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【完結御礼】戦国武将ゲーム! 豊穣楽土 ~木下藤吉郎でプレイするからには、難波の夢を抱いて六十余州に惣無事令を発してやります~  作者: 香坂くら
第3部 天下争奪編 京坂動乱 ~東軍盟主を引き受けるからには天下分け目の天王山で勝ってみせます~

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022 石田佐吉三成(1)


 摂津国、和泉国、河内国境界(=現大阪府)

 ―城郭都市堺―


 さて、まず何から手を付けたものか……。

 木下陽葉さまとの通話を終えてから、少し首をうなだれてみました。


 自分、実はウソをつきました。

 長宗我部ども、淡路に集結している――どころか、実際はもう堺城を取り囲んでます。まさか夜の内に移動してるなんて迂闊でした。


 陽葉さまは「ヤバくなる前に逃げろ」って言ってくれてたのに……。でもそれは手遅れかも……。


「ヤローども! 敵の陣地に乗り込むぞ!」

「ちょちょ待ってください、正則さんっ! 敵情も分かんないまま刃向かったら全滅しますよ!」


 事務担当の松井友閑ともに堺の管理を任されたのは、自分の他にもう一人、福島正則さんでした。

 彼、粗暴で知恵が足りず、本当ダイキライです。歴史と同じく仲が悪いの? って言われても知るか。とにかく性格が合わないんだから仕方がないだろ。そう思ってます。


「おりゃりゃあ! 者ども―ッ出陣じゃあぁぁ!」


 ――あぁ。やっぱし人のハナシをまったく聞きません、もう知らんです。



 ここ堺の街は戦国期の商売人たちが集まってる街で、織田家と木下家が共同管理しています。

 元々は商人の持ちたる国とか呼ばれたりして、商人組合の代表である会合衆ってのが仕切ってましたが、その内実は商売敵同士での権力争いが絶えず、これを仲裁して新たな町衆制度(会合衆制度の発展型)を提案したのが木下陽葉さまでした。ホントにあの方は聡明でカワイクてサイコー。


 今は堺独自の条例や施策をこの町衆で話し合いして決めています。

 町衆は商人、武士、一般市民の代表らで構成され、定例議会を開催してます。

 自分たち武家は原則彼らの決定事項に従い、彼らの自治に任せています。こちらとしては、結果的にちゃんと税金を納めてくれてれば、実質それで良いのですから。


 ただ、この街で唯一、武士が牛耳ってる産業がありました。

 鉄砲です。

 南北に長い街の北端市街に広大な鉄砲工場があって、街からの税収のほとんどをその運営に回しています。その工場長兼オーナーが自分で、生産部の親方が福島……でした。

 計算が苦手な、あの、福島正則です。


「なんでアイツが……なんですか?」

「彼は人気者だからよ」


 陽葉さまがそうおっしゃるのなら、そうなのでしょう。分かりました、アレが親方でもゼンゼン構いません。


「松井さん。どーします? 彼、ゼッタイに戦死しますよ? 死んだらキミが責任取って次の親方してくれるのかな?」

「ま、ま、マジですか?」


 松井友閑は女です。ヒラの事務係なのがもったいないほどの有能人材です。

 残念ながら欲と勇気に乏しいのですが。


「わたしは事務員で充分です。親方なんて、とてもとても」

「と言いますがね。福島の死は決定していますし、自分はこの街と運命を共にする覚悟です。じゃあ残るのはキミしか居ないじゃないですか。それにです、自分たちには死んでも果たさなければならない使命があるじゃないですか!」

「……済みません。会話について行けません。何ですか、使命って? そもそも、どういう理由でわたしだけが生き残ると?」


 モメてたら町衆たちが城の入口に集まってきました。

 直ちに長宗我部に降伏してくれと嘆願しているようです。彼らからしたら、町の支配者が誰に変わろうと知ったコトではないでしょうから、そりゃごもっともなお願いです。


「津田宗及。ナメたマネをします」


 彼は自分と同じ歳ですが、年長の今井宗久や千利休を封じて議会の総理をしています。

 津田宗及はかなり強かな人物で、今井、千両者を手玉に取り、彼らの顔を立て言い分を聞くフリをしながら、武家(こちら)の都合に沿うよう誘導してくれているのです。


 今も「断固抗議する、織田・木下は出て行け」と先頭でシュプレヒコールを挙げています。


「おいおい。あんまり大きな声を上げたら狙われますよぉ」


 案の定、空から矢の雨が降り注ぎ、幾人かの商人に刺さったようです! 声を頼りに狙い撃ちです。

 ではここでタイミングよく演説するとします。

 だって津田クンがあまりに露骨にウインクしてくるので。乗ってやることにしました。


「お前たち堺の者たちは、この石田佐吉がゼッタイに守る!」


「石田さまがああ言っておられるぞ、皆の衆」


 間髪入れず津田クンのアシスト。

 カオを見合わせ、やがて団結する町衆たち。


「四国の田舎侍めが! ワシらまで殺したるいうつもりか! それならそれでこっちも腹くくるわい」

「こうなったら石田さまを頼りにする他ないぞ!」


 南方で強烈な銃撃音が響きました。


「あれは?!」

「雑賀衆の加勢ですよ」


 陽葉さまが襲撃を予想してあらかじめ手配してくれていたそうです。さっきの通話で言ってました。

 わぁ、やはり陽葉さまはサイコーの女神、自分には勿体なすぎる御方。


「福島さまがお怪我をされました!」

「なんですとぉ!」


 担ぎ込まれたときには意識を失っていましたがやがて回復。


「長宗我部信親――。アイツ、なかなかやりおるぞ! もう一度、ゴーじゃい!」


 勝手にしてください。

 自分は自分で、陽葉さまの指示に従い今より籠城策を執ります。


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