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夏、照りつける。

今回、夏休みの話を書かせて頂きました。季節感真逆で申し訳ないですが楽しんでお読みいただければ幸いです。

入学してから少し時が経ち、今年ももう暑くなる季節が始まった。夏休み、ある者は家でグダグダと過ごしまたある者はバイトに追われて全く休めぬ日を過ごす、これはそんな日の話だ。


「で、結局の所どこまで進んだの。」

この日、聖と胡桃は問い詰めるように楓奏を囲んでいた。ちなみに夕美はバイトだ。

「どこまでって何がさ、こないだ買ったパズルならもうその日に終わったけど…」

楓奏はキョトンとした顔でそう答える。だが二人の求める答えはそんな事ではなかった。はぁ、と二人はため息をつく、そして楓奏をキッと睨んで聖はこう問い詰める。

「夕美の事!まさかなんの進展もないの!?」

楓奏はその言葉にびっくりして思わず叫んでしまう。そしてなんでそんなの知っているのさ、と聞くとまた二人は同時にため息をついた。

「楓奏、いくら俺でも気づくぞ…」

と、胡桃が言うと楓奏は唖然とした。そんなに分かりやすかっただろうか、とそう思っていた。

「とにかく、今は夏休み!時間はたっぷりあるしイベントもいっぱいある!海やプールに夏祭り!花火大会で告白するのもよし、それに大穴で山なんて手もある。動くならいまだぞ、楓奏。」

親友からのその言葉に楓奏は動揺した。海に、水着姿の夕美を想像し、更に夏祭りという言葉に浴衣を想像した、更に山なんて手もあるなんて言われてしまえば汗だくになって笑う夕美を想像する他なかった。そしてそれを想像する楓奏の顔は思いのほか気持ち悪い笑みを浮かべていた。二人はその顔にあえて触れず、楓奏に叱咤激励を浴びせた。そうして今回、四人で海に行く計画を打ち立てたのだった。


「青い空!照りつける太陽!広く壮大な海!最高だー!!」

今回、一番テンションが高かったのは楓奏を差し置いて胡桃だった。海は初めてだ、と言いながら走り回ってすぐ海に飛び込んでしまった。

「あぁ、もう…あの馬鹿迷子になる気がするしちょっと二人で遊んでて。」

聖はそう言うと怒りながら胡桃の方へ走って行っててしまった。当然楓奏と夕美が二人、そこに置き去りになる形だ。楓奏の心臓はバクバクと音を立てていた。すぐ隣には夕美が水着を着て立っている、それを思っただけで心臓の音は鼓膜を突き破りそうなほど大きくなっていた。

「あのさ、楓奏。」

夕美がそう言って肩をトンと触れた途端びっくりした楓奏はひゃあと変な声を出してしまった。それを見て夕美は少しびっくりしてから笑っていた。それを見て楓奏は少しこそばゆい恥ずかしさを感じつつ安心した。夕美はそれを感じ取ったかのように手を握って海の方へ楓奏を引っ張った。

「楓奏、ほら折角だから海に入ろうよ。」

そう言われると楓奏は満面の笑みで海に走っていった。

「楽しんでますなぁ、楓奏くん。」

「えぇ、そうでござりますなぁ聖さん。」

そんな二人の様子を遠くからこの二人は見つめていた、傍から見たら変な人だ。だがそんなことをさせてしまうほどにあの二人は眩しかった。


そうやってはしゃいでいれば数時間でへとへとになるのは当然だ。四人全員、すっかり遊び疲れてしまっていた。

「お昼、どうするんだ?」

楓奏がそう聞くと聖が折角だし何か買ってここで食べようと提案し、それに賛成した三人は二人ずつに分かれ飲み物と食べ物を買うことにした。聖と胡桃はここぞとばかりに楓奏達を二人にする為、さっさとご飯を買いに行ってしまってその場には二人だけが残された。

「そう言えば、夕美の敬語も最近めっきり聞かなくなったな。」

そう楓奏が懐かしんで言うと夕美はふふっと笑った。また聞きたいんですか?とそう言った夕美の顔は少し意地悪そうな顔をしていた。


軽く歩くと自販機のある場所に着いた、そこまで遠くもなくありがたい、と思いつつもう少し遠ければよかったのにと思う楓奏がそこには居た。割と近かったな、と楓奏が言うが夕美からの返事はなかった。

「…夕美?」

夕美の顔を覗き込むように楓奏は彼女に呼びかけた。すると彼女はすっと真面目な顔つきになってこう言った。

「楓奏、私楓奏にずっと言いたかったことがあるの。」

楓奏はその言葉を聞いて、あるはずもないと思いながら少しの緊張を感じた。まさか、と思いつつ楓奏は夕美になにを、と聞き返した。

「あの時は、ありがとう。楓奏が居なかったら私また一人になってたかもしれない。」

そんなこと、と楓奏は返す。すると夕美は首を横に振ってこう続けた。

「私は高校に入ってからずっと聖のことが好きだった、聖が居てそれからみんなが居た。だから……楓奏、あなたがいて本当によかった。あなたをもっと知りたい。でもね、私はまだ聖のことが忘れられない。まだ付き合うなんて出来ない。」

夕美はフッと笑ってこう言った

「だから……待ってて。楓奏がそれを許してくれるなら。」

僕は夕美に笑い返した。戻ろうか、と彼女の手を掴んだ。僕の買ったいちごミルクはいつもより甘くて少し胸焼けがした。

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