スピカ
あの日もこんな晴れ晴れとした空だった。道行く人は笑ってたり泣いてたり、はたまた疲れ果てた顔をしていたり。色んな人が色んなことをして回っている。
「三宅くん、今日は確か久々に高校の友達に会うんだよね。僕あとやっとくから行ってきな。」
「店長すみませんありがとうございます!お疲れ様です!」
街角の服屋から人一倍元気な声が聞こえてくる。聖は高校を卒業してから服飾の専門学校へ入学し、大好きだったファッション業界に身を置いていた。周りにはあいつの腕はいいだの将来有望だなどと言われているが決して調子に乗らず、堅実に着々とその腕を磨いていた。高校を卒業して早五年、四人全員が集まるのは卒業式以来だった。このSNSが普及した時代、チャットやDMで話すのは毎日出来るが会うとなるとやはり全員仕事尽くしでなかなか予定が合わず結局5年も経ってしまったと言う訳だ。集合時間よりちょっと早かったか。みんなまだ来てないかな、などと呟きながらキョロキョロと聖は周りを見渡した。
「あ、聖!もう来てたのか!」
そう言って集合場所に駆け寄ってきたのは胡桃だ。胡桃は高校卒業まもなくして聖の叔父のラーメン屋に就職、今や二代目を約束された身だ。何故そこにしたのかと問うと実は一度食べに来てからその味がクセになりラーメン屋をやりたくなったそうで、店主にそれを話したところうちで働かないかと誘われたそうだ。店主曰く、こいつのラーメンは俺のより美味い、だそうでやはりその理由は小さい頃から家で料理をしていたからだろう。そうして二人で少し
話していると楓奏と夕美もやって来た。
「みんなごめんな、せっかくのイブなのにさ。」
胡桃がそう言うと聖は元から予定なんてないよと苦笑した。一方、その隣で夕美と楓奏はどうせ今日も明日も仕事だから変わらないよと笑った。
「とりあえずお店を予約してるから先にそこ行こっか。」
夕美がそう言うとみんなうなづいて店の方に向かった。
「そう言えば楓奏はいま高校教師やってるって聞いたけど夕美は仕事とかしてるのか?」
そう胡桃が聞くと夕美は鞄の中から一冊の本を出した。実は夕美は高校に在籍している頃からちまちまと毎日小説を書いていて今回やっとの思いで初めての文庫本を出すことが出来たそうだ。それも楓奏が支えてくれたおかげなどと惚気を始めると聖はいじけたような顔で夕美の頬をぐりぐりと人差し指で刺していいなぁ、と言っていた。店に入りしばらくしてから料理と酒が運び込まれてきた、そうして四人は片手にグラスを持ってこれまでのことを少し思い出していた。
「これまで色々なことあったけど、これからも俺たち四人、ずっとこう合りたいな。四人の門出と夕美の初出版を祝って、乾杯!」
そう胡桃が言うとほかの三人も続いて乾杯、とグラスを掲げた。そうやって四人で酒を飲み交わし、飯を食べて、ちょっとした世間話や昔話、最近の事なんかを延々と話した。いつまでもずっと、晴れた夜空に光るあのスピカのように、青く淡い四ツ星は今もまだ輝いていた。そしてこれからもずっと
「.......輝き続けるだろう。」
そう最後の文字を原稿用紙に書き終えて夕美はパチンとクリップで完結した小説を束ねた。
短い間でしたがご愛読ありがとうございました。いかがだったでしょうか。今作はこれで最後となりますがまた次の小説などもお読みいただければ幸いです。ではまたお会いしましょう。




