65歩 「あに・いもうと、あいたいする(2)」
インナーシャツの上にベストを着こみ、そこに何本もの大型筒をくくりつけていたわたし。
その実、それはただの花火なのだが、ダイナマイトと称すれば、大いに威嚇になると思ったもので。
こうなったら居直りだぜ。
数年前に見たヤクザ映画っぽく「オウオウ」とか言っちゃって精一杯すごんでみせる。
「うん? なんだその筒は? まさか種子島ではあるまいに」
アッレぇぇぇ? ウソでしょう?
ダイナマイト見てもちっとも動じてない!?
わたしこそ、種子島ってなんですかぁ? ワカリマセン!
結論。
この人たち、ダイナマイトを知らなかったことが判明シター!
「あのね、これバクダンなんですよ、バクダン! ドカンって爆発するヤツです! それ以上、わたしに近付こうものなら、こ、こ、これにっ、ひ、ひ、ひ、ひ、ひ、ひ、火をつけますからねっ?!」
なんでこっちが動揺してんだ。おかしいでしょ、わたし?
ハッタリをかます、ここ一番のタイミングでしょうが。動揺したら花火ってのがバレちゃうでしょ、バカッ!
「いいですか! これをこう、1本抜いて火をつけます。さ、導火線に火がつきましたね? そしてこれを庭に思いっきり投げます! ハイッ伏せてッ!」
ライターでどうにか着火させ、庭に向かってエイッと投げる。
演技でわたし、伏せる。
わたしだけ、伏せた。……なっ、わたしだけ?
勘十郎さん以下、あとの人は全員ポカーン。
わたしの言動をヤバいヤツを見るような目つきで眺めている。
でもほらもうじき、「シューッ! ボンッ」って火花が出るゾッ!
だってそりゃま。……花火だもの。
でもそこそこの大きさだからビビリはするっしょ。
見てよ、ホラ! ホラッ!
ズドオオオオーンンッ!
「ギョエエエエッ?!」
この世の物とは思えない震動と爆風。
庭に面したふすまが全部、部屋の奥まで吹っ飛んだ。縁側の屋根が無くなった。庭石が粉々に砕け散った!
………………アッレー? 花火?
違う。……これ、ホンモノ?
連中を振り見ると、例外なくアゴが外れそうなほど、呆けたカオをしている。さすがに武士たる者、腰を抜かしたりまではしてないが。
「……ね? び、ビビったよね? みんな、ビビったよね? ね?」
と言いつつ、なんでなんで、なんでッ?! と自らに疑問符。
なんでホンモノなのォォッ?!
すっごくビビったぁぁ! 死ぬかと思ったぁ!
「む、む、む、娘ッ。いや、藤吉郎!? なんだ、それはぁッ?!」
「だからダイナマイト、です」
「ダ、ダイナマイト……!」
「そうですよ! ダイナマイト」
自分で念押しといて改めて血の気が引くわたし。
懐に目を落とし。残りの筒を見る。……ゾォォ。
ザザザ……っと引き下がる一同。
明らかにさっきまでと空気が変わっている。
未だ白煙ただよう庭先で、ブーンと羽根の回転音が聞こえた。
前に松平の元康ちゃんから進呈されたドローンなる浮遊器具だ。そこからブラブラと垂らした紐にくくり付けられているのは【イッツ・ア・ソニカセット!】 オサレなウオーキマンだ。
「か、勘十郎さん。乙音ちゃんからのメッセージです」
――おい、乙音ちゃん! 今度は打ち合わせ通りだろーな?
ちょっと警戒しつつ。
鼻息荒く再生ボタンを「ポチッ」とな。
『あー、勘十郎兄さま。わたし乙音です。末森城はもう落ちます。降参してください』
「な、なんだと?! その小さき鉄箱は何だ?! ナゼこんな所から美濃の声が聞こえるのだ?」
『日没までに白旗が上がらなければ、末森城を総攻撃しますのでそのつもりで』
文明の利器、昭和の一大トレンド製品から流れるカセットテープのメッセージは、取りも直さず乙音ちゃんから兄勘十郎さんに向けた最後通告だった。
陽葉「ドカンですからね!」(ブクマ御礼13件目)




