5歩 「コインシャワー(3)」
「なんなのよォ? 今度はクイズ形式なの?」
過去? 幾ら? どーゆーコトなんでございましょうか??
過去にさかのぼるってつまり、時間を逆戻りすると?
歴史上の時代に、時間跳躍が出来るってことですかッ?!
あぁ? いやいやいやいや。
「ちょっとまって、ちょっとまってよ……」
ホンキ? ホンキなの?!
さっきの数字が気になったわたしは、アタマをひねった。我ながら、バカ真面目すぎ。でも、もう後には引けない。いいや。そうじゃないっす。本心はメッチャ、ウキウキしてる。
し・て・る・ん・です!
1552……ってのがあったよね? さっき。
そのとき、わたしの脳裏に閃光が走る! 聞いたようなフレーズ!?
「――西暦だ!」
西暦、1552年。このあたりの年代は室町後期、うろ覚えながら、もろ戦国時代のはず。
そーだ、そーに違いない。
――つまり、1552円!
わたしはお金の投入口にまず100円玉を入れ……。
「ちょ、まてよ……。500円とか50円はともかく、2円って。フツーこの手の投入口って、1円玉なんて入んないよね?」
大きい独り言を飛ばすのはわたしの困ったクセだ。が、この際、気にしない。
とにかく最少通貨を突っ込んでみることにする。興奮と緊張の瞬間。1円玉さん、お願いします!
えいっ。
「……入ったし……」
入った? わあい、入ったよォォ。
よ、よォォし。
2枚目を入れようとした、そのときに、わたしの手が止まった。
――なぜ? どーした? わたしの手よ。
「わたしの手が言っている。【もっとよく考えてみろ】と……!」
腕組みし、首を左右に振ってみた。これは別にクセなんかじゃない。そんなポーズしてるといかにも考えてるって気分になってくるでしょ? まずはカタチからってゆうし。それにそうしてるウチに、素晴らしき【何か】が思い付きそうな予感だし。
――てのは、ウソ。
「よし、こういうコトだ」
実はとっくに答えがでていたんだ。
考えるまでもなし、思い出すまでもなかったのさ。
そう、ラクガキの文字。
【1円 = 1年】
この記述。
引っ掛かっていたのはコレだ。
わざわざお金の投入口に書かれていたこのラクガキ。
カンケーない方がオカシイでしょ? と。
【1552】っていうのは、前述のとおり西暦1552年でほぼ間違いないと思う。
……とすると、時間跳躍の末に行きつく先は、その年。
……で、1552年に旅発つためには、それ相応の金額が必要。
だから、その金額とは……。
「今年は1988年だから……、えーっと……436年前……」
ゴクリとノドが鳴った。