91歩 「対武田戦(3)」
ペタペタ。胸のあたりをまさぐる。
撃たれた痕跡は無し。
「た、助かった……」
ハーッと安堵の息が漏れた。
――とグズグズしてられないっ。
走って駐車場に向かう。そこに停めてあった軽トラに乗車。
「ごめんっ、恋」
「大声出したら隣の車の人、起きちゃうよ?」
ハッとし「シーッ」と苦笑いのわたし。
「起きちゃっても、わたしとしては別に構わないんだけど?」
なんて余計な一言を添える恋。まあまあ。そう言うな。
その車のドアをそっと開けてみる。
座席で眠りこけているは香宗我部イチゾー。スースーと大きな寝息を立てている。
ホントに寝てるよね?
何だかウソ寝してる気がして、確かめたくてカオを近付けてみる。
……やっぱ寝てるか。……と思ったら急にカオが熱くなった。しまった寄りすぎたからだ。
「……お姉ちゃん、チューしたの?」
バカッ! と振り返り、否定のつもりでブンブン両手を振る。
「香宗我部さんさ。あっちの世界に行きたがってたんでしょ? なんで連れて行ってあげないの?」
そっとドアを閉め、元の軽トラに戻る。
「うっさいな。アンタにはカンケー無いでしょ? 」
「……可哀そうだよ、彼。なんでお姉ちゃん、そんなに冷たくするの?」
「冷たかなんて無いし」
腕時計を確認する。もうちょっとしたら前将さんたちと合流しなきゃいけない。
「ねぇ。頑なに拒否してるのはどーして?」
「まだその話? わたし急がなくちゃなんないの」
いつになくしつこい恋にふと、疑いが生じた。
その気持ちを察したのか、恋が言った。
「旅行ですって? 何が旅行よ。今日なんでわたしが大人しくついて来たのか分かる? そうだよ? わたし、香宗我部さんが好きなんだもん。お姉ちゃんの手伝いじゃなくって、彼のお手伝いをしようって決めてついて来たんだもん」
「恋?」
「理由言ってよ? 香宗我部さんを戦国時代に連れて行かない理由は?」
「……恋」
わたし、恋の剣幕に正直圧倒された。
作戦遂行中だったから、そっちに気持ちがついて行けてなくって余計に混乱した。
対して妹は真剣そのものだった。
「お姉ちゃん、答えてあげてよ!」
「……それは……乙音ちゃんが……会いたくないって言ってて……」
「ウソツキ。違うでしょ?! ホントのコトを言ってよ!」
「……ホントのコト?」
怒られ気味に問い詰められた。
もう時間もない。
「言うよ、言う! ……お姉ちゃん、アイツを乙音ちゃんに会わしたくないんだ……」
「どうして?!」
どうして?
……それは……。
「だって……乙音ちゃんとヨリが戻っちゃう、から……」
「それがイヤなの? ……なんで?」
「な、なんでって」
それは……、それは……。
「香宗我部さんが好き、なんだよね? だからだよね? だから、乙音と再会させたくないんだよね?」
――は。
い、いや……。
まぁ、その……。
ピリピリピリッ!
とアラームが鳴った。再び戦国に跳ばなきゃなんない。
「わたし、行って来る」
「お姉ちゃん?!」




