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【完結御礼】戦国武将ゲーム! 豊穣楽土 ~木下藤吉郎でプレイするからには、難波の夢を抱いて六十余州に惣無事令を発してやります~  作者: 香坂くら
第1部 織田家立身出世編 ~コインシャワーつかって就活したら400年前の成長株なブラック企業に就職できたので、木下藤吉郎として私らしく立身出世してやります~
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8歩 「コスプレイヤー?」


 天文21年春――。



「――ぷっはぁぁっ!」


 フルフルと顔を振ったわたしは、大きく息をついた。



「なんなの?っ! いったい何なのよぉっ!?」



 わたし、今の今までシャワー浴びてたよね……?


 ……などと誰に問いかけているんだか。


 まわりに人の気配はなさそうなのに。


 じゃなくって、ちょ、待て!



 ここは、いったいどこですかぁぁぁぁ! 教えてーーーッ。

 


 もちろん、答えをくれる人など無く。自分の目と耳で確認するしか、無し。

 

 右みて左みて、また右を見る。耳もそばだてる。

 うんうん。ナルホド。


 ……って、わかるわけないよ。だいたい夜だし。よく見えないし。

 

 どこかの田舎道なのね。それは判ります。


 で、あぜ道で膝を抱えているわたし。シャワーを浴びようとしてたんだから、トーゼン、全裸ですよね。ええそうです、一糸まとわぬ姿。あられもない痴態。

 

「まあいいか、おおまかには把握できたし」


 ――そうねぇ。まず、第一に。

 

 非常に哀れな状況であることは何とか理解したよ。

 勇気を振り絞り、最大の努力を傾けた結果得た成果。でもそれが何だっていうんだ? そんな薄っぺらな、首をかたむけたら瞬時に入手できる情報なんて! ましてやそれを知ったところで、何かが好転したってのか? いや、してない! と強く反語を述べてみる!


「へくしッ、くしッ、くしゅ、……うぅ……ズズ」


 イヤだぁ、さみぃよぉ。コワイよぉ~。


「おかぁさぁぁん」


 誰ガァ、ワダジニ服ヲグダザイ~~。


 実は……ホントウはさ、10歩ほど先に小屋が見えてんだ。暗いけど月明りでボンヤリそれだと判ってたんだけどさ。


 ――でもダメだし。

 立てないし。

 ……だって手だけじゃ、そのさ……隠しきれないじゃん! いろいろと!


 何回も言うけど服着てないんだよ? わたし。


「オイ、そこの女!」


 咎めるような男の声。何の前置きも無しに。


「うひゃゃああああ?!」


 ダレ、ダレ、ダレッ?! ゼッタイに今、わたしに話しかけてるよね? ね?


「ごめんなさいっ、ごめんなさ……!」


 バサッと頭の上に、おっきな布切れが被された。


「とりあえずそれを被って、あの小屋まで行け。服がある」


「は?」


「あっち向いててやる。走れ」


「あ、ありがとう」


 とにかく男の背中におじぎ。そして、ダッシュ! んで、コケた!

 暗い場所をあわてて、しかも裸足で駆けだしたら、わたしでなくても転ぶよ、きっと。


 上半身が右によれた。などと覚ったところで川面にドバンッ。


 水底にシリモチをついたわたしは、ビショビショになったまま、夜空を仰いだ。これは居直り。一種の放心状態だよ、ったく。

 


「……わあっ……キレイ……」



 強烈な精彩を放っている星々。

 こぼれ落ちてきそうな宝石の粒。


「――女!」

「は、はいッ」

「……だいじょうぶか」


 手を差し出した男は……。


「レイヤー?」


 一つくくりで結い上げた髪。

 薄黄色の着物。

 その上に()()()()真っ赤な陣羽織には、睨み合う二頭の獅子がデカデカと刺繍で表現されていて。


 一見して傾奇者(かぶきもの)だと知れた。


 男……いや、よく見ると、まだ少年の面立ちをした傾奇者……は、怪訝に眉をひそめ……、わたしにむかって救いの手を延ばしてくれている。


 ただのコスプレイヤーなのか、ちょっとアレな犯罪者さんなのか、わたしの()()()程度では判別不能だ。まあいいや。とりあえず、すがるしかない。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 少年の面立ちをした傾奇者……(CV.山口勝平)。 若いのに、おおらかな母性をそこはかと無く漂わせるお姐ちゃん……。 これぞ、高橋留美子ヒロインからちびまる子ちゃん、果てはドラえもんにま…
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