49歩 「尾張統一(1)」
週一のペースで無く、一話あたりの文字数を減らして更新頻度を上げる取り組みに切り替えます。
しばらくの間、不定期の更新になると思いますがどうかご容赦ください。
その日の夜、自宅のアパートに戻ったわたしは、待ち構えていた妹の恋の通せんぼをくぐり抜け、自室に引きこもった。
例の戦国武将ゲームのカードを使って乙音ちゃんと連絡を取り合いたかったからだ。
このカード、実に便利でさ、電話機能があるんだよ!
持ち運びが出来るカード型電話機! スバラシイよね!
『――あ、センパイですか? わたしから連絡しようと思ってました。兄の勘十郎が離反するウワサが流れてます。一刻も早く那古野城に帰還してください』
「乙音ちゃん、わたし名案が浮かんだんだ! 移動式コインシャワーの開発許可をください」
『はい?』
「軽トラの荷台にコインシャワーのユニットを積載するの。こうすれば、敵中深くに神出鬼没で潜り込んで活動できるでしょ?」
『……ナルホド。それは名案です! 資金は言い値で出しましょう。信長にも断っておきます』
「うん、でもそんなに費用はかかんないと思う。香宗我部のおじいちゃんが使ってない軽トラとユニットバスを提供してくれるって。改造費がどのくらいになるのか、見積とっとくよ」
数秒間無言になる乙音ちゃん。
『あ、ああ。ごめんなさい、センパイ。香宗我部センパイの名前聞いて、ちょっと動揺しちゃいました』
そう言われて今度はわたしがしばし絶句した。
香宗我部のことで乙音ちゃん、わたしにヘンな気遣いしてたんだった。なんでそんな遠慮するかな?! そういうの逆に鬱陶しいんですけど!
「……とにかく。じゃあ遠慮く無く、お金は使わせてもらうよ。完成したら早速試してみる」
『よろしくお願いします』
「それと今日、鳴海城周辺を見て来た。カンタンには落とせそうにないよ。往来はしばらく海路を利用するしかないね」
『鳴海城の山口親子は前々から今川義元に通じてるってウワサがありましたから、早いうちにクビ飛ばしとけばよかったです』
恐いからクビ、クビ言うな。
「織田勘十郎さんと今川義元が結託してるとすれば、次に目をつけるのはどこだろう?」
『わたしなら緒川城の水野家を篭絡すると思います』
「三河国の有力一族だよね? 松平元康ちゃんと親戚関係の?」
『よくご存じで。彼らは長年織田家に好意的なんですが今川の圧迫を受け、存亡の危機に晒されています。近いうちに救援軍を出さないと敵方に染まってしまう可能性があります』
救援するとなると海路しかないよね。
その方が時短にもなるし……。




