26歩 「若武衛に会う(1)」
清須の城下町観光?
清須の内情を探るのは本採用されるための重要任務だったんで、その申し出はわたしにとっては願ったり叶ったりだ。
ボディガード役の又左は、使命感からか、緊張感の持続を強いられるせいか、不機嫌そうに黙りこくっちゃったままだし。
……で、前野将右衛門さんは、単純には心のうちは晒さず。
城下の宿舎に入ってからずっと煙草をふかし、例のクセである、ボンヤリ過ごしを始めている。
その将右衛門が閃いたように、
「……お、そうだ藤吉郎よ。織田大和守に会う前に、まずは武衛様にお会いしよう」
武衛様とはズバリ守護、斯波義統さんのこと。
簡単に言うと武衛さんは、実質的な権力者である織田大和守の、形式上の上司である。
織田弾正忠家からしたら、上司の上司。
「でも、もうじき夕方になるよ?」
正直なところ、もうアフターファイブでしょ。
わたしはお風呂に入りたいのだ。
だが問題アリ。
もともとこんな安宿にそんな立派な設備は無い!
故に、将右衛門さん独りで行きなよ、その間にせめてお湯借りて、身体拭きしとくから……なんて、言えない……ので、遠回しにそう言いくるめてみようとした。
そうするとアゴに手をやり思案した将右衛門さん、
「守護館訪問の目的は金策じゃ。ここより格段上の宿に泊まるためのな」
と、ドヤ顔で応じた。
が、それを目尻の下げたヤラシイ目付きだと捉えたわたしは、無意識に胸元をガードする。
「おなごは常に清潔にしとかなきゃならん。ワシは有りのままでも良いのだが」
……やはりか。
余計なヒトコトだよ、ソレ。
前将さん、キモーイ。
我が織田弾正忠家は弱小だ




