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【完結御礼】戦国武将ゲーム! 豊穣楽土 ~木下藤吉郎でプレイするからには、難波の夢を抱いて六十余州に惣無事令を発してやります~  作者: 香坂くら
第1部 織田家立身出世編 ~コインシャワーつかって就活したら400年前の成長株なブラック企業に就職できたので、木下藤吉郎として私らしく立身出世してやります~
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9歩 「制服」


「これ、学校の制服じゃないの?!」


 小屋を借りて着替えたわたしは、あらためて傾奇者の少年に礼を述べ、返す刀で質問した。


 中学女子が着る制服だ。ちなみにわたしはもう高一だ。

 ――いやいや、ちがうって。ツッコミがズレてる。一番聞きたいのはそこじゃない。なのに聞いちゃった。


維蝶(いちょう)乙音(おとね)さまから預かったものだ。勘違いするな」


 小屋の中。囲炉裏の薪をくべながら冷静に弁解された。


「……いちょう……おとね……?」


 聞いたことがある名……!

 ――確か。


「あ! あぁ!」


 妹の恋のトモダチ。――維蝶(いちょう)乙音(おとね)ちゃんだ。はっきりと思い出した。家に遊びに来たこともあったはず。色白で欧米人のような目鼻立ちの整った美人さんだった――。


 ――彼女は、不登校になったってウワサされてた女の子だ。


 イジメだとか病気だとか、家出だとか交通事故でとか……。ガッコウ内で勝手な憶測だけが飛び交って、でも真の理由は誰一人知らなかったんだけど……。

 けれども、それからもう10日以上経ってると思う……!


「あ、アンタ、ゆ、ゆ、誘拐したの……? あの子を……? こ、この制服が、どうしてここに? わたしが着てるって……こ、ことは……!」


「さっき言った。勘違いするなと。維蝶乙音さまはオレの(あるじ)だ。オレは命じられて一時的にこの小屋の番をしているだけだ。そして、来訪者が裸なら是非なく保護しろと言われてな」


 彼は鋭い目でわたしを睨んだ。それともコワモテだから睨まれたようにみえるだけなのかな?


「あなた……サムライ、なの?」


 おそるおそる確認してみる。


「オレは、尾張海東荒子城々主、前田蔵人が四男、前田(まえだ)又左衛門(またざえもん)犬千代(いぬちよ)。オマエの名はなんだ? 札を見せてくれ」


「札?」


「そうだ、札だ。戦国時代(ここ)に来る前に、手にしただろう? カードとも言ったか。とにかくそれを見せてくれ」


 もしかしたら、コインシャワーの脱衣所で天井から降ってきた、アレかもしれない。


「カード? 分かんないよ。失くしたよ」


 しかたなく、少年にすがる眼差しを向けた。


 この子、いま前田(まえだ)犬千代(いぬちよ)って言わなかったっけ?


 ガチ戦国武将を名乗(かた)っちゃってるよぉ、ヤバくない? やっぱ、逃げた方が良いかなぁ……、ドッキリにしたってちょっとやりすぎじゃない?

 

 わたしの混乱をよそに彼は立ち上がり、小屋を出て行った。


 今? まさに、逃げ時?


 ワナワナしていると、すぐに戻って来た。


「あぁ、あああぁ」


 わたしのグズ! グズっ! 戻ってきちゃったじゃんかよお。


「落ちてた。……これだろ? オマエの?」


 ヒョイっと投げ寄越したのをキャッチする。


「あ? これ、そう……だね……」


 彼の手の中では無反応だったものが、わたしが触れたとたんに電源が入ったように「フッ」と心なしか明るくなった。ツルツルのテレビ画面っぽい部分に【木下藤吉郎さま、こんばんは】と文字が浮かんでいる。


 うおおおおお。なんと!

 

 そんなのさっきは無かったじゃん?! ういヤツ、ういヤツ!

 ……ただやっぱり、他にボタン? らしきものは見当たらない。


 真横から無遠慮にのぞき込んでくる彼。


木下(きのした)藤吉郎(とうきちろう)……か。美濃(みのう)姫……乙音(おとね)さまがくれた情報と合致するな」


 横顔が近い!


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