025 島津義弘(1)
播磨国(=兵庫県)
―姫路城―
ワシは島津義弘さまの名をかたる伊地知正治っちゅうもんじゃが、記憶が曖昧なので恐らくそれも間違いじゃち思う。
ただ傍に西郷さかたる人物もいるんで、わざわざ正す必要はあらんめぇと思う。
「伊地知ヨ。大久保の事ば、どげんしたら良かかね」
「それは心配なか。三木城で保護されたげな」
西郷はだいぶ驚いた様子じった。
「いかな了見かの」
ワシは織田御市が遺した手紙を見せた。
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島津御大将へ。
ご存じのようにわたしたちは戦国武将ゲームなる仮想世界に閉じ込められています。
その世界でわたしたち東神連合は、あなた方西国諸国同盟と近い将来雌雄を決するのでしょう。
ただ繰り返し言うまでもなく、この世界は元々わたしたちがいた世界とはまったく別の、一般常識が通用しない勝手の違うゲーム世界です。
ですので提案です。
ここはいっそ小細工は止めにして、スカッとした勝負をしようじゃありませんか。
なお島津歳久さんもとい、大久保利通さんは解放しました。
無血開城した別所三木城で毛利方に保護されているはずです。
わたしたちの想いを素直に受け取って頂ける事を期待します。
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一目した西郷は肩を揺らして笑った。
「アイツらも同じ考えを持っちょったんか。それじゃあ、せっかくじゃで大いに暴るっとしようぞ」
馬鹿な。まるで子どんだ。
気が狂うたんか。
――じゃとしたや、ワシと同ンなじじゃな。
「京におらるる帝へん忠誠はどうす。上方ん平安を約束してしもたがの」
「勝てば官軍、負くれば賊軍。結果オーレーや。気にすっことは無か」




