表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結御礼】戦国武将ゲーム! 豊穣楽土 ~木下藤吉郎でプレイするからには、難波の夢を抱いて六十余州に惣無事令を発してやります~  作者: 香坂くら
新人編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/187

44歩 「平手家の騒動(1)」


 さっきまで激しく地面を叩いていた雨が勢いを弱め、裂けた雲の合い間から陽光が山すそを照らし始めた。

 何鳥か名前はわかんないが、ちいさな群が喜びを表現するように勇みだって上空へ舞い上がり、思い思いにさえずりを発している。


 ――熱田社宮の一角に部屋を用意した丹羽(にわ)五郎左さんは、そこである人物をわたしに引き合わせた。そうして、とっとと出て行った。


 織田勘十郎さんのお屋敷を出てから、わたしは頭の中に【混乱】の渦巻きを発生させていた。


 勘十郎さんへの出仕を断ったら政じいが殺される。

 かと言って命令を受けたら、わたしが乙音ちゃんに殺される?


「ああ。グリ〇のカフェオレが飲みたいッ」


 と、人目も構わず往来で吼えてたら、バッタリと丹羽さんに会い。


「良かった。ちょうどお主を探しておったのだ。さ、早く来てくれ」

「え? え? なんですかっ?」


 番傘かかげて引っ張ってこられたのがここ、神社近くのお宿。

 それで、彼のお役目は終わったようだった。


「よくよく平手さまの事、お頼み申す」そう拝み倒して消えてった。


 そして現在。

 わたしは面識のない人物と、ボーッと向かい合いになっていた。


「あらためて。それがし、平手五郎右衛門久秀(ひらてごろうえもんひさひで)と申す。平手中務丞(ひらてなかつかさじょう)が長子じゃ」

「へっ? 政じいの?!」


 長ったらしい名前なんだが、つまりは政じいの息子さんだ!

 身を固くしたわたしは、どうにか浅いお辞儀を返したが、正直、途方に暮れた。


「今朝がた、父君が毒を呑んだ」


 な……!


 愕然としたわたしは眩暈をおぼえ、ガックリと首を折った。


「……なんで」


 五郎右衛門さんは引きつらせた頬をさらに歪め、わたしに向かって土下座した。


「すべて拙者の不徳の致すところ、申し開きはござらん。いかなる処罰もお受けする。だが……なんとか、父、中務丞(なすつかさじょう)だけは貴殿の取り成しで救って頂きたい。頼む!」


 そのときわたしは誰から見ても「困惑」の文字をオデコに刻み込んでいたろう。なんせ、事情がまったく呑み込めてないんだから。


勘十郎(かんじゅうろう)さまが主家の大和守家(やまとのかみけ)と通じ、弾正忠家さま(殿)の追い落としを図られた。それには与力の林さま、柴田さまもご同意され、このワシも加担した。悩んだ父が丹羽殿にすべてを打ち明けたという次第じゃ」


 息継ぎ無しでしゃべりきったせいで、苦しそうに呻いた五郎右衛門さんは、板間に突っ伏して、吐き気を催した口を自らの手で押さえつけた。


「いまごろ五郎左(ごろうざ)さんは、信長さま(殿)や乙音ちゃんに言上してるんだろうな……」


 そのつぶやきには冷ややかかなウラミを込めていた。


「五郎右衛門さんはどうするつもりなの?」


 わたしみたいな下の者に、大の男が土下座までして重大事をペラペラ話してんだ。わざわざ聞かなくても覚悟は十分伝わってる。でも、そのときのわたしには手加減する気持ちが湧いてこなかった。


 一瞬身震いした五郎右衛門さんは静かに顔を上げ、わたしを睨みつけた。

 白かった肌が生気を取り戻し紅潮している。


 ――やっぱりこの人も武士だ。


 「それがしの頸をお持ちくだされ」


 つい、うなづいたが、慌ててかぶりを振って断った。


「いらない、いらないっ。そんな物騒なもの、ゼッタイにいらないから!」

「父が助かるのなら本懐でござる」

「ちがう! それが逆に親不孝だっての! わたし乙音ちゃんと話してみる!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ