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【完結御礼】戦国武将ゲーム! 豊穣楽土 ~木下藤吉郎でプレイするからには、難波の夢を抱いて六十余州に惣無事令を発してやります~  作者: 香坂くら
第3部 天下争奪編 京坂動乱 ~東軍盟主を引き受けるからには天下分け目の天王山で勝ってみせます~

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010 木下藤吉郎陽葉(4) 近江小谷会議


 今わたしがいるのは近江の国、浅井領(現滋賀県長浜市)。


 道中、俗にいう姉川の戦いが()()()場所に立ち寄った。

 過去形で言うのもなんだけど。


 ここって浅井家の本拠、近江小谷城から案外近いんだよね。

 川べりから望むと、ほら。あっちの方角にちゃんとお城が見えるんだよ。


 にしても織田・徳川連合軍VS浅井・朝倉連合軍の戦いだなんて、想像するだけで鳥肌モノ。

 幸い、現在辿っているシナリオじゃ織田と浅井は同盟を続けてる状態だし、ネックになってた朝倉さんとの関係も、織田御市(おいち)さんの尽力でどうにか改善し、今日も当主自ら重い腰を上げて近江湖畔までご足労頂いてる。ホントに有難いよ。



◆◆



「――朝倉義景さま。わざわざ足をお運びいただき感謝の極みです」

「ん? そなたはナニモノじゃ?」

「あ、申し遅れました。わたしは木下藤吉郎秀吉。浅井さんと同じく、戦国武将ゲームのプレイヤーです。以後お見知りおきを」

「……フーム。げぇむぷれいやぁとな……フーム」


 ちなみに朝倉さん(この人)は戦国武将ゲームのプレイヤーじゃない、この時代の人。


 にしても、なんでフームを繰り返す?

 なんでジロジロ眺めて来るの?

 たぶん答えは簡単。戦国時代にピンクのパーカー着た子なんていないし。わたしくらいのもんだろし。……って思うコトにしよう。


 出迎えた浅井のご一党と肩を並べて奥座敷へ。わたしも後に続く。


 一歩前を行くのは前述の織田御市さん。

 小さいなりなのに、煌びやかな打掛け小袖の当世流着流しスタイルを決め、一際目立っている。(わたしと別のイミで)。わたしってもしかしてTPOセンスが無いなのかな?


「徳川家康さんは?」

「あ、少し遅れるそうです」

「どーして?」

「あー、なんでも調べ物をまとめてたら出遅れたと」

「調べ物? 何の?」

「えーと。さぁ? 済みません」


 目まぐるしく表情を変えつつ振り返る彼女は、廊下を歩いてる間、矢継ぎ早の質問を重ねた。何故か竹中半兵衛さんの人柄から、わたしの好物まで聞かれた。


 大評定の場に列席した顔ぶれは次の通りだ。敬称略で紹介すると。


 まずはわたしたち、木下陣営から竹中半兵衛を筆頭に、武田信繁、旧武田遺臣の穴山梅雪、内藤昌豊、真田昌幸が参加。他に古参の前野将右衛門と前田又左衛門、今川家から移籍した坂井大膳と斯波義銀。当家新鋭の石田三成、仙石秀久、長束正家、増田長盛、山内一豊。あと、腐れ縁の香宗我部イチゾーこと加藤清正も引き連れ居並ばせた。わたしの傘下に入った本願寺顕如も同席してくれている。


 浅井家陣営からは、当主の浅井長政、そして織田御市、朝倉義景、宿老土方歳三こと遠藤直経、そして近頃軍門に下った六角承禎が参加。


 さらに徳川家より、後から来る予定の徳川家康、客将今川氏真、井伊直虎、水野雪霜こと水野勝成。


 続いて北条家からは北条氏康、宿老北条幻庵、北条五色備筆頭の北条綱成。

 上杉家から、上杉謙信、それと後継候補の上杉景勝と腹心の直江兼続。


 織田の陣営では、維蝶乙音こと織田美濃をはじめ、参謀将の明智光秀、堺奉行平手政秀、水軍将九鬼嘉隆、それから蒲生氏郷、斎藤道三、滝川一益、荒木村重が揃い踏みだ。


 そして最後に上座に、改名した足利義昭、そばには細川幽斎藤孝が家宰役で鎮座している。


「織田信長どのは欠席か?」


 上杉謙信さんが尋ねると、織田美濃が気まずそうに、


「アニサマは所在不明です」


 と正直に答えた。


「つい先日、詫び文と称した手紙でわたしたちに宣戦布告をした張本人だもんねー。そりゃ来るわけ無いかぁ」


 織田御市さんが嘆息した。宣戦布告は飛躍し過ぎの解釈……と思いたい。


 会は竹中半兵衛さんによる状況説明から入った。


「当家の真田昌幸および石田三成。織田家の平手政秀どのと斎藤道三どの。また上杉家の直江兼続どのと徳川家の密偵集団。これらの方々からの情報を総合的にまとめた見解です」


 と断り、


「西国覇者の毛利、長宗我部、島津の三氏は、備中(びっちゅう)以西をほぼ掌握、上洛軍を催す手はずを整えています。さしずめ幕末の薩長同盟に加え薩長土同盟というところでしょうか、我々同様、強固な軍事同盟を結び、互いに連携力を高めながら京の都を目指す目論見のようです」

「上洛の目的は?」


 北条幻庵さんの質問。


「京におわす天皇家を奉り、天下の一統を果たす事かと」

「それも幕末の尊王攘夷と似てるね」

「尊王はとにかく攘夷はこの場合当てはまらないかと」


 そ、そうなの?

 ハズカシイ発言しちゃった?


「備中って何だ?」


 質問者は北条氏康くん。


「地域の名前です。岡山県の西あたりです」


 おお、わたしと同レベルの人いた。それ実は、わたしもちょっとピンと来てなかったんだよねー。


「予想では島津と毛利の進軍は山陽道から。これは軍道を整備している事から推定されます。そして長宗我部は海路。瀬戸内を航行し淡路経路を念頭に軍兵を駐屯させるための砦を構築中との情報があります。先遣隊として大坂湾に姿を見せる日はそれほど遠い未来では無いでしょう」


「それぞれの軍の数は?」

「それは……あくまで推定ですが、現在の彼らの動員兵力から未支配地域の残存反抗勢力に対処するための兵数を差し引き、島津が恐らく1万、毛利が2万、長宗我部が5千――と言ったところでしょうか」


「合わせて3万5千か」

「思ったほどの数じゃないよな」


「いや。侮ってはいけません。例えば毛利は、両川と呼ばれる吉川元春と小早川隆景を柱に据え、強固な団結心で繋がっています。しかも彼らは硬軟併せ持つ歴戦のツワモノです。加えて島津家当主の島津義久と3人の弟たち、義弘、歳久、家久らは島津四兄弟と恐れられ、いざ彼らが戦場に立つと、足軽たちは名を聞くだけで逃げ散り、大将らは震えあがるという話です」


「それならうちにも上杉謙信さまがいらっしゃる。なんせ軍神だからな」


 上杉景勝が誇らしげに横やりする。そーだよ、良く言った。


「なにおう。うちのナガマサ……あー、いや、浅井長政だって負けてないゾ!」


 御市さん、別に張り合わんでもいいデス。


「――で、海路を攻める長宗我部は? いったいどう対抗するんだよ?」


 発言者は九鬼嘉隆さん。織田水軍の柱だ。


「瀬戸内には海賊、村上水軍がいます。現在引き込み工作を行っていますがどうも思わしくありません。彼らは元々毛利寄りの立場をとっていますから」

「尾張の湾に沈んだ黒船と戦艦長門は?」


「そう簡単に引き上げられるかよ! もう昭和国や平成国から道具は取り寄せられねーんだぜ?」


 そうだ。コインシャワーでの行き来はもう一切できないんだよな。

 帰れなくなってもうずいぶん経つけど、元の世界はどーなってんだろ。


「おい、お前ら。オレを置いて話を進めるな。オレは仮にもお前らの宗主だぞ」


 足利義昭()()のイラ立った声。


「だいたい、さっきから聞いてれば天皇を祭り上げて天下一統って事ぁ、室町幕府を否定するって事じゃねーの? そんなの、何としても阻止しろよな」

「ご発言の趣旨は理解しますが、正直今のあなたさまはただの放浪者、居候の身の上。我々の切り札にもなりますが、下手をすればひたすらジャマなだけの存在にもなり得ます。どうぞご静粛に」


 辛辣な言葉を発するのは石田三成。

 彼は物怖じしない性格……なんだが、今のはただの暴言だ。


「コラァ、三成! いいや、佐吉! いくらゲームプレイヤーでも将軍候補を捕まえて放浪者とか、ジャマっ気とかはカワイソウだろーが! 」


 待ていイチゾー、アンタも大概よ!


「失礼しました! 話を続けてください」


 三成のアタマを押さえつけ、とりま全力でお詫び。ただ彼はわたしには素直で、申し訳なさそうに「済みません」と深謝した。かたやイチゾーはソッポを向いてふんぞり返り。こ、コイツ。


「足利義昭さま。あなたさまが抱く焦燥はみなも同じです。まずは早く京に赴き、将軍宣下を上奏しましょう。西国勢力の機先を制するのです」


 竹中半兵衛さんが言うと、一同の目が上杉謙信さんに集まった。

 意を理解しコクリと首肯する謙信さん。


「京ノ都は現在、我ら上杉が責任を持ち御護りしています。安んじられてご上洛ください」


 織田美濃ちゃんが横目で彼をにらむのを、わたしは見逃さなかった。


「木下さま。御一同さま。徳川家康さまがご到着されました」



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