94歩 「対武田戦(6)」
機械音がした。戦国武将カードの着信音と推定。
とにかく破裂したのかと思うくらいの大音量だ。
聞いたことあるぞ? 何だっけ、何の曲だっけ?
――あ。
「東京ブギウギ?」
「……――オウ。どーした、アニキ?」
信玄が応答した。彼のカードが鳴ってたんだ。
「信玄のヤツ、誰かと話し始めたぞ?」
「いまアニキって言ったよ?」
前将さんと目配せする。
「――何だと? ナルホド、そうかよ」
信玄、こっち見てニヤっとした。
両サイドの部下にカードを投げ渡し、何やら怒鳴り散らしだした。
狼狽えた様子で部下の一人がカードを操作。
「スピーカー機能だそうだ。せっかくだから、オマエらにも聞かせてやるよ」
「お館、少々お待ちを」
「早くしろ」
昭和初期世代、信玄含めて機械音痴の方々ばかり。
『もしもし。聞こえますか?』
「おう、アニキ。済まなかったな。もう一度さっき言ってた事を言ってくれ」
『さっき? いやだから困ってるんですよ。わざわざ掛川城まで来て、ガタイの大きい男を締め上げてるんだけど、カードの在り処を白状しなくて』
カードの在り処……。
「信玄! アンタ、カードの在り処ってどういうコト?!」
「狼狽してんじゃねーよ。お前のカードが本物とすり替わってんのは、とっくにお見通しなんだよ」
なっ?!
「……わたしのカードが……すり替わっている……」
わたしの反芻に信玄が目を細めて舌打ちした。
わざとらしいって言いたいようだ。
『もうコイツ殺して。別のヤツ探して聞いてみますよ』
冷や汗が出た。
わたしの出方ひとつで命がひとつ消され、状況がさらに悪化するかもしれないからだ。
「ま、待って!」
「待たねぇよ。言ってるだろ、いまテメーの持ってるカードはニセモンだ。ホンモノは掛川城にある。……そーなんだろ?」
又左が決死の斬り込みをかけようとしたので必死に止めた。
彼の、死を覚悟したみたいな眼に、精一杯の笑顔を映した。
だいじょうぶ。
心配ご無用。
信玄を顧みて声を張り上げる。
「信玄。違うよ、アンタ、カン違いだよ! わたしのカードはここにある!」
「はぁ?!」
イラ立った信玄の声音にアニキが一報した。
『なんかさー。おっさんが出て来て突然殴られました。どうやらまんまとヘンな部屋に閉じ込められたみたいです。周りで炎が上がってます』
「何だと?」
『ガタイの大きいオヤジが急に暴れ出して、悉く仲間が殺られました。アイツ、ケッコー強いんじゃん?』
「……それでアニキは大丈夫なのかよ?」
『2、3人脳天撃ち抜いてやりましたが、こっちも一発腹に喰らいました。火縄銃なんて笑わせます。血が流れ過ぎて、もうそろそろ動けません』
信玄が脱力したように黙り込んだ。




