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最終話 始歩 「謀反」

今回で一旦締めとなります。

維蝶(いちょう)乙音(おとね)こと、織田美濃(みのう)の視点



 通話の切れたカードを耳から引き剥がしたわたしは、それを目前の人物に投げつけた。

 その男、わたしより1つ年上の美形少年。


「――明智! アンタ、わたしと陽葉センパイを仲違いさせて、いったい何を企んでんの?」


 すると畏まったお辞儀を止め、姿勢を改めた彼は「心外です」と首を振った。


「わたしはただ、織田美濃さまに『逢坂の変』を再び味合わせたくない。その一心です」

「上手い事ゆっても無駄。かつてあなたも『戦国武将ゲーム』で優勝した事のあるプレイヤーだったんでしょう? 手放しで信用すると思ったら大間違いや」


 けれどももうどうあがいても、すでに賽は振られてしまった。

 もうこのまま、自分の信じる道を突き進むしかない。


「アンカープレイヤーの陽葉センパイをどうにか打ち負かしてカードを奪い取るわ。そうしなきゃ、いつまで経っても信長アニさまを真の天下人にすることが出来ない」


 織田家中で陽葉センパイの役目は終わったんだ。

 これからはわたしがその後を引き継いで、何としてでも18歳の誕生日までに優勝して――。


「陽葉センパイの生ぬるいやり方じゃ、到底間に合わない」

「織田美濃さま。その意気です」


「ウルサイ!」


 明智の澄ました美顔にパンチを放つ。完全に八つ当たりやが。

 でも彼はニッコリ、余裕しゃくしゃくの態度を崩さず紙一重でそれを避けた。


 ムカつくヤツぅ!



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 一夜にして消滅した武田家。


 その、空白地となった武田旧領を根こそぎ分捕ったのは、徳川家康と木下藤吉郎陽葉センパイ。

 わたしら織田家は情報不足による混乱から、その掴み取りに一瞬出遅れ、斎藤家、上杉家らともに、みすみすふたりに漁夫の利を渡すことになってしまった。


 緒川城以東の尾張国の一部、三河国、遠江国、駿河国、そして伊豆国の、東海広域を抑える巨大勢力になった徳川勢と、甲信地帯の接収に成功した新生木下勢は、休む間もなく畿内の三好家に働きかけをおこなって上杉、北条と休戦協定を締結、わたしと斎藤道三の連合勢力に、真っ向勝負の姿勢を示している。


 木下家は織田家と並び、戦国大名の仲間入りをした――。

 陽葉センパイはわたしの部下ではなくなったんだ。


「木下藤吉郎の動向ですが、雲隠れした武田兄弟の行方を血眼になって追っています。また、亡くなった前野将右衛門の一族郎党を甲斐国に呼び寄せて一領を与え、生前の恩義に報いています」

「将右衛門さんの事はわたしも反省し後悔してるわ。でもそれは仕方なかった。武田兄弟がミスしなければあんな結末にはならんかった」


 それとも事前にセンパイを説得し、アンカープレイヤーカードを譲ってもらえば良かったのか。……いや。そんな他愛なくセンパイがカードを渡すとは思えない。


 やっぱり木下家はひねりつぶすしか無い。織田家に逆らったセンパイが悪いんだ。


「それと。斎藤義龍から例の件、手はず通り進めると連絡がありました」

「タイミングを誤れば美濃国はただの強敵になるわ、失敗は許されへんからね」


 道三と義龍を史実通りケンカさせる。

 道三の挙兵と同時に長良川を一気に渡河する電撃戦を敢行する。一旦は道三に加担し、義龍を放逐。

 そのまま道三を手なずけるか追い出すかして稲葉山城に居座ることが出来ればわたしの勝ち。


「明智。アンタへの信頼はこの美濃攻略戦で決定づけるわ。精々励んでね」

「美濃さま。わたしは昭和50年代の生まれで歴史小説はある程度読んでいます。よって先人の教えもわきまえております。しかしながら当戦国武将ゲームのオリジナルキャラクターであるあなたさまへの関心も非常に高く、ぜひあなたさまを勝たせたいとの想いでいっぱいでございます」


「よくペラペラ舌が動くなぁ。その饒舌で京の朝廷も上手い事牛耳ってよ?」

「お任せあれ。マイレディ」


 ……キモイなコイツ。


 

戦国武将ゲーム! ~コインシャワーつかって就活したらモーレツ社員らが24時間戦ってる400年前の成長株なブラック企業に就職できたので、木下藤吉郎になりきって私らしく立身出世してやります~

(ひとまず、完)

歴史ファンタジー第2弾として書き始めて10ヶ月、ようやくひとつの区切りに到達しました。

何とか一息つけました。


当初の案では「本能寺の変」を止めるのが最終のオチだったんですが、途中で大幅に方針転換しまして「いっそ全編架空の歴史物にしてやれ!」 と思い立ちました。


よく考えたら彼らは少年少女です。

使命に突き動かされて本来の歴史(史実)をたどると言うよりも、戦国武将ゲームというゲーム(アソビ)を謳歌する、楽しむという方に流れるんじゃないかって勝手に想像したからです。だからフラグ立ちしなかった桶狭間が起こらなかったり、オリジナル武将がのさばったりしてるわけです。作者が開き直ったのはそういう理由です。


なお、この続きは今後ボチボチ検討していきたいと思っています。

現時点23名の方々のブクマを頂いているので、ご厚情に応えたいからです。


あとは……大きな悔いは「色恋沙汰」が決着つかなかった事。

これはどうにかしなきゃなぁと申し訳なく思ってます。陽葉と乙音とイチゾーと又左。ややこしいなオマエら。


とにかく一旦の終了とし、今後また続きが書けるよう頑張って参ります。

長期間、誠に有難うございました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます! ……といっても、まだまだ道のりの途中のような感じですが…… ここでの締めは予期していなかったので、正直驚いております。 あとがきにもありましたが、陽葉と又…
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