028 東軍盟主:木下藤吉郎陽葉による状況説明
あーあー。マイクテステス。
えー。
わたし木下藤吉郎陽葉、現世では高校1年生。
戦国武将ゲームでは東神連合――東軍の盟主を担当してます。
今日は摂津高槻城で、現況を音声で記録してます。
作者の言いつけです。
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永禄元年(1558年)10月の終わり、わたしたち東神連合――ダッサイ名前だと悪口言われてる……イイと思うんだけどなぁ……東国大名の連合体は、15代室町幕府将軍に就任した足利義昭クンを頭に戴き、西国の列強諸国連合軍との全面対決に踏み切りました。
1.西部戦線
盟友黒田官兵衛クンに指揮を託して対応。
別所長治クンと形式上尼子家に臣従する山内鹿之助クンの助力を得て、さらには我が木下家から仙石秀久クンと長束正家クンを遣わせてコトに当たらせました。
あちこちで小競り合いを続けてても騒乱が長引くだけ。
ここは一所に敵を誘い込み、受けて立つわたしらも戦力をそこに集中させて一大会戦をおこなって雌雄を決したい覚悟なのデス。
一挙に太平の世にする、早期にゲームを終わらせようって壮大な目論見です。
彼らの任務は島津・毛利勢を真正面から受け止め、十分に大軍をひきつけ、頃合いを見て【中国大返し】と称した撤退戦を決行すること。
西国諸侯御一行さまを団体でいっぺんに京付近までお連れする仕事です。
黒田官兵衛クンたちは毛利・島津の来攻を機に、荒木村重クンの居城、有岡城を放棄して尼崎城(古城)を経由し、神速で大坂表に到達しましたが、大坂城はすでに島津の先遣水兵隊に接収されていて、急遽転進して淀川沿いを北上。一路、京を目指しました。
京にはわたしら東神連合の主力が集結しつつあります。
それと合流を果たすためです。
彼らは西軍の誘引と、我が軍の主力が結集するまでの時間稼ぎを立派にやり遂げました。
本当にえらいえらい!
その一言です。
ところで一方の島津軍は京坂の形勢をにらんで大坂の地で足踏みしたので、彼らはどうにか虎口を逃れることができたのでした。
2.大阪南部の攻防
――摂河泉での戦いは、堺城市の争奪戦に移行しつつあります。
こちらの方面軍の役割りはズバリ、牽制でしょう。
西軍が京方面に主力を移動させたときに背後を脅かして、「こりゃもう前面の敵と乾坤一擲の戦いをするしか無いなー」と覚悟させるための言わば布石です。
木下家で勢を張っていた石田佐吉こと三成クン、そして武田の旧臣、真田信繁クンがタッグを組み、堺を武装強化。同時に新鋭豪商の跡取り、津田宗及クンが力づくで堺衆をまとめて東軍に加担。
人とお金をありったけ注ぎこみ、堺城市街を完全に要塞化しました。
時を移さず淡路を足掛かりに大坂湾より堂々攻撃を仕掛けてきた長宗我部水軍と、それに同調した毛利水軍をどうにかこうにか撃退し、大坂城と本願寺城から流れた東軍方敗残兵を首尾よく招き入れ、新たな防衛ラインを構築したところです。
もっとも南部戦線の作戦が予想以上にうまく遂行できたのは、石田クンと真田クンの采配が見事だったから……というのもあるけれど、もうひとつの大きな理由は、大坂湾上で両水軍同士の睨み合いが始まったから……です。
3.紀伊水道および大坂湾の制海権
毛利の鐵甲水軍およびに村上海賊機動船隊を基軸に、島津の黒船水隊とさらに長宗我部の早船群の総出動に対して、東軍方は織田美濃こと乙音ちゃんの指令による九鬼艦隊が、紀伊半島をぐるりと周遊して紀淡海峡に到達。
毛利他西軍方としても、ここは堺城市の攻囲をいったん解き、海からの東軍来襲に備えなければならなくなった……んだと思われます。
4.決戦の趨勢
その一方で島津、毛利、長宗我部の諸将は大坂城で武田信繁――シゲルの張ったゲリラ的小細工の罠に往生していて、未だ本丸の制圧に至らず。西の丸にて緊急作戦会議を決行。
その席で首魁の島津義久こと、西郷隆盛が「愉快なる遊戯を存分に楽しもう」などと発言し、これに毛利家筆頭格の吉川元春が同調、長宗我部元親、長宗我部信親親子が成り行き賛同して、これにより陸上の部隊、上方に勢ぞろいした西軍諸大名は、東神連合が待ち受ける京ノ都へ、帝をお助けすると称して錦の御旗まで掲げ、進軍を開始することになった……と聞いてます。
はい?
聞いてますってどこ情報だよ、ですか?
……あ、竹中半兵衛さんが横から囁きジャマすんですよ。
だからそりゃ、半兵衛さんが教えてくれた情報でしょうが。なら自分で解説してくださいよって言いたいところですが。上手いコト言って人にばっかしゃべらせて……なんて文句がついつい出ます。
前将さんも。ニヤニヤしてないでフォローしてよッ!
もおっ。
……えーと。
予定決戦場は茨木あたり、です……かね。
京街道から高槻街道沿いの村々はすべて住民を退避させたし、周辺寺院はにわか仕立てだけど城塞化した。田畑は……仕方ない。お百姓さんたちの生計はどうにかして責任もってメンドー見る。
繰り返しますが、わたしは覚悟してるんですよ、この大戦は避けては通れない。だったらこれに堂々勝利して、日ノ本の天下を統一するって。言うなれば天下分け目の関ケ原、なんですよ。
勝ってゲームを終わらせて、みんなで元の世界に戻る。まさに劇的で理想的なエンディングでしょう?
「――お嬢。言いにくいがな。さっきからずっと思ってたんだが」
「前将さん、その歯にモノがはさまったって表現が適当な物言いは無しにしてよ。何なのよ?」
「お嬢のナレーションな、マイクが入っとらんぞ」
「……いつから?」
「いや、最初から」
……あのねぇ。
それって撮り直しってコトですかッ?
「記録撮っとこうって言ったの、前将さんだよね? もっと早く言いなさいよッ、バカ!」




