27歩 「若武衛に会う(2)」
前回
清須の武衛さまを訪ねました。
「へー、あんたが愛知県から来たってウワサの女子かあ」
わたしに会うなり、上座の女の子が興味津々に身を乗り出した。
斯波義銀。
――それが彼女の名。ちなみに若武衛さまとも呼ばれているらしい。
本当は武衛さま、つまりは彼女のお父さんの斯波義統さんに会うつもりでここ、……えっとー……清須城からしたら、五条川をはさんで反対岸にある【守護館】って豪邸? を訪ねたわけだったんだけど、残念ながら不在とのことで、急遽、その跡取りである娘さんに謁見を申し込んだのでした。
――にしても、形式ばってないどころか、けっこうフランクな性格の持ち主なのよね、彼女。
ビックリ。
いきなし初対面の相手に向かって「あんた」ってさ……。
そこでわたしはつい、のっけから性ワルな内面をさらけ出してしまった。
「は。わたしは木下藤吉郎。本名は木下陽葉。昭和生まれです。なんなりとご質問ください」
昭和生まれと強調した。
この日本語、フツーの戦国人には分かるまいて。くっくっく。
だってさ、斯波って子、他の人と違って《アイチケン国》って言わなかったし。ちゃんと愛知《県》って単語を発したんだよ? ごく自然に。
だから試してやったのさ。
後述するが、将右衛門さんの言ってたことはまず間違いない。
――斯波義銀は、将右衛門さんのような【師匠】がいるか、もしくはわたしたちと同類だ。
そう踏んで、カマをかけた次第。
やっぱり。わたしの読みは当たった!
……が。若干、会話がかみ合わなかった。以下、遣り取り。
「昭和? ……にしてはチョー若そうだけど? で、あんた未来人? あたしも戦国時代に飛ばされて来た系だし。そっちもおなんじわけ?」
――おわ。なんて正直な子。
「斯波さまも……戦国武将ゲームの? ……ですか?」
「あ? そう! そーゆーのの? マコトの後をこっそり付けてったら、こんなコトになっちゃってさあ」
「マコト? 誰? ……ですか? コインシャワーで?」
実は事前に前野将右衛門さんから、若武衛こと斯波さまは現代人ではないか? という憶測を伝えられていたわたしだったので、ここは慌てることなく慎重に、探りを入れた。
「そうそ、いまどきコインシャワーでさあ……、あり得なくない?」
なくない? ナゼ疑問形?
まーいいや、もはや遠慮なんて無し。
ジロジロ、同じ人種の匂いがする斯波さまとやらを観察する。
――おそらく、齢は……わたしよか一つか二つ上だな。
一言でまとめるとギャル子な高校生。
ウエーブかかった長めの赤髪を目立たせてるのに、下はムリヤリ着物でコーデした、ちぐはぐな格好をしている。
それでいて全体的にはバッチシキメてんだから、同性として何となく小憎くはある。
短い着物のすそからフトモモを露わにして近付いてくる斯波さまに、わたしは畏れ多いフリをして低頭し、迎えた。
「……ねえ、教えてよ。あんたら帰り方知ってんでしょ? あたし、もう戦国の暮らしに飽きちゃったの。お願い、あたしを平成に返して」
若武衛ちゃん(未定稿) 未完成




