投獄令嬢は一攫千金を夢見る
都市を治める公爵貴族の機嫌によって、衛星都市の法律はコロコロ変わってしまうのが悩みどころ。
そしてそれが不幸の始まりだった。
僕の両親は衛星都市における魔族の地位向上を目指していた。
そんな努力の甲斐もなく、対魔族タカ派の公爵によって僕の両親は魔族の血を引く者として問答無用で処刑されてしまった。
そして次は長女である僕の番。
牢屋へ入るときに後ろから突き飛ばされ、冷たい床に頭をぶつけて自分の前世の記憶を思い出す。
前世は普通の男子高生だったのに……踏んだり蹴ったりだった。
まあこんな状況だし、割とマジでこのまま死んでしまってもいいかも、なんて考えていると。
目の前の看守がぱたりと倒れた。
「テレスお嬢様……助けに参りました」
侍女・レイレがそこに居た。
黒肌の耳長族、いわゆるダークエルフだった。
彼女のことはよく覚えている、幼少期の時から僕によく尽くしてもらっていた。
彼女も命をかけて僕を助けたのだし、その分まで頑張って生きてみようと思った。
外へ出ると警備へは粗方制圧されていたし。
強すぎ、やっぱりメイドや侍女という職業は最凶らしい。
王都を目指す途中。
この世界の一般市民の暮らしぶりを垣間見てしまう。
まずパンが固いし、ベットも硬かった。
僕はなまじ貴族令嬢だったし、前世も日本人だったということで舌は肥えている方。
食べ物はできれば良いものを食べたいし、住むところも快適に過ごしたいと思っている。
けどそれには相応の金銭がかかる。
つまりお金は困らない程度に稼いでおきたいってことだ。
それにはどうするべきかと考えると、まず魔族を忌み嫌う者達の妨害を警戒しないといけない。
レイレとの旅路の途中、出会った少女たちのキャラバン隊に出会った。
その行商人の連隊は、僕の内なる野望と隠れ蓑に最適だった。
「お嬢さん、私たちのキャラバンに何の用?」
「面接にきました」
魔族の得意技『念力』と商品計算ができることを自己アピールした。
「よし、君たちは今日からキャラバンの仲間よ」
「ありがとうございます」
キャラバン難関の面接(?)を無事突破した僕とレイレは、彼女たちのキャラバンに帯同することを許された。
上手く行ったポーション製作で、副業として町民の悩みを解決したりするショップを開いたりもした。
少女と言っても周りの同僚はちょっと一癖ある人物ばかりで、やり過ごすので精一杯。
「お嬢様……もっと清楚に荷物を運んでもらいたいのですが」
そして、キャラバンに就職中なのに中々無茶な要求をしてくるレイレ。
ほんと精神的につかれる時もあるけれど。
まあ色々あってやっぱりここが今の僕の居場所なのだと気付いた。
苦労もあったけれど今では彼女たちとよろしくやっています。
近況としてはこんなところ。
今後の目標としてはとりあえず、事業を成功させてキャラバンに貢献すること。
それと、今まで親のやってきたことを無視するほど僕は意識薄弱者でもない。
とりあえず、故郷である衛星都市は見返してやりたい。
どんな形であれ、両親の名を継いで再びプロフィネス家の家名を掲げて成功したいなと一応おもっています。
あと旧友とは文通でやり取りしていたりもする。
僕が逃げたことで彼女の家の周辺には、張り込みがついてるだろうし。
彼女は病弱で中々会うことは難しいだろうけど。
けどもし、この先親友のレフィシアと会う機会があったなら。
「やっぱり少しは令嬢らしく振る舞わなければダメかな……」