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【完結御礼】戦国武将ゲーム! 豊穣楽土 ~木下藤吉郎でプレイするからには、難波の夢を抱いて六十余州に惣無事令を発してやります~  作者: 香坂くら
係長待遇編

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48歩 「開発! 移動式コインシャワー(3)」

水曜日投稿の最後となります。


 エンゲージリングを買ったのを香宗我部(かそかべ)に問われた。


 肩のあたりが「ビクッ」としたのを自覚する。


「買った目的?」


 そりゃあ、信長さまに頼まれたからであって、今もそれは手荷物の中にあるけれど。


 ……コイツ、いったい何が聞きたいんだ?

 うーん、ひょっとすると。


 乙音ちゃんと信長さまが結婚するのかも? とか思っちゃってるのか?

 そりゃま、やっぱ未練あるよね。ここはちゃんと説明しておいてあげなきゃダメだよね?


 ……ま、仕方ない。伝えといてやろう。


「エンゲージリング? 別にアンタにはカンケーないコトじゃん?」


 ちがーう!

 そーじゃあ、なーい!


 乙音ちゃんにはまだ特定の相手はいないんだよ、だから諦めなくてもいーんだよ。

 そー言って安心させてやれ! そー励ましてやれ!

 多少演技っぽくてもいーから、優しく接してやれ、陽葉!


 さぁはい用意! スタートっ!


「だいたいその話、恋がしゃべったの? こわっ。信長さんに頼まれただけじゃん。余計な詮索はヤメてよね」


 バカーッ! わたしのアホーッ!

 ムッとした香宗我部。そりゃ当然だ。


「……オレ、乙音にフラれてオマエにも邪険にされて。あーもー自分がイヤになるぜ。……ハァ、すまねー。もう帰りたい」

「……え? あ、あの……」


 チラ……と香宗我部の送った目線がわたしのそれとかち合った。

 言いたいのがちゃんと言えないのは。それはわたしも同じだ。


「あの、……信長さん、奥さんの吉乃さんにエンゲージリング渡すんだってさ。……だから」


 ……まだわたしを見てる。

 目、逸らしたい。

 ダメ、逸らせない。


 男の子ってどうしてこんなに強そうな、それでいてすぐに壊れそうな表情をするんだろう……。


「オマエ、自分で嫌われ者ってかさ、……変わってるよな。基本、誰ともつるまねーし、ムダ口たたかねぇし、ガッコじゃゼンゼン笑わねぇし。……けど、人の気付かねぇとこでスゲー頑張ってんし。……部活辞めちゃったの、なんで?」

「な、なんで……って……」


 えーっ、待って今そのハナシ? エンゲージリングの件はいーの?


 しかもまじまじと。人のカオをのぞき込んでくる。

 もーっコイツ、無粋、無粋っ。ホント、マイペース! 香宗我部(バカ)から離れる。


 部活……ねぇ。

 中学ン時、一生懸命練習してたら、「自己アピ、キモイ」とかって反感買った。だから高校じゃ人前で練習しないことにしたんだ。そしたら今度は「努力もしないでナマイキな」だって。


 何をしても人さまからイヤがられる星の下に生まれたのかな、わたしって。なーんて案外マジに思っちゃったよ。


「……あれ? でも、辞めたって知ってんの、なんで? てかさ、アンタこそどうして野球部辞めちゃったのさ!」 

「こわっ。オマエこそスパイかよ。オレが部活辞めたの、なんで知ってんだ」


「あ、そ、それは、えーとォ……」


 ――ここでわたしらは、数人の見物者が舞台の下に集まっているのに気付く。

 たまたまなんだろう、公園に遊びに来た園児と思しき5人組だ。


 おっきなおニイさんとおネイさんがとっても目立つ高い高ーいステージ上で、昼の日なかにギャーギャー言い合ってんだ。劇かなんかだと思ったんじゃないか?


「1年に対して2年の態度があまりにヒドかったんで注意したら、監督に『殴られた』って事実を捻じ曲げてクレームつけやがった。言っとくがオレは殴ってねぇ。……で、しばらく部室出禁。アタマ冷やせとさ。退部じゃねぇし」


 子供たちにピースするバカ。当然、「きゃーっ」って逃げ散られてる。


「……そ。ま、辞めてなくてヨカッタよ」

「なんで?」

「だって、香宗我部から野球取ったら、ただのバカでヘンタイの要素しか残んないもの」


 一言断っとく。

 わたしはこれでも彼を励ましてるつもりである。「それだからお姉ちゃんには友達ができないんだよ」なんて、(いもうと)から呆れた嘆きを頂戴しそうですが。


 ――そんなのは分かってんだ。……でもさ。


「はは、そーか? んじゃホントに辞めちまった陽葉は、バカのボッチって要素しか残ってねぇのな」


 ……うっ。コヤツ、なかなか言いよるわ。


「って、ウルサイよっ。それと下の名前で呼ぶなって」


 舞台の下からケラケラと子らの笑いが聞こえた。指まで指してオナカ抱えているガキンチョも。


「……でも。辞めて良かったんじゃねーか?」


「どーゆーイミよ?」

「陽葉、オマエ、今の方が前よりずっとイキイキしてんし。……まぁむしろ、ちっとばかし元気になったかなって。……オレ安心した」


 わたしは、出所の分からないドキドキを隠すため、高さ2メートルはあるステージから、子供たちの群がる地面へと大ジャンプした。


 自分でいうのもなんだが、10点満点の着地だ!


 アングリ口を開けて固まった子が3人。驚喜し拍手してくれた子が1人、残りの1人は「シマシマー」などと不穏な単語を連呼するエロガキ。コイツには容赦なく威嚇をおこない、追い散らしてやった。


 バイクまで戻り、ヘルメットを被ろうとしたとき、香宗我部が「オイ、陽葉! こっち来い!」とテンパリ気味に叫んだ。


「今日は付き合ってくれてありがとう」


 って心の中で何度もイメージトレーニングしていたわたしは出鼻をくじかれ、「なんなのよ、ったく!」と、不快を表わした。


「これ! 見てみろよ」


 ――それは公園の入り口にあった案内板だった。この公園の説明が書いてあった。


「――善照寺砦跡。桶狭間の戦いの折、織田氏の最前線の拠点として築かれた当砦は、今川義元の大軍に攻められ、()()()()()()()()()()、120名の兵が()()()()()()()()()()()と伝えられている」


 ……ウソ……。

 2、30人でもキツイのに、120のオトコ……。

 ――でなくって!


 討ち死に! ウチジニ!

 ですとーッ!


 もういちどわたしは、公園内をあらためて一望した。そしてその隅っこにポツリと建てられたごく小さな石碑に走り寄った。


 【桶狭間合戦、戦死者の碑】と刻まれてあった。


「……そ、そんな、アホな……」


 ショックでその場にへたり込む。

 先ほどからのお子様たちが面白がってわたしをペタペタと触りまくって来る。


 わたしはアンタらの玩具じゃないっ。

 ……けど、もうそれどころじゃないって気分。


ご訪問ありがとうございます。


次回からしばらくの間、週一ペース(金曜日更新)に戻ります。

※次話の投稿は1月29日(金)です。申しわけありません。

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