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【完結御礼】戦国武将ゲーム! 豊穣楽土 ~木下藤吉郎でプレイするからには、難波の夢を抱いて六十余州に惣無事令を発してやります~  作者: 香坂くら
第3部 天下争奪編 京坂動乱 ~東軍盟主を引き受けるからには天下分け目の天王山で勝ってみせます~

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033 千里ケ丘決戦・木下藤吉郎陽葉(8)

空想歴史ふぁんたじラブコメ・続き (陽葉視点)

陽葉と又左の会話(2)


 摂津国(=現大阪府)

 ―吹田付近木下隊本陣―




◆木下陽葉


 ……言われた。

 言われてしまった。


 聞こえた。

 耳に残った。

 残ってしまった。


 間に合わなかった。


 又左はずっとヘンだった。

 わたしに何か伝えたいことがあるってのには気付いていた。

 でもわたしは知らんぷりを通した。


 だって。

 そうしないと、又左が遠くに行っちゃうから。

 わたしから離れて行っちゃうから。


 わたしはズルイ。

 こっちの世界に来た時から、彼はずっとわたしに付き添ってくれていた。


 それをわたしは当たり前に感じていたし、そうすべきだよねと、いつの間にか彼を、自分の付属品のように扱っていた。

 便利で都合のいい道具にしていた。


「……妹を。恋を帰さなきゃなんないんだよ。元の世界に」

「あの子はひとりで帰れる」


「お母さんが……心配だから」


 ああ。

 違う。サイテーだよ、わたし。

 何だよその理由付け。


 わたしって又左がキライなのか?

 そんなに昭和に帰りたいのか?


 彼を突き放して悲しくさせたいのか?


「……そうだな。母親が心配するな」

「あ、いや、そのさ。……ごめん。何言っても言い訳だよね」


 ふと、又左の目が赤い。

 最初からそうだったのか、いまそうなったのか。

 泣き顔なのか、怒っているのか。


 ハッキリしているのは。


「陽葉」


 ――あ。……もぅ。それ、止めて欲しいんだけど。

 ホントに空気読めないんだから。


「あのさ。――わたし、又左は……好きだよ。割と前々から。でもさ、香宗我部イチゾウをほっとけないんだ。アイツはああいうヤツだけど、それでもわたしの大事な人だから」

「……あ、ああ」


「又左さぁ、近頃ずーっと陽葉って呼ぶよね? 前は藤吉郎だったのに。……それ、わざと? それとも無意識? わたしさぁ、性悪女なんだよね、イチゾウと又左、どっちも気になってるってか、ふたりとも……。だからね、どっちも選びたくないんだ」

「……」


 又左、初めて目を逸らした。空を見て、横を見て。それから再度わたしを見た。


「承知した。持ち場に戻る」


 掻き消えるように又左がその場から居なくなった。

 数秒間、わたしは彼の残像を眺めていた……気がする。





◆◆




「オヤ? どーかしたか、お嬢? 頭から煙が出ているぞ?」

「……あ、いや。わたしポンコツなので」


「将軍さんが到着だ。行くぞ、急げ」

「うん。分かってる」


 前野将右衛門は木下陽葉の背中をポンと叩いた。


「あー、それとな。あっちで単純純情バカが()()()()鬱陶しく淀んでるから、スッキリ掃除しといてくれ。戦争の後で構わんから」


「え、ふたり?!」

「又とイチ。それぞれ思うところがあるんだろよ」


「……」


 陽葉、先に歩き出した将右衛門を数秒間眺める。


「うん」


 返事した彼女は大股で前野将右衛門を追い越し、陣幕を出た。



また明日。

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