016 黒田官兵衛(2)
歴史ファンタジー(ラブコメ?)お気軽にドーゾ。
播磨国(=現兵庫県)
―姫路城―
ただ、語弊が無いよう言っておくが、僕は別に木下藤吉郎陽葉という一介の女子の言いなりになっているわけじゃない。
真面目に語れば、僕は竹中半兵衛に憧れている。いや、惚れ込んでいる。
◆◆◆
今回の作戦は竹中半兵衛が発案したものだと、当初、この話を持って来た木下陽葉が言っていた。
真偽を疑う間もなく、3日経たずに今度は竹中半兵衛自身が木下陽葉に連れられてやって来た。そして口説かれ、惜しみない協力を快諾した。
「木下陽葉どのはこのゲーム世界にピリオドを打ちたいと願っています。しかもなるべく穏便に。無茶ですが知恵を寄せ集めれば何とかなるかも知れません。――日ノ本統一にご協力頂けますか」
あの、歴史上名高い名軍師、竹中半兵衛がそう言った。
僕の心は震えた。震えて歓喜した。何故なら彼は僕の能力を期待して声を掛けてくれたんだから。こんな名誉なことが他にあるか?
「それでいったい僕はどうすれば」
「簡単な事です。方々に散った味方を集め大敵にあたるのです」
要は木下陽葉の手助けをしろということだった。
竹中半兵衛は木下藤吉郎陽葉にぞっこんなのか。それなら僕も彼と同じく、彼女のしもべになろう。なってやろうじゃないか。
しかし懸念もあった。
「東神連合と言えば日本の東半分を支配する大勢力ですよね。かたや黒田家は貧乏家で大毛利に対抗する力が不足しています」
「なので周辺勢力である別所や宇喜多や尼子などを抱き込んでもらいたいんですよ。それが味方を集めるという意味です」
「はぁ」
「近々薩摩の島津が密かに入京します。毛利と手を結び上洛軍を催す準備を行うためでしょう」
「島津が? それを阻止すると?」
「いいえ。したいようにやらせます。どうせそう上手くはコトが運びませんから」
薩摩の目的は朝廷への取り入りと足利将軍擁立の妨害だそうで。
動きを掴んだ上で泳がせると、警戒させないためにそうしておくとのことで。
「わかりました。じゃあ僕にも考えがあります。何とかして短期間のうちに味方を集結させて姫路もしくはどこか周辺の拠点を固めます。島津の帰郷を妨害して彼らを慌てさせます。そうする事で毛利と島津の上洛軍を山陽道におびき寄せます。その隙に山陰から、中国九州平定軍を送り込むんです」
僕の意見にうなづく半兵衛さん。
嬉しい。
横の木下藤吉郎陽葉が何か言ってるが、悪いが耳に入らない。
――と、手を握られた。なんだ?! この女?!
「わたしはまだキミの実力がわからない。だってキミにはまだ実績がないんだもの。だけども信用する。キミを推薦したのは半兵衛さんだから」
◆◆◆
「な、なんだって?!」
「鹿之助クン。どうしたの?」
「尼子の殿が……!」
山内鹿之助のカオが半笑いで歪んでいる。
「尼子の殿、途中で迷子になったそうだ!」
「はぁ?」
「山陰へのルートで道に迷ったらしく。それでも何とか無事に日本海に着いたそうだが」
山内鹿之助、タメ息つきつつ、「やっぱオレ行って来る。尼子の殿のお守りする」そう宣言し姫路から居なくなった。
「行かせて良かったの? 毛利、島津の大軍に対して金ヶ崎退き口を演じるんじゃなかったの?」
確かに鹿之助は直情突進型だけど。勇気あるしケンカは強いし頼りになる。
「――別所。お前の方こそ自分の城、気にならないの?」
「三木城? そりゃ気になるよ。けどクロカンの考えた作戦だもん、最後まで付き合わせてよ」
高楼から見張りの声が届いた。
「東方から城下の方角に猛スピードで迫る自走車が2台!」
――自走車?
二人してもう一度高楼に登った。
「ジープ、だね」
「追いかけっこしてるのか?」
戦国武将ゲームカードが振動した。着信だ。
「長束正家……クン?」
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