜も更け、ケイタは屋敷へと帰りナギと共に王やマンゼンと話した内容をおさらいしていた


「先ほども言いましたが、ギャリンがこの国における邪教の手先と判明した以上問題を放っておくわけにも行きませんし、彼の陰謀の阻止を優先させ旅のことはいったん後回しにしましょう」


「わかりました…でもそれなら今からでもギャリンの居場所を聞き出して俺が殺しに行けば万事解決なんじゃないですか?」


余りに突拍子のない提案だったのか珍しくナギが困ったような顔をした


「だ、大胆な発想ですね。しかし彼がベックルにしたように悪魔の力を授ける能力を持っているなら侮るのは危険です。もしベックルのように悪魔に変身できる人間が複数人いて、それを常に身の周りに侍らせているとすればいくらあなたでも考え無しに彼に戦いを挑めば返り討ちに会うかもしれません。ですが幸いにも今は国王の全面協力がありますから、情報提供を受けながら彼が確実に一人になったタイミングで攻撃を仕掛けるのがよいでしょう」


ナギの話はとても納得のいくものでケイタは黙って頷くほかなかった


「ひとまず、今ケイタさんがやるべきはギャリンの動向に注意を払いつつも鍛錬と情報収集、そして英気を養うことです」


「わかりました。そうします」


作戦会議を終え、ナギの姿が消えたところでケイタはベットに潜り早速英気を養うため眠りにつくのだった


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