28歩 「平成人、斯波ギャル子」
清須の守護館で若武衛ちゃんと対面。
へいせい?
すみません、ソレどの時代ですか? ムリです。よく分かんないです。
「ねぇ?! 聞いてる? 愛知の子! オウチに帰してぇ、お願いぃ」
ギャル子なのに、地味子なわたしに哀願する。周囲の家臣らが呆然とするのも構わず。てか、それ以前に身分差はなはだしかったっけ? 守護家と下人以下設定だもの。
最接近した彼女はスッピンだったが素地がとってもキレイすぎ。
現代じゃさぞケバいメークしてたんだろうなって想像したら、気持ちがちょっぴり引き気味になった。
「ひょっとしてアンタも帰れないの? 可哀想……」
「あ……いえ、わたし……」
こーゆー子、わたしの対極にいた人種だ。実はかなり毛嫌いしてた部類だって、つい思っちゃってて無意識に敬遠してたかも知れない。……ったく、見た目で付き合い方決めちゃダメだよね、反省。
「ち、ちょっと待って……ください。若さま、わたし調子に乗りすぎました。お許しください。ヘイセイとか帰るとか、実は何言ってんのかさっぱり分かんないです。さるお方にそう言えと命令されただけなんです。ホントごめんなさい」
当初の予定ではカマを掛けてみて、話に喰い付くようだったら現代に関する当たり障りのない情報を小出しにして、心をつかんだ頃に、乙音ちゃんの益になりそうな提案の一つ二つを持ち掛けてみようって魂胆だった。
たとえば、尾張上四郡の協同攻略を! とかね。
でもまさかここまでガッツリ乗ってくるとは思わなかったし、なんだかフクザツな気持ちが芽生え始めた。……あまりにこの子、真っすぐすぎて不憫になってきたっていうか、申し訳ないなっていうか。
「ちょっ、急に知らないなんて言わないでよ。ええと、……あんた、ナマエ何だっけ?」
「……」
重要な頼み事してるクセに、名前すら覚えてないとキター。
前言撤回してやるゾ! コノヤロー。
「藤吉郎です。木下藤吉郎」
「ああ、そう藤吉郎! トーキチはさ、ソッチはどうやってここに来たんさ? その道を教えてくれたらいいだけっしょ?」
「だからっ、さるお方に……!」
前野将右衛門さんが背後からわたしの両肩を押さえつけた。
「藤吉郎どの! ここは一肌脱ぐべきかと勘考いたしまする」
ヤメロ! チカン! ってノドまで出かかった。……のを、グッと耐え。
――そこへ。
「オマエら、やかましいぞ! わたしはかなり不快だ!」
ふすまの開放と同時に一喝が飛んだ。
みんな一斉にそちらを見た。
そこには、吊り上がった太いまゆ毛が特徴的な、小っちゃな女の子が、えらい恐ろし気なカオをして立っていた。
それがなんと。
「――制服の女児?!」
いやいや実際、小5くらいに見えたが、これがどこかの中学の校章をつけた制服を着ていた。現代人かどうか見分けるも何もない、まごうこと無き女子中学生じゃん?
(これを平成の御世では【JC】などと言うのを後日知った)
その背後には取り巻き。袴をはいた屈強な侍が5人、ずらりと肩を並べている。
――ダレ? この子?
前野将右衛門さんと又左が瞬時に体を硬くし身構えた。
え?
たちまち不穏な空気が出てますが。
護身用と称した武器の類はすべて手前の部屋で没収されてしまっている。
てことは、コブシひとつで渡り合うしかないってコトかしら?
将右衛門さんの口がすばやく動いた。
「藤吉郎どの、驚くなかれ。彼の者は今川五郎氏真じゃ」
今川……氏真?
「ややこしいなぁ」とつぶやく陽葉さん




