55歩 「尾張統一(7)」
10日ぶりくらいの投稿です。
前回からシーンが続いているのに……申しわけありません。
要は、動揺しはじめた敵(坂井大膳)を木下藤吉郎(陽葉)が説得してます。
――用意、スタート!
返答に窮したわたしは頭をかいた。ここまで詳しくわたしは歴史を知ってるわけじゃない。いい加減な助言は命取りになる。
そして、ここで今、手放しで助けを乞うている敵方をみすみす逃す手はない。
フル回転して! わたしのなけなしの頭脳よ!
けどダメだぁ。
スラッと名案なんて出て来ないぃ。やっぱコミックだけじゃ予習足りなかったか!
「とのッ! 一大事です!」
「な、なんじゃ?!」
「大殿が……、大和守さまが、ぶ、武衛さまを……! 武衛さまを守護館に押し込めてお討ちになりました由ッ。大殿より、すぐさま帰城せよとの命です!」
「なんだと……お、お、お……愚か者!」
坂井さん、反射的に急使を怒鳴り散らす。そりゃ平静じゃいられないだろが、彼に言ってもカワイソーだ。
「……ぐ、バ、バカな……! なんてことを……」
いっぽう怒鳴られた急使は相当マヌケだ、彼も大概慌てていたんだろう。これじゃあ、わたしら相手方に非常事態が起こったことが筒抜けだよ。それに坂井さんも。でも仕方ないか……などと思ったわたしは相当えらい。ずいぶん冷静でとても感心したよと自分をホメてあげる。
とにかく氏真の予言が当たった。さぁ、どうするかだ。
「坂井さま。肚をくくってください。我が弾正忠家は、主君斯波義統さまを害した大罪人を放置できません。また、ご子息の若武衛さま(斯波ちゃん)を命に代えても御護りします。……坂井さま、主殺しの謀反人に就くか、正道を貫く我が主君、織田美濃に身を預けるか、迷うまでもないでしょう?」
「む……」
「弾正忠家の軍に就くよう、守山城の織田孫三郎信光に檄文を書いてください。清須にはびこる諸悪を断つため、正道を取り戻し、坂井さまの志を叶えるため、彼の者に『力を貸せ』とお命じ下さいっ!」
――わたし今、自分のセリフに酔ってる?
こないだ何気に見たドラマのワンシーン、頭ン中でリフレインしてる。
下請け会社のアルバイト従業員が、親会社の重役会議に単身乗り込んで意見する。
はびこる不正を堂々と暴き、親会社の社長に詫びさせ、自社の汚名を返上する。そんな筋書き。
そーかーいっ!
――まさに今、この瞬間。疑似体験だよ!
「……こ、小娘」
「わたし、なにか坂井さまの不利益になる発言をしましたか?! お役に立てないことを申しましたか?!」
「あ……い、いや……そんなことは」
「さかいさまッ!」
ズカズカと面前に迫った。一世一代の気迫を込める。ガッシリと彼の手を取った。
「尾張の行く末を決めるのは坂井さまの決意とお覚悟のみ!」
口元をムズムズさせた坂井さんはそれでも無言。
「さかいさま!」
ゆっくりと、でも力強い意思で彼はうなづいた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「坂井大膳さんがこちら側に寝返ったよ。これから彼の書いた手紙をもって織田孫三郎信光さんトコに行ってきます」
『坂井が……! よう分かりました。大手柄です、センパイ。清須の件、これからもお任せします。けども、ムリせえへんと』
「そのセリフ、乙音ちゃんにも返すよ」
『ふふ。お互いさまと?』
「うん。それじゃ次は叔父攻めに向かいます」
『できますか?』
「心配ご無用!」
乙音ちゃんとの通話を切ったわたしは清須攻略の任を受け、丹羽五郎左さんとも合流し、前将さん、又左とともに4人組になって守山城、織田信光のもとに急いだ。
今後は火曜日と木曜日に定期投稿したいと思っています。




