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【完結御礼】戦国武将ゲーム! 豊穣楽土 ~木下藤吉郎でプレイするからには、難波の夢を抱いて六十余州に惣無事令を発してやります~  作者: 香坂くら
第3部 天下争奪編 京坂動乱 ~東軍盟主を引き受けるからには天下分け目の天王山で勝ってみせます~

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018 山内鹿之助(1)


 播磨国(=現兵庫県)

 ―姫路城郊外―


 オレの背中が爆発した。

 ……と、それは気のせいか。後ろで()()が破裂した、か?


 従者が親切に謎解きしてくれた。


「殿。大筒ですだ」

「大筒? 姫路城からか? もしかして黒船を狙いやがったか?」


 クロカンのヤツ、撃っても届かないとかムダだとか言っておきながら。さては楽しそうなのを独り占めしたかったんだな!


「違いますだ、近くの道端に弾が落ちましただ。ちょっくら様子を見て参りましょうか?」

「ムシしろ。先を急ぐぞ」


「いやぁ。何だか()()()()()()乗りモンがひっくり返ってるんで。アレって、ヤベぇでないですかい?」

「な、なんだと、乗り物?! クロカンのヤロー、とうとうやっちまいやがったな!」


 善良な市民に危害を加えやがった!


 ダッシュで向かうと駕籠だと思い込んでいたものが実は車。所謂SUV。

 キレイに横転してた。

 そのそばに別の一台。こっちは古いタイプのジープだ。


「こ、こりゃどーゆー事ですかい?!」


 従者が引くのもムリは無い。

 大筒の弾が直接の事故の原因でない事は判明したが。


 自動車事故の現場で当人たちがお互いの責任をなすりつけ合っている。そんなレベルを遥かに超えている。なんせ斬り合いを演じてるんだから。

 だがこの世界には警察なぞいない。殺し殺されても自己責任の範疇だ。と言って見過ごしするのもどうか。

 仕方がない、止めるか。そうしなきゃ死人が出そうだし。


 ――ん? 待てよ? アイツは見た覚えがあるぞ……? あの、古めかしいスーツを着た男。蝶ネクタイにシルクハットなぞ被って。どう見ても日本人だが、西洋かぶれのアンタッチャブル氏。


 ええと――。


「あれは……島津……義弘か?」


 脳内で認識が完了する前に身体が動いた。

 ヤツの死角から跳び膝蹴りをお見舞いする。


 ――と、それを阻止したヤロウがいた。

 ヨレヨレの着物、刃こぼれした剣。オレを眺める眼、野獣のような眼。

 その男、唸りに似た話し方をした。


「ダンナ衆には指一本触れさせやしやせんぜ。信長旦那からもそう言い付けられてるもんで」

「危険だよッ、いったん引いて!」


 真横から女の声が飛んだ。

 誰かと思えば、これも何かで見たカオ。


「キミ! 山内鹿之助クンでしょ?! わたしは織田御市。あと長束と仙石。――で、そのふたりは岡田以蔵と――」

「知ってるよ。島津義弘()だッ!」


 岡田以蔵って獣にあらためて全力の斬撃を喰らわせる。が簡単に受け流された。

 底冷えする目と合った。

 ……ヤベエ。……コイツは相当強えぇぞ。

 手をこまねていると肩を叩かれた。


「鹿之助クン。オリャ仙石秀久だ、よろしく。ヤツには左右から同時に掛かろう」

「い、いいぜ」


 仙石とやらの動きに合わせ突っ込んだ。

 岡田以蔵は眼をグリグリ左右に揺さぶって、空いた右手で脇差を抜いた。


「に、二刀流?!」


 左で仙石の剣を。そして新たに抜いた右手の剣でオレの攻撃を受けた。

 普通その場合、片手持ちになるわけだから相手の斬り込む圧に押されるハズなのだが、岡田は悠々とふたり分の力を受け止め、鍔迫り合いをおっぱじめた。考えられない腕力だ。


「どりゃッ!」


 仙石が仕掛けた。つま先で地面を蹴り上げたのだ。

 今朝の少雨で地面に泥が浮いていた。それが跳ねて見事に岡田の顔付近に届いた。


「チャンス!」


 剣では勝てんがケンカなら自信がある。

 寸時の隙をつき足払いでよろけさせるのに成功した。


「仙石! 退けッ!」


 一突きしようとしたので留めて数歩距離を取った。

 手出ししてたら胴斬りされてたぞ、オマエ。


「……悪い、勝ちを焦った」

「素直だな、仙石とやら」


 ちょうど姫路方向から味方が駆けつけた。鉄砲足軽衆だ。クロカンが気を利かせたのだろう。

 岡田以蔵は契約主の島津義弘をチラ見して剣を収めた。流石に数十丁の種子島には勝てないよな。


「島津義弘さん。姫路城までご同行願います。……岡田以蔵さんも」


 この場の仕切りはやっぱり織田御市。


「ふむ。何も話す事はあいもはんが?」

「こちらにはいっぱいあります。岡田さんにも。アニサマの話をじっくりと聞かせてもらいます」


 さっきから車の影に隠れていた男がしゃしゃり出て来て御市に報告した。


「クロカンから報告がありました。沖で座礁した黒船と交戦し拿捕したそうです。その中に島津歳久がいました。残りの二隻には逃げられたようです」

「そう……仕方ないかな」


 織田御市は大人しくお縄に掛かった島津義弘の内ポケットから財布を抜き取った。そこから戦国武将カードを抜き上げる。


「……つ、通話中?!」


 言いかけて、周りを観察した。

 オレと仙石も身を固くした。


 いったいいつから潜んでいたのか、恐らくスナイドル銃と思われる幕末では新式に当たる銃を構え、10数人の兵士が出現した。

 その先頭に大柄な断髪の男が立っている。


「オイが島津義久や。兄弟を返してもらうど」


 30丁ほどの種子島と10丁のスナイドル銃とではどちらが勝るか。試したい気分だが、敵将のオーラに圧倒されている。


「島津歳久の解放は、後日の交渉次第だね」


 穏便にカードを返す。

 ここでは決着をつけないってコトか。

 織田御市は暗にそれを示した。賢明だな。島津義弘と岡田以蔵の縄を解かせた。


「仕方なか。おはんのカオを立てて、ここは引きもうす。くれぐれも大久保をよろしく」


 大久保……とは歳久のことだろうか。

 ということは、目前の義久とやらは西郷……。

 織田御市、彼に答える代わりに岡田から刀を奪い取った。


「な、何をする?!」

「この肥前忠広()、アニサマに返しておくね。もう人斬りはお終い」


 それも賛成だ。

 分が悪い。

 もう、いったん手打ちにしよう。


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