22歩 「丹羽さんと柴田さん」
「は? 清須? 織田ヤマトさんに会う?」
んな、唐突な。だいいち織田大和守なんて人、わたし知らないよ?
「藤吉郎さん。前野将右衛門さんは戦国時代の文章を現代語に翻訳することが出来ます。すごい頼もしい方です」
乙音ちゃんのフォロー。
てかそれ、スゴクない?
堂々のチートスキルだよ。
すると、ヒゲモジャ四角面の大男がわざとらしい咳払いをひとつし、必要以上に大きな声を立てて異を唱えだした。
「おそれながら申し上げる! このトーキチなる者の奇怪千万な風体では、門前払いになるのがオチかと存じ奉る!」
「は?」
今度はなんだ?
コイツ……?
たしかにわたし、高校の制服。この時代の人らからすれば珍妙な格好なのでしょうよ。でも、ムカつく。ちなみに乙音ちゃんだって中学の制服でしょうが。それにはナニゆえモンクつけないんだ?
たぶん基本、わたしらがキライな派なんだな、この人。
「この者らはアイチケン国なる、そもそもが不可思議な異国からの来訪者。奇怪奇抜な容姿などはむしろ好都合。なぜなら清須勢は退屈者だらけの緩まった連中と存じうる。珍しいことに飢えておろうし、問題などなかろうかと」
さきほどのハンサムボーイさんが助け舟。
キョトン状態のわたしに、
「柴田権六郎勝家さまと、丹羽五郎左どのだ」
と小声で又左が教えてくれた。
ああ、ヒゲモジャ柴田勝家! イメージに合う合う!
それと丹羽……さん?
この人ばかりはどうやら味方らしい。
丹羽って言えば、ええと……丹羽長秀くらいしか知らないなぁ。
「いかにも丹羽五郎左衛門長秀と申す」
は!
はぁは、こりゃ失礼しました。
この人が、かの丹羽さんかぁ。柔和な笑顔を絶やさない温厚そのものの面相。この人は織田家でも有数の実力派。ゲームの中でも結構高い能力値を与えられてたのを思い出したよ。
「よかろう。五郎左がそう申すのなら、儂が大和守に文を出しておこう」
信長さま、サンキューです。フミフミしてくださいっ。
なんだかメンドーな話に巻き込まれ出したわたしは、不安とワクワクが天秤に乗った、妙な心地になった。
喜ぶ陽葉 (ブクマ御礼イラスト)




