054 跳躍
空想歴史ファンタジー!
あと5話で完結。
織田信長のハナシを他のプレイヤーたちにも伝えるべきか。
悩んだ木下藤吉郎陽葉と織田美濃乙音はひとまず竹中半兵衛と上杉謙信に相談し、ふたりから「当然皆に話すべき」と言われ、そうすることにした。
大坂城に集まっていた戦国武将ゲームプレイヤーは、アンカーカード所持者の陽葉を含めると、全員で93人。
残りのうち、死亡した後にNPCのように生き返ったのか、今もって不明の者が4人。
あとは、カードの記載によると、敵味方の区別がつかない者が現時点3人いる。
所謂オトモダチ登録をしなければ、カードにその者の名前や居場所などが表示されない。
すなわちそのプレイヤーは味方ではない。
強いて言えば仮想敵とみなすべきなのだが、その者の名は。
織田信長、岡田以蔵、伊達政宗。
この3人だろうと思われた。あくまで推定だが。
ちなみに死亡しただろう、別の4人のカードについては、木下家がすでに回収し所有している。
「カードに表示されているゲームプレイヤーの数はちょうど100名。旗幟不明の残りの3名を味方に引き込めばルール上、戦国武将ゲームはミッションコンプリート。ゲームクリアになります」
木下連盟93名のプレイヤーらは色めき立ち、熱心に陽葉の話に耳を傾け、「織田信長の交渉の結果を待とう」との意見で一致。反対する者やこれと言った対案は出なかった。
これには前回までの優勝者の徳川家康をはじめ、明智光秀や織田美濃も真っ先に、信長の話を信じると発言したことへの影響が大きかった。
さらに足利義昭がそれに同調したので(彼は吹田の戦いのとき、流れ矢で負傷してから極度のビビリになっている)場の空気は違う話題に移行。
前述の3人が木下連盟の味方に加われば、本当にゲームエンドになるのか? という疑問点が焦点になり、熱く論じられた。
結局その日はその話が酒の肴であるかのように場は盛り上がるだけ盛り上がったが、仮説や推論をアテにした議論では結論が出るはずも無く、散会となった。
その後、翌日の夜になってから、徳川家康配下の服部半蔵が織田信長の動きを伝えてきた。実は彼は、以前から徳川家康の命で織田信長を監視していた。
昨日以来、木下陽葉、織田美濃、徳川家康、上杉謙信、織田御市、浅井長政は寝食を共にし話し合いを続けていたので、そこに報をもたらした半蔵への質問攻めがおこなわれた。
もっとも彼は、プレイヤーカードで通話している。
家康はスピーカー機能をオンにし、彼の声を共有した。
『織田信長が向かった先は奥州。かつて伊達家の居城があった、米沢市です』
「尾行したキミも現地でするか?」
『はい。わたしもそこにいます。信長は現代に跳び、新幹線で大阪から山形に移動しました。令和~永禄間でちゃんと通話できるのか心配でしたが。無事つながったようで安心しました』
「そちら、令和でするか?!」
『はい。令和5年……えー、4月、です』
令和。
やはり。
織田信長は未来と過去を行き来できる手段を有していた。
服部半蔵の説明によると、その手段とは……。
『コインシャワーです』