014 前田又左衛門(1)
久々の更新となります。
よろしくお願いします。
今後、2、3日間隔の更新を目指します。
山城国(=現京都府)
―下京西本願寺―
木下陽葉が自分の代わりに見舞いに行って欲しいというので行った。
香宗我部イチゾウも同行している。
京の下京、本願寺顕如に働きかけた陽葉の発案で建設中の西本願寺に、武田信繁が入院し療養している。
というのもこの寺、イチゾウが言うには病院の機能を持たせているそうだ。
「病人や怪我人を治療して治す場所だ」
「それくらい知ってる。オレも昭和時代を随分勉強した。偉そうに語るな」
ここの責任者は曲直瀬道三だそうだ。
奇しくもヤツの兄である信玄も以前彼の世話になっていたので、兄弟そろって面倒を見てもらったことになる。
「チッ。何のようだ」
「死ななくて良かったな」
「あんなヘボ刀なんかにやられるかよ」
病床の武田信繁は、身動きできない体のクセにイキがっている。
京に潜伏している薩摩島津の一党を見つけ出そうとして、逆に返り討ちに遭った次第だ。
自ら新選組だと大法螺を吹き、市中ウロウロしていたのでバカとしか言いようがない。
「――で? オマエを襲ったのはどんな特徴の連中なんだ?」
「ひとりは薩摩訛り。もう一人は……」
土佐訛りだと答えた。
「こんな顔か?」
スマホとやらで撮った男を確認させる。
「ああ。その面だ。指名手配でもしてるのか?」
コイツ、前に十三峠ですれ違った男だった。
「フーン……。岡田以蔵ねぇ。なんでコイツが薩摩の味方なんてしてんだ?」
「そりゃ、生きるためだろ」
用心棒とかな。
「いや、違うぞ」
イチゾウがしゃしゃり出た。最近ウザイほど小知恵を働かす。なのでやたらコンビを組まされる。
「右大臣、花山院家輔が裏で薩摩ともども以蔵を手駒にしてるんだ。理由はひとつ。朝廷の実権を独り占めするためだ」
「どういう事だ?」
「花山院は薩摩だろうと東神連合だろうと、どちらとも手を組む気は無いんだよな。ハッキリ言ってどちらも目障りでしかない。簡単に言えば潰し合いをしてくれたら一番有難いんだろうさ」
ドヤ顔発言だが尤もらしく聞こえる。まぁそう言う事にしておいてやる。
「ほらよ、これ。足利義昭新将軍からだ。有難く頂戴しとけよ」
「日本刀?」
「基近造、名刀だ」
「将軍にしてくれたお礼だとよ」
信繁は露骨に厭そうに顔をゆがめた。
足利義昭は先日、晴れて将軍宣下を受けた。
菊亭晴季とこの武田信繁、そして上杉景勝と直江兼続、さらには裏で巧みな工作をした竹中半兵衛と木下家一門が成した功績だった。
「確かこれ、前将軍足利義輝の持ち物じゃねーか? 気味が悪いし、だいたい縁起が悪いじゃねーかよ! あのカス将軍、不用品掴ましやがって!」
オマエな。気持ちは分かるが言いすぎだぞ。
「アホかお前ら。せめて名銃持って来いよ、将軍にそう言え」
「……オイ。こう見えてもオレはお前よりも四百歳以上年上なんだぞ。礼儀をわきまえろよ?」
説教したが、つい先に手が出た。刀を抜き、柄で頬げたを殴りつけてしまった。
「ぐうぅ……。いい攻撃喰らわせてくれんじゃねーか」
「もう、寝とけ。薩摩はオレが殺る」
またもイチゾウが口をはさむ。
「悪いがな、薩摩の連中はとっくに帰郷してた。島津の三兄弟な」
「三兄弟ってーと、島津義久、義弘、歳久か? そうだったのか?」
オレだけでなく信繁も驚いていた。オレは無表情を貫いた。悔しいからな。
「花山院は新将軍の誕生に歯噛みしているが、逆に今度はヤツを取り込もうと画策し始めている。オレたちはしばらく二条城で将軍の見張りにつく」
「イチゾウよ、オマエ勝手に決めるなよ。オレは薩摩を追うぞ?」
島津義久と言えば西郷隆盛って話だ。
取り逃がしたら後々厄介な事にもなる。
「陽葉の命令だ。西じゃそろそろ中国大返しが始まる頃だ。薩摩島津・長州毛利の大軍を迎え撃つ準備にかかるぞ?」
全く偉そうだ、気に喰わん。
「ハハハ。お前らあんなチンチクリンな女の何処が良いんだ? 好きに行動すりゃいいじゃねーか」
黙ってろ。オレとイチゾウの怒鳴りが被った。
全く。不快千万だ。
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(以下テンプレな挨拶)
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