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【完結御礼】戦国武将ゲーム! 豊穣楽土 ~木下藤吉郎でプレイするからには、難波の夢を抱いて六十余州に惣無事令を発してやります~  作者: 香坂くら
第3部 天下争奪編 京坂動乱 ~東軍盟主を引き受けるからには天下分け目の天王山で勝ってみせます~
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058 【最終回】終わりとはじまり

空想歴史ファンタジー!

最終話!


 九州に激震が走った。


 何を血迷ったのか、大明軍10万が大挙来襲した。

 倭寇(日本人とされる海賊衆)を討ち滅ぼすためだという。


 柵封関係にあった李氏朝鮮の兵を吸収し対馬国を舐めとるように蹂躙後、肥前国および筑前国(現在の福岡、佐賀、長崎の各県)沿岸の浜に打ち寄せたのは、桜が散り去ったころ、永禄2年の晩春だった。


 怒涛の明軍を迎え撃つ日本側は、緊急閣議を経て長門国(=現山口県)萩市に近隣管区の兵団を集結。

 上杉謙信を臨時の国防総司令に据え、木下藤吉郎陽葉、吉川元春、長宗我部信親、織田美濃、徳川家康、浅井御市、北条綱成らがそれぞれ部隊を担当。7つの中隊に分かれて作戦行動を開始した。


 その総数は2百×7部隊で、計1400。

 応仁争乱以後、全国に割拠していた旧戦国大名らがひとつの軍隊としてまとまって機能し活動した、最初の対外戦争となった。


 開戦当初、圧倒的な物量に物を言わせて猛進撃を続けた明軍は、東は関門海峡、南は熊本城下に至るまで戦線を拡大、一時北九州の広域をおさえ兵を進駐させた。


 その間日本軍は一般民の避難と連れ去り者の奪還などの作戦を遂行していたが、約10日後、状況は一変した。

 それはたった一つの報告から始まった。


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着信履歴

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■「明兵ら、戦国武将ゲームNPCと判明」竹中半兵衛

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■「倒してもいいのか?」上杉謙信

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■「倒したら大陸に帰ってくれるのでするか?」徳川家康

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■「どっちにせよ、遠慮は要らないってこった」吉川元春

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■「弱体化した明朝の終焉が早まるだけですね」長宗我部信親

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 竹中半兵衛の書き込みを受け、日本側の各司令官は逆襲に向けて本格的に動き出す。


「反転攻勢します。ただし無用の殺生をしたらお仕置きします」

「ぬるいが木下さまらしい。ホレボレするぜ! ヤロウどもイクゾ!」


 ――7日後。

 コインシャワーを使っての電撃的奇襲と近代兵器の駆使で日本軍各個中隊が一気に巻き返しを図り、短期の内に明軍を日本海まで押しのけた。

 福岡に建設途中だった明軍足掛かりの城、名護屋城は無人の墓標となり、囂々たる赤炎に黒煙を吐きながら崩れ落ちた。




○○





 同じころ。

 列島太平洋側も激しい暴風雨に見舞われた。


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着信履歴

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■「スペイン無敵艦隊だと?」大久保利通

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■「四国が襲われた」長宗我部元親

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■「イスパニアを打倒せや」西郷隆盛

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 ――種子島沖を進攻し日本に襲来したスペイン艦隊30余隻は四国沿岸に至り、村々に侵入して財物子女を劫掠した後、東上した。


 彼らが目指したのは新首都、大坂都である。


 日本の開国と、堺などを租借地強要するためであった。

 西郷は直ちに大久保卿に命じて防衛海軍を招集。


 こちらは、長宗我部元親が総司令となり、明智光秀、九鬼嘉隆、小早川隆景、今川氏真、真田信繁、さらに村上海軍衆らが主力を務め、早船、鉄甲船、黒船の混成水上部隊を率いてぶつかった。


 2時間の戦闘で大型のガリオン船で構成されたスペイン艦隊30隻のうち7隻が沈没。5隻が大破、操船不能となった。

 残りは散り散りに太平洋を南下して行ったが、競争相手のポルトガルの艦隊とばったり遭遇し、小競り合いの末痛打を受け、虚しく祖国に引き返した。



 これら一連の国家存亡の危機は去った。ここに永禄の役が終息した。




○○○




「こんなところに隠れてたんだね」

「人聞きが悪い。保養してただけだし」


 京都二条城にほど近い場所に、水野雪霜(ゆきしも)が暮らす小館があり、そこに伊達政宗10歳が寄宿していた。

 織田信長の消失後、永禄の世に来た彼女は忽然と木下陽葉らの前から居なくなり、大捜索の末ようやく居所を突き止められたのであった。


「あなたが消えたせいで余計な戦が起こって大変だったわよ」


 木下陽葉に同行した織田美濃がキツイ言い方でタメ息をつく。

 一方陽葉は、彼女をこの時代に誘ったせいもあり、バツが悪そうに苦笑した。


 明軍とスペイン艦隊の来襲は、伊達政宗によってプログラムされていたものだった。

 前もって聞かされていた織田信長は、それまでに日本の軍事力を少しでも高めておこうと躍起になっていた……のかも知れない。


 伊達政宗が令和のアパートを放置したことでゲーム機器は自動運営を続け、予約時期が来たので勝手にプログラムを進行させて特殊イベントが発生。陽葉ら戦国武将ゲームプレイヤーたちがその対応に追われたのだった。


「……で何の用? 早くゲームのエンディングを流せって?」


 投げやりに問う政宗に、陽葉と美濃は大きくタメ息を吐いた。


「違うよ」

「違う? 何が違う?」


 会話の意味が今ひとつ呑み込めない雪霜が、フシギそうな目をして、政宗のおでこに手を当てた。彼女が長い息を吐いて俯いたからである。


「政ちゃん、シンドイんでしるか?」

「アリガト、雪霜。――言えよ、木下藤吉郎。わたしはどんなバツでも受ける覚悟なのだ!」


 うん。

 と前置きした陽葉が告げた。





○○○〇




------------------------------------------------------


いつも元気いっぱいに【戦国武将ゲーム】をプレイしていただき、ありがとうございます。


本日をもちまして【戦国武将ゲーム5 ―真王の誕生―】をゲームエンドとします。プレイヤーの皆さまに置かれましてはカード画面より【END】または【CONTINUE】キーを選択ください。

長らく楽しんで頂き、感謝申し上げます。


なお【CONTINUE】キーを選択した皆さまには、引き続きニューゲーム【戦国武将ゲーム6】をお楽しみください。


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◆◆ 戦国武将ゲーム6 ―魔王の復活― ◆◆


ルール概要


(1)基本事項

 プレイヤーカードの操作により、ゲーム世界への転移が自由に行える。

 知略を尽くしてカードを奪い合おう。


(2)勝利条件

  ゲームエンドの条件

   a.全プレイヤーのカードを入手する。

   b.プレイヤーカード所持者全員を服属または同盟関係を結び、征夷大将軍になる。


(3)ゲームオーバー

  1)ゲーム中に死亡した場合(元の世界に強制送還)

  2)ゲーム内で他のプレイヤーを死亡させた場合

  3)他者にカードを奪われた場合

   ※カードの所持者でなくなった場合。再所持者での復活は可能。

   ※服属や同盟締結は外交手段とみなされゲームオーバーにはならない。

  4)ゲーム途中でリタイヤを宣言した場合(カード権利が失効し元の世界に送還)


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今後とも【戦国武将ゲーム】をよろしくお願いいたします。





○○○○○






「今度こそ、織田信長を盛り立てて、わたしが征夷大将軍になるよ」

「いえ。わたしが将軍になります」


「……おまえら。ホンキなのか?」

「当たり前じゃん。信長が死んじゃって、これほどスッキリしないエンディングなんて無いでしょ?」


 再チャレ。

 言葉で言うほどカンタンではない。


「また尾張統一からやり直しだと思うと」

「嫌気がさす?」


「ヤル気がみなぎります」


 今度こそ。

 織田信長も、そして伊達政宗も、一緒にハッピーエンドを迎えよう。


 子供じみたアソビの世界でも構わない。青春の一時期にバカげた時間を費やすのも悪くない。バカげたアソビでも真剣に頑張れば、楽しさも喜びも、達成感や感動だって味わえる。


 そう。もう一度、戦国武将してやろう。


 木下藤吉郎秀吉として。

 それと。


 陽葉の脳裏に前田又左のカオがよぎった。

 香宗我部イチゾウのカオも浮かんだ。


「次はちゃんと……」



「次はセンパイに勝ちます」

「フーン。ムリだと思うけどなぁ」


 突然ふたりが笑い出したので、ビックリした雪霜が床置きの煎餅入りかごをひっくり返した。




戦国武将ゲーム(完)


 

最後までお付き合い頂き有難うございました。

この作品は長期にわたり連載した関係で、出だしのころの想いと中盤に差し掛かったころの迷い、終盤のひたすら苦労したなかで決めた結末がミックスされた内容になりました。達成感はありますが多少の後悔も残っています。

ぜひ冒頭から再構成したいんですが、現在は次回作の構想で頭がいっぱいです。

あのエピーソード、このエピソートとまだネタがありますし、ラストは駆け足でしたし、中途半端に終わってしまったので、いずれどうにかしてあげたいと思います。

最後まで辛抱強くブクマ応援して頂いた54人の皆さま、評価をしてくださった13人の皆さま、大感謝です。計196ポイント! 本当に有難うございました!

※この後書きは2023.2.19に書いたので公開時点で0ポイントになってたらショックですが、まぁ仕方なしですかね!(笑)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 色々な調べものの末に生まれたであろうこの小説、普通のものより大変だったかと思います。 陽葉のざっくばらんな性格が好きでした。最後まで楽しませていただき感謝です! [気になる点] やっぱり又…
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