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行いの責任

 いきなりのことで俺は動揺して棒立ちになっていた。


「なっ! ちょ、ちょっと待って、誤解だ!」

「黙れ、痴れ者。よくもアーダルベルト様に傷を!」


 赤髪の女性は更に踏み込み上段に振りかぶる。

 本当に真剣で俺を斬るつもりだ!?


「ま、待てアンネ。その方はー」


 アーダルベルトの制止も聞かず、と言うか、最初から全く聞く耳を持たず、俺に剣を振り下ろす。


「ひぃ!」


 無駄と解っていても反射的に頭を庇って両腕でガードした。

 昔、料理でミスって包丁で手を切った事がある。

 結構深く切ってしまい、5針縫った。

 あの時も血がどっくどっくと流れ、本当に自分の身体にはこんなにの血が流れているんだと怖くなったものだ。

 振り下ろされる剣はあの包丁の比じゃない。

 あんなので斬られれば、俺の腕も、頭も、その先は考えたくない。

 身体が動かない、くそ、最近訓練をサボっていたからとか関係なしに、命を奪われる危険状態に身体が反応できないでいた。

 走馬灯なのだろうか、剣の軌道はハッキリと見える。

 それがもっと恐怖心に拍車をかけ、目を閉じた。

 誰もが悲劇を予想した。

 だけど、そうはならなかった。

 剣と俺の腕が接触した瞬間、剣の方がガシャーンという金属音と共に、バラバラに砕かれた。


「なっ」


 赤髪の女性も周りの人間も、もちろん俺自身も、起こった現象が理解できず、呆然とした。

 だけど、すぐに立ち直ったのは当のアンナと呼ばれた女性騎士だった。

 彼女は飛び散った金属破片で所々裂傷が付いているにも関わらず、怒りと若干の恐怖が入り混じった表情で俺を見ると、今度は拳を握った。


「この、化け物め!!」


 化け物。


 或いはそれは斬りつけられるよりも俺の心に鋭い傷として突き刺さった。

 俺が、化け物。

 客観的に見れば、その呼び名は酷く正しい。

 一撃で100キロはあろうかという巨体のアーダルベルトを吹き飛ばし、剣での一撃も武器の方が粉砕する。

 それは人間の枠組みに留まるものじゃない。

 だけど、だけど、そんな力、好き好んでもらった訳じゃない!

 激しい怒りが込み上げてきたが、女性に暴力を振るおうとは思わなかった。

 むしろ、アンナと呼ばれる赤髪の女性は俺を殴りかかろうしていたが、彼女の身が心配になった。

 怖いと思った。

 剣の方が壊れるなんてとんでもない身体になった俺を殴ったら、この人の骨が折れるんじゃないか?

 結果的に俺は女性を傷つけたことになる。

 その時、この女性は俺をどう思うだろう?

 化け物度合いは更に上昇し、本格的に恐怖の対象となるかもしれない。

 もし、怯えた目で見られたら俺は・・・


「止めんか、このバカ者がぁーーーーーーーーーーー!!」


 だが、俺の不安は杞憂で済んだ。

 アーダルベルトがアンナを一喝し、アンナの振り上げた拳を掴んで止めた。


「た、隊長? 何故止めるのです? この者は隊長を傷つけた無法者で」

「大バカ者め。 何故事態を把握する前にいきなり斬りかかった! これは姫様の命令であり、白夜殿には一片の責もないのだ」

「・・・え?」


 アンナは何がどうなっているのか理解できずに硬直した。


「この方をどなたと心得ている。姫が最後の希望として異世界より召喚した勇者殿であるぞ。その方に剣を向けるとは、何たる恥さらしな」

「そん、な」


 アンナは欠けた刀身を落とし、放心した。


「姫、この者の処罰は?」


 エリーザは目を閉じて、酷く辛そうに口を結ぶ。


「致し方ありません。これ程の失態、このままにしておく訳には参りません。アンナ下級兵。処分は追って知らせます。それまでは地下牢で沙汰を待ちなさい。アーダルベルト、貴方にもその責を負ってもらいますよ」


 え?


「御意に」

「お、お待ちください姫様。責は全て私に。隊長にはなんの咎もありません!」

「控えよ、アンナ下級兵」

「で、でも」


 二人は激しく言い争いを始めた。

 この場合ってどうなるの? 自宅謹慎とか降格じゃ済まないよな? つまり、この女の人とアーダルベルトは、斬首。

 ブルリと身体が震え、自然に声が出た。


「ち、ちょー」

「待て、エリーザ」


 そんなエリーザの決定に意を唱える人物がいた。

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