無言の返答
人生は一期一会。誰もが持っている、生まれた時から決まっている運命をねじ曲げる運命を。
「んでさ、そん時.......」
「へぇ〜そうなんだぁ〜」
今日も放課後いつもの教室で集まって駄弁りだすようないつもの風景。の、はずなのだが。
「それでどうなったんですか。」
今日はいつもの風景とは少し違っていた。
「えー.......それよりさ、なんで二人がいるの?」
楓奏がそう聞くと聖と夕美はきょとんとした顔でそこに座っていた。まるでそこにいるのが当たり前かのようにハテナを浮かべて二人を見ていた。
「なんでって、同じ釜の飯?食べた仲じゃん。」
ラーメンは釜でつくらないよ、なんてツッコミを喉の先で止めつつ二人は顔を見合わせた。暫く二人はアイコンタクトで話し合ったが胡桃のまぁいいかといった表情で結局その静かな議論は終わりを告げた。そしてそれを見透かしていたかのようなタイミングで聖は話し出した。
「それにしても夕美が男の子と授業以外で普通に話すの初めて見たなぁ」
そう言えばそうだな、といった表情で夕美は考え込んでいた。その流れに乗って胡桃がいつもは男子と話さないの?なんて聞き出した。
「うん。話してないよねあんまり。てか三人同じクラスじゃん。クラス違うの私だけだよ。」
そこで三人全員えっ、と声を出して驚いた。あんたまで気づいてなかったのか、とため息をついて聖はこう言った。
「んじゃ三人に課題を出そう!明日一日お互いが授業中何してたか確認し合うこと!あとクラスメイトの名前ぐらい覚えなさい!」
突然の課題に戸惑いつつ三人は渋々承諾した。その日はそれで解散になった。
次の日、課題通り三人は授業中お互いを監視、もとい確認することになった。胡桃はそれを寝たら忘れたようでいつも通りシャーペンをくるくると回しながら授業を受けていた。カツカツと先生のチョークが黒板を叩く音が聞こえる。先生が問題を書いては生徒にこの問題がわかる人、と聞くいつもの授業だ。
「誰も手ぇあげないな…来栖!どこ向いてんだ、女子見てないで黒板見なさい。」
そこでドッと笑いが起こる。なにがって一番笑っているのが胡桃というのに楓奏は一番イラつきを感じた。しかし夕美は我関せず微笑みながら外の風景をチラリと見てペンを走らせていた。
「田中…さん?さっきの授業何書いてたんだ。」
授業の間の休み時間、楓奏は夕美の所にいた。
「夕美でいいです。というかそんなの迄見てたんですね来栖くん。」
楓奏でいいよ、と返しつつ楓奏は夕美にもう一度同じことを聞いた。見たいんですか?とボソッと口にして夕美は机からタイトルのないノートを取り出した。それを受け取って楓奏はパラパラとノートを見だした。
「上手いな…これ、聖か?」
えぇ、とだけ夕美は答えてノートを取り上げた。スクッと急に立ち上がって夕美は教室から出ようとした。どこ行くんだ、と楓奏が聞くと答える必要は無いと言わんばかりに無視を決め込んで夕美は教室から出ていった。
「見てた?今日のお互い!」
聖が元気よく聞くとやはり忘れていたようで胡桃はあっと声を出しそれで…と今日の楓奏の行動を思い出していた。報告して、と聖から言われた時、楓奏は何故か絵のことを言う気にはなれなかった。何か言ってはいけないことかのようにそのことを一切言えなかったのだ。その帰り際、夕美に引っ張られた楓奏は隣の教室に連れ込まれていた。
「なんで言わなかったんですか、ノートのこと。」
そう聞かれて楓奏はどう答えることも出来なかった。何となく、本当にただなんとなく言えなかったからだ。何故か、と聞かれてしまうとなんでもさとしか返せないような感情だったからだ。まぁいいです、と帰ろうとする夕美の腕を楓奏は咄嗟に掴んでしまった。なんですか、と当然夕美が聞いてくる。
「えっと、そうだな…好きなのか…?」
自分でも何を言っているか分からなかった。夕美は何も答えず腕を解いて二人の元に足早に行ってしまった。
ただそこに残ったのは何とも言えない感情と取り残された自分自身だけだった。




