表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結御礼】戦国武将ゲーム! 豊穣楽土 ~木下藤吉郎でプレイするからには、難波の夢を抱いて六十余州に惣無事令を発してやります~  作者: 香坂くら
第3部 天下争奪編 京坂動乱 ~東軍盟主を引き受けるからには天下分け目の天王山で勝ってみせます~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

138/187

009 木下藤吉郎陽葉(3) 大坂を得る


 竹中の半兵衛さんが合流してくれた。

 石山本願寺の本願寺顕如に、先の当方の失態のお詫びと、あらためて石山の地を譲ってもらうためだ。


 延焼が広範囲にわたり、奥御殿をふくむ多くの建物を失った彼は、奥さんの如春尼と一緒に仮の御殿に移り、そこでわたしらを迎えた。


「あのさ。はじめに言っとくと、ボクらは木下家と雑賀家に何の疑いもウラミも持ってないよ? むしろ、全面的に協力したいって思ってる」

「……は?」


 如春尼さんがわたしたちの前に手紙を差し出した。

 達筆すぎて読めんので前将さんを頼った。


「――織田信長どのの犯行声明文じゃな」


 差し出し人は織田信長の殿。

 手紙によれば、今回の暴動はすべて自分が勝手に仕出かしたことで、本願寺に危機意識を持って欲しかったからだという事。結果的に沢山の人を死なせたこと、木下藤吉郎に迷惑をかけたことは反省しお詫びする――というものだった。


「僭越ながら」


 半兵衛さんが意見する。


「信長どのは半分本音、半分ウソを語っていましょう。わたくしが考えるに、彼の御方の思考はこのようなものではないかと」


 現代と行き来できた頃、半兵衛さんは大量に地図を買いあさっていた。それらを広げつつ説明を始めた。


「信長どのは西国大名を上洛させるおつもりでしょう。それに先立ち摂河泉の総合武力を測り、可能な範囲でそれらを削いでおく。そう思われたのではないかと」


 ただ信長さんは西国大名に勝たせたいわけでもなさそうだ。と半兵衛さんが続けた。


「それじゃあ、半兵衛どのは信長どのがどのような思惑を抱いていると申しておるのか?」


 広い肩幅を揺すりつつ前将さんが問う。


「おそらくは。日ノ本全土の総武力を高めようとしているのでは? と」

「日ノ本全土の?」


 あくまでそれは推測で、その理由は判然としない。半兵衛さんはそう締めくくり発言を終えた。


「上方が混乱しているスキに上洛しろと、毛利や島津に檄を飛ばしてるってんだな?」


 イチゾウの言に半兵衛さんが深くうなづいた。


「堺の津田宗及(そうきゅう)どのからの情報では、毛利と島津が正式に同盟を結びました。いわゆる織田どのが申しておりました【薩長同盟】の成立です。四国の長宗我部も巻き込んで大軍を催すであろうことは疑いもありません」

「毛利元就さんや島津の反対派は?」


「どうも……。毛利元就どのはすでに亡くなられたか、完全に隠居なさったようです。また島津は島津義久どのが実権を握り、九州各地の強豪を次々に討ち果たして、まさに旭日の勢いだそうです」

「確かその島津義久って人も、戦国武将ゲームのプレイヤーだったよね」


「ええ……。義久どのの弟にあたる島津義弘どの、歳久どのもプレイヤーです。そして、聞くところによると、島津義久どのは明治維新の立役者であった西郷隆盛、義弘どのは薩摩の軍師と言われた伊地知正治、歳久どのは明治政府の重鎮、大久保利通という話であります」

「……えらく壮大だね。そんなのがいたら近隣諸大名はタジタジだ」


「まさに。――肥前国(現佐賀県および長崎県)を本拠に、一時北九州の覇者になった龍造寺隆信どのは、すでに島津一党によって滅ぼされ、プレイヤーカードも奪われています。豊後国(現大分県)の王だった大友宗麟どのも先の戦で大敗し、カードの譲渡と島津への臣従を迫られています」


 本願寺顕如さんがわたしの手を取って泣きついた。


「頼む。大坂の地(ここ)をやるから何とかしてくれ。これ以上、如春尼たちをアブナイ目に遭わせたくない! もちろん、ボクも!」

「如春尼()()って何よッ! そこはわたし一択でしょう?!」

「ボクにはたくさんの愛すべき女の子たちがいるんだ。彼女たちに悲しい思いをさせたくない。如春尼、キミだってそうだろう? 面白楽しく、ボクと暮らしたいよな?」

「そりゃ……。てーか、いつまでその女の手ぇ、握ってんのよッ!」


 ……たはは。

 こうもたやすく大坂が手に入ったのも拍子抜けだけども……。

 今後の方策を色んな人と相談して決めて行かなくちゃ。


「お嬢、どーする?」

「そーだね……。ひとまずこの地に大坂城をつくるとしよう。石田三成さんに連絡とれる? 彼女にお城づくりを任せるよ」


 石田三成さんは最近わたしの部下になった戦国武将ゲームのプレイヤーで、わたしに憧れて仕官したんだって。変わってるよね。


「あと、仙石秀久くん、長束正家くん、増田長盛さん、山内一豊くんにも手伝ってもらおう。石田さんと一緒に上坂するように伝えて?」


 彼ら彼女らも全員、新規採用した後輩たち。妹の恋のクラスメートもいて、全員プレーヤーで、現代に帰れなくなったクチだ。ちなみに長束くんと増田さんはカップルで、仙石くんと山内くんは親友同士。大坂はこれから紛争地帯になるかもだけど、離ればなれにするわけにもいかないし、チームワークを期待したいところ。


「――恋どのはいかがする?」


 恋は現在、甲斐国(現、山梨県)で武田兄弟たちと内政に明け暮れてもらってる。

 北条さん、上杉さんとの連絡拠点でもあるし、当面はそのままいてもらおう。


「東神連合の緊急会合を開くよ。場所はそーだな……小谷城にしよう」

「小谷城?! 浅井の居城か。それはまた突飛な」


 小谷城に例の足利義昭さんがいるのは聞き知ってる。

 そこで開催する意義は大きいと思う。


「場所は小谷城。日時は明後日の正午から」


 プレイヤーカードを見詰めたわたしは、東神連合面々のカオを思い浮かべながら、招待メールを送った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ