24歩 「織田弾正忠家の野望」
清須城を訪れました。
前野の将右衛門さんと前田又左、【ダブルフロント】のふたりと一緒に。
「好都合?」
キョトーン。
おそらく今わたし、とびきりのアホ顔をさらけ出しただろう。
「なんで? なんで好都合なの?」
「教えて欲しくば、『将さんカッコイイ』と称えよ。もしくは『大好きダヨ』と言え」
「ちっ。DAI-SUKIDAYO」
感情皆無の機械音で応えてやった。
「――く、ぬかった。まぁいい。……ではまず尋ねるが、織田弾正忠家、つまり織田信長さまの尾張における現在の威勢は、いかほどのものだと思われる」
「どのくらい? えーと、なかなかの実力者?」
「肝が縮むほど適当な応えじゃのう。……いいか、尾張国はの、お前さんがおった時代の愛知県とやらの半分くらいの大きさしかない。そして、その中で弾正忠家が占める支配領域は、それを半分に割ったものの、さらに三分の一程度しかない」
ガーン、マジですか?
「ついでに言うと、弾正忠家の家中でも、信長さまを推す者らと、弟君であられる織田勘十郎さまの側に付く者らに勢力が二分しておる」
改めて乙音ちゃんの置かれた苦境が分かる。
「相剋の兄弟……か」
将右衛門さんが「そうよの」とうなづいた。
この将右衛門さんだって、それに又左だって、織田信長に付いている以上、同じ境遇と言えるんだ。
「だからの、美濃姫はこの《清須城》を狙っておる。尾張の中心地、最も立派なこの城をな。そなたたちが知る、本来の織田弾正忠上総介信長さまのように」
「将右衛門さん。繰り返すけど、ここには尾張で一番偉い人が住んでるんだよね」
「いかにも。――今回の訪問目的がこれでよく分かったろう。ワシが嬉しそうにした理由も」
前野将右衛門さんは、維蝶乙音から、昭和の人が持つ歴史の知識を叩き込まれたと言った。その上で、得た知識を総動員し、逆境に立ち向かおうとしている。
「かっこいい。将右衛門さん」
じつに無意識に、称賛の言葉がまろび出た。
不意を喰らったからか、意外にも将右衛門さんが照れた。
前将さん、カッコイイ!




