80歩 「三河進攻(1)」
美濃の斎藤道三さんが登場。
文末に絵。
尾張国内の兵力を那古野城に集結させつつある乙音ちゃんは、一方で北方、美濃国の領主、斎藤道三に連絡を取った。
手っ取り早く戦国武将ゲームカードを使っての会話だ。
「あ、お父さん?」
『――おう。美濃か。どうした?』
乙音ちゃん、スピーカー機能オン。
「伝えておきたいことがあるの。駿河の今川義元が、武田に討たれたのは知ってるわよね?」
『武田は異常だ。チート行為を働いとるんじゃないか?』
まさか……と答えつつ、乙音ちゃん、目が笑ってない。この子も疑ってる。
「でね、尾張国の全兵力を三河方面に傾けます」
『全兵力とな?』
「尾張の兵、全部を対武田に費やします」
電話の向こうで道三さんが絶句した。
乙音ちゃんが何を言いたいのか、思案しているような間がしばし流れた。
『……娘設定とは言え、お前もゲームプレイヤーの一人じゃ。言わばワシとはライバル関係よの』
「駆け引きと思って頂いて結構です。留守間の尾張をかっさらうのもご勝手に」
スピーカーが割れるほどの笑い声が響く。
『さすがマムシの道三の娘に選ばれただけのコトはある。維蝶乙音どの、ワシゃアンタに感服したよ』
「お褒め頂き嬉しく思います」
池田恒興さんと前将さんがうなづき合い、会話に割り入った。
「斎藤どの、こたびの戦が先勝したあかつきには信濃国は斎藤どのにお譲り申します」
信濃国。
現在の長野県だよね。
その土地はいま、武田の領土。まさに空手形もいいところ。
でも道三さんは二つ返事で了承した。
『ウチも武田の無礼には手を焼いていた。東美濃にちょくちょくチョッカイを出しおってウザかったんじゃ。美濃姫の三河進攻と同時にワシの軍も信濃国に打って出る』
ようやくわたしの番だ!
「道三さん。上杉謙信との軍事同盟が成立しました。上杉さんも上野国から北条領に進出してくれるそうです。上杉さんをオトモダチ紹介しときます。携帯で遣り取りできるように後で相互確認して登録しといてください」
『おう。木下藤吉郎どのか、いつも美濃姫が世話になっております』
「あ、いえ。こちらこそ」
見えない相手にお辞儀。こういうのは気持ちだよね。
わたしと前将さん、珍しく末席で大人しくしていた小六、そして緊張気味の又左の4人組は軍議の座を立った。
「じゃ乙音ちゃん、行って来る」
軍を動かすのは乙音ちゃんの仕事。
わたしはわたしのやり方で武田と戦う。
今川氏真の待つ城下の下屋敷に急いだ。
陽葉と又左
ブクマ18件目、評価、レビュー有難うございます
ブクマ、評価、レビューと立て続けに頂き、嬉しいと言う表現では賄いきれないほどです。
正直ストックがほぼなくなってますが、(おまけに今後の展開にも迷ってますが)ヤルしかないですね。(続きをでっち上げるしかないと言うイミ)。
何とかギリギリ公約通り本日内にイラスト滑り込ませることが出来、ひとまず良かったです。




