表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/187

53歩 「尾張統一(5)」


「……坂井さまのおっしゃりたいことはよく分かりました。でも、もう少しはっきりしておきたいことがあります」

「な、なんじゃ?」


「ひとつは若武衛さまへの忠義。


さっきまでの話ですと、若武衛さまのお言葉に対しては疑いの心をややお持ちのようだなと解釈されました。


……結論を言います。わたしは、いえ、わたしたち弾正忠家は、若武衛さまのご無事を一番に考えております。


たとえわずかでもあの子に異変があれば、わたしたちはただちに大和守家を糾弾します」


「……承知した。若武衛さまの御身はこのワシが全身全霊をもって御護りする」


 きっぱりと坂井さんは言い切った。


「ふたつに、大和守家は今川に就く可能性を示唆されました。このありさまじゃ我々は信を置くわけには行きません」


 坂井さん、今度はうっとおしそうに眉間にしわを寄せ、近習を招き入れた。そして一冊の書物を受け取ると、それをわたしの前に寄越した。



「これはの。今川五郎氏真どのが記された雑記帳じゃ。世の出来事をつづられておる」



 今川五郎、――ナマイキ氏真(じょじざね)が書いた本ってことね。……ああ。あの子、ナマイキ。ホントナマイキ。


 手に取りめくった……が、わたしにはミミズの這った字にしか見えずまーったく判別できない。前将さんに助けてもらった。


「これは……。まだ起っておらぬことが書かれた()()()というべき代物じゃな」


「? 何? ソレ?」


「序文でこうある。わたしははるか先の世から、充分な知恵と力がありながらも、志半ばで挫折を余儀なくされたそなたらを惜しみ、ただ助けになりたい一心でやって来た。


しかし、わたしの言葉を無条件で信じよという方がおかしいし、話が通じないのは当然である。


故にわたしは、ここにこれから起こる出来事をつづる。これを読めばそなたらはわたしの申すことが間違いではなかった、そして木下藤吉郎を名乗る者を信用しようとの納得を得るだろう」


 ……ええっ。わたしを持ち上げてくれてる!


 氏真っち、やるなァ。



 いわば【ノストラダムスの大予言作戦】か!

 ……昭和人以外の人、イミわかんなくてゴメンねー。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ