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【完結御礼】戦国武将ゲーム! 豊穣楽土 ~木下藤吉郎でプレイするからには、難波の夢を抱いて六十余州に惣無事令を発してやります~  作者: 香坂くら
試用期間編

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18歩 「再訪」


 天文21年春――。



「たのもー。たのもー」


 城門前で素っ頓狂な声を張り上げてたら、中から血相を変えた乙音ちゃんが飛び出して来た。


 従わせた屈強な男らふたりにわたしを「えっほえっほ」と抱えさせ、城内にある、屋敷の一角に放り込ませた。


「いって! 女の子をランボーに扱いすぎッ!」


 ――と、どうやらここ、乙音ちゃんの私室らしい。


 人払いし、更に廊下の人気が無いのを確認した乙音ちゃん、



「もう来たらダメって言いましたでしょ!」



「まぁまぁ。はい、これ返す。乙音ちゃんの制服」

「……は? は、はい」


「もー血糊がべったりでさー、洗うの苦労したんだから」

「はぁ。……そ、それはそれは……」


 お手間を掛けました。そう頭を下げつつハッとし、


「いえいえ、やなくって! これで十分戦国(ここ)が危険なトコロだって知れましたでしょ!」


「だってぇー。来たかったんだもん。それに乙音ちゃんのコインシャワー、壊れちゃったんでしょ? 何とかしなきゃでしょ!」


「はぁ……。まーそーなんですが。でも、わたしはもう覚悟を決めてます。こっちで頑張ろーって。けどもセンパイはちゃうでしょう!? ちゃんと帰れるし!」


 呆れ果てる乙音ちゃん。でもわたしはちっとも動じず。


「心配ご無用。わたしに任せて。手立てを考えるよ」


「んもぉ陽葉センパイ。どーせ、センパイも例の【戦国武将ゲーム】のコールでここに跳んだんでしょう?」


 乙音ちゃんがカードを見せてくれた。

 わたしのとまるっきり同じデザインだ。


「……ええですか? それを踏まえた上でわたしの今の状況を説明します。わたしとセンパイが属してる織田弾正忠(おだだんじょうちゅう)家って、非常にクセモノでして、完全に逝ってまう寸前なんですよ。もはや滅びかけの、グズグズ最弱トンデモ小国です。これがホントにゲームなら初期設定ミス、ようするに失敗、ハズレ、リセット必至、帰れる手立てを発見する前にゲームオーバーなんですって」


 これは負けてられないな。わたしも言い返す。


「お言葉ですが乙音ちゃん。織田弾正忠家ってたら【織田信長】の家ってコトなんでしょうが? ちっとは勉強したんだから! 誤魔化そうとしてもそうは行かないよ!」


「……別に……誤魔化しては居ませんが……。ま、その通り、当家は織田弾正忠上総介信長を頭領に戴いてますけれども。でも弱小国には変わんないんです!」


 ニヤリとし、胸をバンバン叩くわたし。


「乙音ちゃん! 織田信長だよ! 知ってるよね? 歴史の教科書見た? 彼、将来天下統一するんだから! すっごく将来有望なんだって! だから悲観的になんなくていーんだよ?」


「……陽葉センパイは楽観的過ぎます。歴史くらいわたしだって知ってます。でもここの信長さまは……」


 急に小声になり、


「信長さまは……?」


「それが。トホホなくらいに【ぼ・ん・く・ら】、なんですよ?」


「ソレ知ってるよォ、【うつけ者】ってんでしょ?」

「違います! そーじゃないんです。真正のぼんくらです」


「ぼんくら、ぼんくらって。悪口言いすぎっしょ」

「そーゆいたくなるくらい、ぼんくらなんです! 言い換えるとポンコツ、意気地なし、ヘタレ、ダメ人間!」


 乙音ちゃん、声抑えて!

 廊下に人通ったら大ごとになるよ!


「わかった、わかったから。……それもわたしが何とかしよう。廃嫡とかお家乗っ取りとか」


「ダメです! ダメなんです! でも彼、とってもエエ人なんです! だから、わたしは彼の救世主になろうって誓ったんですう!」


 あららららー。

 先日の彼女と性格が違いすぎる!


 照れつつ、うっとりする乙音ちゃん。うっわ、かっわいい。

 乙女チック・お花咲きまくりの背景コマが目に浮かんだ。


 うーむ。

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