第1話 気が付くとそこは
どうも、最後になろうに投稿してから二年くらい間が開きました
前作は羞恥心を刺激されるので削除しましたが今回から連載を新しく始めさせてもらおうと思います。よろしくお願いします
ぼんやりとした意識の中、重い瞼をゆっくりと持ち上げる
まばゆい光の後に現れたのは、見渡す限りどこまでも真っ白な空間だった
「うーん?」
――――おかしい
東圭太は見覚えのない光景に混乱していた
夜中にパソコンの電源を落とし、布団に入ったところまでは記憶している
しかし目の前には薄暗く散らかった自室の面影は何処にもない
夢でも見ているのだろうかと、非現実的な体験に思考は活動を放棄していた
「おぉ、やっと目覚めましたね!」
その時、美しくも明るい声が圭太の頭に”響く”
反射的に振りむけば、そこには可愛らしく微笑む絶世の美女が佇んでいた
「ん? もしもーし、聞こえますかー?」
「え、あ、あっはい! は、はじめまして…あの、すいません、ここどこでしょうか? 」
「んふふふ、落ち着いてください。今あなたがいる場所は時空の歪み、高次元の空間であり…まぁ私の家みたいなものですね。今回は勝手ながら、あなたを地球からこの空間へと召喚させてもらいました」
「え」
「訳を話すと長いのですが、まぁ手短にわかりやすく説明するとですね、圭太さんには今から異世界に行って救世主になってもらいたいのです」
ああ、これは夢だな。
と、圭太は手短に結論付けた
召喚、異世界、救世主
絶世の美女に口説かれるかと思えば、そんな意味不明な言葉ばかり、実に変わった夢だった
どうせ夢なら黙って一緒に添い寝してくれたらよかったのに。などと考えながら、圭太は再び瞼を閉じて眠りに付こうと試みる
「いやちょっとーッ!起きてくださーい!」
先ほどの上品さなど欠片もない咆哮で圭太の眠気は吹き飛ばされたのだった
「うわっ!? なんなんだよもう!」
「ほらほら怒らないで、オホンっ。実は私、地球とは別の異世界で女神をやっている者でして…私の世界にいる邪神の悪行を止めるためには、どうしても地球人である圭太さんの力が必要なんです。そこはまるで神話のような世界で…神話ってわかりますかね?」
自称女神の話し方は夢にしては不自然なほどはきはきとしていた。が、話の内容はさっぱりだ。女神だ、邪神だ、神話だなどというぶっ飛んだ話は、言葉の意味は理解してもそれが事実であるとは到底受け入れられない。
圭太は余計に混乱した。
「はぁ、夢ならもっと面白いもん見せてくれよなぁ」
「夢?ん…まさか圭太さん私の言うこと疑ってます!?」
「え、そりゃ当然でしょ」
自称女神は、まさか!信じられない!といった表情を露骨に浮かべながらこちらを見た
圭太も同じような顔で女神を見つめる。信じられない事態に直面しているのはケイタの方だ
「ふーん、いいでしょう。では今から圭太さんに魔法の力を体験してもらうとしましょうか。実際に魔法を使えば、私の言ってることも信じざるをえなくなるでしょう。さぁ人差し指を突き上げて…」
「んなっ!? 何するんですか! 警察呼びますよ!」
女神はケイタの不安にかまうことなく、そのまま手を握ると上へむかって突き上げさせた
「さぁ圭太さん。リラックスして、指先に意識を集中させてください。どうです? 体内に力が巡っているのを感じませんか?」
「あ、確かに、これは…」
不思議なことに圭太は未知の感覚に襲われていた。掲げた指先から全身がまるでストーブのようにあったまっていくのと共に、なんとも言えない万能感に思考を支配される。気持ちが高揚し、幸せな気分が湧き上がってきた
信じがたいが、今なら本当に魔法でも起こせそうな気がしていた。
「えっと、何が起こってるんですか」
「おっ、いい感じに温まってきましたね圭太さん! さぁ、そろそろ力を解き放ちましょうか!行きますよ…」
「えっ…」
「稲妻よ!来いッ!」
次の瞬間、閃光が視界を埋め尽くし突き上げた指先から体中を強烈な衝撃が駆け巡った
「うあぁあぁああああああ!」
それはまさに青天の霹靂だった。今までの大して長くない人生の中で一番大きな声を張り出し、全身を強い電流が駆け巡る。筋肉がびりびりと痛み体は全く動かなかった
「おぉおぉ、まさかこれほどの力とは!さすが地球人。いや、この力はエリート地球人と呼ぶにふさわしいです!これなら異世界でも大活躍間違いなしですね!」
「ゔ、ぐぐぐっ、な、なにするんですかぁ!」
「大丈夫ですよ、それくらいじゃ死にません。そもそも今の電撃はケイタさんが溜めたエネルギーでケイタさんが起こした魔法ですよ?…落ち先を誘導したのは私ですが」
「今のが、俺の?」
「ふふ…その通り。今のはもともとケイタさんに秘められた力を、私が引き出してあげただけです。今自分で感じたんだから分かるでしょう? 湧き上がる力、解放する快感、そして痛み。これは正真正銘、現実なんです」
圭太は両手を見つめ考える
これは本当に現実なのか? だがあの時の湧き上がる不思議な力は夢などでは絶対に説明がつかない、リアルな感覚だった。
いまだ半信半疑ながらも、先ほどの一撃はケイタの心を切り替えさせるには十分だった
「あの、女神さま…って呼んだらいいですかね。俺、これからどうなっちゃうんですか?」
「ふふふ…私の言うこと、信じる気になったみたいですね。でも怖がらなくていいですよ。あなたの第二の人生は私が保証します。あなたは救世主として人々の羨望のまなざしを受け、かわいい愛人をたくさんつくって、新しい家庭を設けるんです。もちろん邪神討伐に悪魔退治が最終目標ですけど、そんなに気負いする必要はありません。ドーーんと、私を頼ってください!」
圭太は考える。正直、現実世界での暮らしに未練はなかった
家族のことを考えても出てくるのは悪い思い出ばかり。帰りを待ってくれる人も、自分が死んで悲しむ人もいなかった
圭太にとって、今目の前にある人生逆転のチャンスを掴まない手はなかった
「…今ならチート能力と完全翻訳機能も付いてきますよ。元から強い地球人の中でもセンスバリバリの圭太さんなら心配いりませんって」
答えはもう決まっていた
「わかりました。ぜひとも俺を、その異世界とかいう所へ連れて行ってください!」
「素晴らしい! その答えを待っていました!」
そう言うと女神は掌を前に差し出す
その顔に張り付いた笑顔は、慈悲深い微笑みというよりかは勝利を確信した獣に近いものだった
「ああ、そういえばまだ私の名前を言ってませんでしたね。私の名前はナギ。女神ナギです。呼び方は女神さまでもなんでも結構ですから。さぁ、心の準備が整ったら私の手を取って。」
圭太は意を決し、ナギの手に自分の掌を乗せた
その瞬間、重ねた手からまばゆい光が溢れ出す。それはあたり一面に降り注ぎ、少しずつ圭太の視界を奪っていったが不思議と目を閉じようとは思わなかった。そんな優しい光だった。
少しずつ体の感覚がなくなっていく。そして薄れゆく意識の中、圭太はナギの声を聞く。
「さぁ、怖がらなくていいですよ。ゆっくり目を閉じてください。圭太さんを異世界に送ったら、私もすぐに後を追いますから、多少の遅延はありますけどその場でじっと…してもらえれば…だいじょ…です。とにか…く…うご…か」
最後まで聞き取ることなく、圭太の意識は完全に途切れてしまった。
そして、転生者ケイタの異世界無双伝説が今、始まる。
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