46歩 「開発! 移動式コインシャワー(1)」
高架の手前、酒屋さんを過ぎたところのコインランドリー。いつもの場所。
慣れた動きで店内を闊歩し、奥のブースへ。
今回は信長さまや乙音ちゃんに頼まれたおつかいがいっぱいあって、買い込み品を背負ったリュックの大きさがハンパない。
高さだって、わたしの頭をゆうに超えているし、横幅は三人分なんだよな。
それに空いた両手にも、まん丸に肥え太った手提げバックを抱えてる始末。
そんな異常さなのに、店内の誰一人関心を向ける者など無い。
なぜなら、今は夕方。こんなヘンな時間帯にコインランドリーを利用する人は大忙しで他人になんてかまけてらんないのだ。……と、そのあたりは研究済みというか、実証済みなのです。
ともあれ、今日のわたしはとてもフキゲン。
なぜなら妹の恋とケンカをしちゃってまして。
「得体の知れない場所に出入りしてるって、乙音もお姉ちゃんもアホチンなの? お母さんが知ったらどーするの?」
わたしを悪く言うのは構わないが、乙音ちゃんを悪く言わないで!
だって彼女は帰りたくても帰れないんだから!
それとお母さん。
お母さんは一言で言うと【変人】だ。
わたしが戦国時代に行ってるなどと知れたら、「なんでわたしも連れてってくれないの!」 と怒り狂うに決まっている。そして例え時間が真夜中だろうとコインシャワーに行くと言い出しかねない。
そうだよ、つまりわたし以上にアタマのネジが跳んでる人。
それがわたしの母、木下加奈子。34歳、自称ハタチ。
「お母さんにバレたらわたしたち木下一家は崩壊するよ! わたしは今後一切お姉ちゃんの協力はしないから」
「荷物、持ってくれないの?」
「ベー。持つわけない」
くっそう、ムカつく。
――と、あらかじめ荷物にビニールを被せ終え、脱衣の間を素通り。
着衣のままシャワー室へイン。
山ほどある荷物を床置きし、持参したロープをくぐらせてひとまず連結。最後に、背負ったリュックに結び付ける。
こうすると、シャワー室に入り切る大きさならどんな物だって、わたしの付属物だと認識され、手に持ちきれなくてもぜーんぶ一緒に戦国時代に持って行けることが判ったんだ。これも実証済み。
「あー、重かったあ」
お金を入れようとした……ところで誰かが入口のドアを叩いた。
ヤベ、店員さんが見てたか?
荷物を置き、カオを出すと香宗我部だった。んもぉ驚かしやがってぇ。
「あー、ちょっとォ、アンタ痴漢犯罪者なの?!」
「人聞き悪い事言うな。お前の妹に面倒見てやって欲しいって頼まれたんだよ」
「恋に?」
「オレも戦国時代に付いてくよ」
「……ムチャ言うな」
「無茶じゃない。乙音に会う」
あ……。
そういうことか……。
「……ダメか?」
「……いや……そうじゃないけど、今はダメ、かな」
「どっちなんだよ」
手にしていたジャンプ傘を開けてしまう。
これはシャワー水除けのためのものなので、まだノズルはひねってないので完全に意味無し。
「うわっ! ごめんっ」
「な、何だよ。急にカサひらくなよ」
大声を気にして香宗我部がシャワー室内に入ってきた。とっさにドアを閉めている。
「……ちょっと。どーゆーつもり?」
「どーって……? ――あ、す、すまねぇ!」
「いーよ!」
「えッ?!」
慌てて出て行こうとした香宗我部を止める。
「……いーよ。……今日は予定変更する。アンタのバイクで連れてって欲しいとこがあるんだ、いい?」
ブクマ9件目御礼「受験生の皆さん、お疲れさまでした」




