83歩 「三河進攻(4)」
又左とイチゾーがいがみ合ってる?!
文末に絵を入れました。
ふたりは店外にいた。
建物の陰でヒソヒソ話をしていたからなかなか見つけらんなくて、それで不意に発見したのでついとっさに隠れてしまった。
イチゾーが又左に頼み事をしている様子だった。
「頼む。陽葉を説得してオレも戦国に連れてってくれ」
「直接藤吉郎に言えばいい」
「アイツ、危ないからとか言って連れてってくれないんだ。だからアンタからも説得して欲しいんだよ」
「厭がってるなら諦めろ」
冷淡な又左に黙ったイチゾーは頼み事を変えた。
「だったら陽葉が戦国に行くのを止めさせてくれ。それと乙音をこっちに連れ戻してくれ」
「都合良い要望ばかりだな。オマエは人にものを頼むばかりか?」
またもイチゾーは絶句。
取り付く島もない又左にイライラしたのか、イチゾーは建物の壁を蹴った。
「……足押さえてどーした。痛そうだな?」
「ウルセー。人の勝手だ」
又左は話を打ち切って先に戻ろうとした。
「待てよ。オマエはどういうつもりで陽葉に従ってんだ?」
「……人の勝手だ」
「勝手はいーが、それがアイツのためになってんのか?」
又左、歩を止める。
振り返りざま、イチゾーに殴りかかった。
かわすイチゾー。
「アブねーな。オマエ相当短気だな」
「オマエこそ自分を見てモノ言え」
な、なんて険悪。どーしてこーなった?
作戦会議どころじゃないやん?
ヤバイヤバイ。あの普段大人しい又左が、いったいどーしちゃったの?!
考えがまとまらないまま、逃げるように部屋に戻った。
画面が95点と表示されていた。
「だいたい覚えたぞ。矢切の渡し」
「そ、そう」
「どーした?」
「ま、前将さん。……あのさ、同年代のオトコノコ同士ってなんであんなに仲が悪いの?!」
「ん? 又左とイチゾーどののコトか?」
似たぐらいの年齢だし、性格もちょっと似てるところあるし、じきに親しくなると思ったのに! 初対面からあんなにいがみ合ってるなんて……!
わたし、失敗した?!
又左を昭和に連れて来たの、失敗だった?!
「どーした? カオ、青いぞ? お前さんより高得点出したんでショックなのか?」
「前将さんがカラオケをマスターしようとどーしようと、そんなのどーでも良いのよッ! 言ってんでしょ、又左とイチゾーのコトよッ」
「? 何か気になると?」
「だーかーらー! 言ってんでしょ! ふたりが険悪すぎるって! 前将さんは気になんないのっ?」
「気に……のう。いやあ、若いっていいのうとは思うが?」
ダメだ、この人。
そうこうしてるうちに又左とイチゾーが部屋に戻ってきた。
ヨロヨロとふたりで支え合って戻ってきた。
「どーしたの、そのカオ!」
目の周りや頬に青あざを作っている。
唇を切ったのか、血を拭った跡が残っている。
「無様に階段で転びやがった」
「そりゃアンタだろーが」
「痛そうだな」
「そっちもな」
階段で転んだなんてウソだ!
ゼッタイにどつき合いしてたでしょ!
わたしの心配をよそに睨みあうふたり。
再び殴り合いしそうな雰囲気だよ。
「ふたりとも! ケンカするなら外でして! ……じゃなかった、ケンカすんなッ!」
ハッとするふたり、ドッカとソファに腰かけた。
「息ピッタリだ、仲良いじゃねーか」
前将! アンタの目は節穴かあっ!
陽葉一兵卒(ブクマ19件目御礼)
読者さまの入れ替わりが、これまでの自作品に比べ多い気がします。
第1話を始めるときは「今回はなるべく史実通りに行こう」と思ったんですが、今はすっかり心変わりしてしまい、歴史好きの方々の冷笑を浴びてそうです。
そのあたりが原因なのか? と思いますが、たとえ一人でも反応を頂ける限り、マイペースを貫き、最終回目指して書き続けたいと思います。




