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【完結御礼】戦国武将ゲーム! 豊穣楽土 ~木下藤吉郎でプレイするからには、難波の夢を抱いて六十余州に惣無事令を発してやります~  作者: 香坂くら
試用期間編

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29歩 「女児っ子氏真ちゃん」


 今川氏真(うじざね)……?


 ええと誰だっけ、今川……。

 あ、そうか。織田信長の仇敵、今川義元(いまがわよしもと)の子供だ!


 ウンウン、桶狭間の戦い後に没落する運命の……。って、ええ!


 敵だ、敵!

 コイツ、堂々と他領の本拠に出入りしてるよ?!


義銀(よしかね)! 遅くなったが持って来てやったぞ、カラオケ!」

「ほんとう? アンガトー!」


 は? カラオケ?


 ハンディタイプのカラオケマイクを受け取った斯波義銀(しばよしかね)こと若武衛ちゃんは、さっそく操作ボタンをいじくり始めた。わたしらへの関心は雲を吹き飛ばすように失せきったよう。


 入れ替わりに今川氏真って女児中坊(おこちゃま)さんが、


「テメエ、何モンだ? 信長……いいや、織田美濃(みのう)の手先じゃあるまいな? 偵察にでも来たのか?」


「……」


 ――マァソーデスネ。だいたい合ってマス。


「尾張守護家と今川はつるんでやがったか……!」


 又左が憤りと焦りが混じったような呻きを上げる。それ、正しい反応!

 

「なかなかの行動派だな、ええ? 敵中にノコノコお出ましになるなんてよ」


 氏真女児とやら、ずいぶんイヤミな物言いですこと。

 てかさ、アンタこそなっ!


 大大名の跡取りさまが隣国まで出しゃばって来るんじゃないよっ!

 身の程知らずはそっちの方でしょ!


「……悪かったですか?」

「悪いね。とっても具合悪い」


 又左に前野将右衛門さん、ひそひそとささやき合いつつ、わたしを庇って後退した。


 ここでようやく険悪な空気を感じたのか、斯波義銀(若武衛ちゃん)が間に入った。


「ちょ待ってよ。この人たち、現代の物をいろいろ持って来てくれたんだよ? 帰り方も教えてくれるみたいだし」

「騙されんな! コイツらは織田弾正忠の回し者だぞ?」


「弾正忠? それって織田の美濃(おとねん)?」


 お、乙音ちゃんを……()()()()


「そう、ソイツ! そうとうナマイキで、ヤなカンジだろ?」


「……別に、ヤなカンジしないよ? 乙音(おとねん)ってば、こないだ焼肉食べさしてくれたしさ、チョーおいしかったし。てかさー、マコトこそさぁ、なんかガッコと態度チガウくない? なんかチョーシのってて、エラソー? それよかおとねんの方がゼンゼンマシ」


「……マコトじゃなくて、氏真さまって言えよ、コノヤロー」


 全身がこそばゆいような、無性にハラ立つような、変な心持ちになったところで一方的に辞去のあいさつを済ませ、退散する。


「ま、待ちやがれっ。まだ話し終わってねーじゃんかよ!」


 氏真の怒鳴り声が聞こえたが無視し、守護館を出た。


 又左の眉が上がった。


「珍妙な音曲が聞こえる。耳に障る。不快だ」


 ――ああ、それは多分、あの人らがカラオケ熱唱してんだ。

 こりゃ、追い掛けて来てまでわたしらを捕まえる気なんて無さそうだ。


「機嫌よく歌ってるんだよ。又左も混ぜてもらったら?」


 からかうと、ポカリとアタマのてっぺんをどつかれた。……まったく冗談通じないんだから。


 遠い目の将右衛門さん、


「又よォ、美濃さま(お嬢)に伝えな。清須()の背後に今川あり。あちらさん、余裕しゃくしゃくだとよ。簡単にこの城、手に入んねーぞ」


挿絵(By みてみん)

氏真ちゃん「持ってきてやったぞ」

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