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夜空に集って

たまには泣きたい夜もある。たまには息が切れるほど笑いたい日もある。人はいつだって自分の決めたことをして生きている。それが人の為でも、自分のためでも、悩み苦しみ考え抜いて行く道を選んでいる。


府立光岡高等学校、通称"ミッコー" 総生徒数264名、一学年三クラスの何の変哲もない総合学科の高校で特別馬鹿という訳でも進学校という訳でもないよくある高校だ。入学式も終わり5月の初め、そろそろ学校生活にも慣れ始める頃だろうか、放課後教室で二人は話し合っていた。

「んじゃあさ、今度学校終わりにでもラーメン食いに行こうぜ」

行儀よく席に座ったまま話し出したのは芦田胡桃(あしだくるみ)、こんな名前だからか、はたまた顔が中性的だからかよく男か女かと間違われている。天然パーマなこともあり周りからはくるくると呼ばれており、また元気でいつも走り回っていることもあり自他共にピッタリなあだ名だと認められている。一緒に話している青年は来栖楓奏(くるすかなで)、一人の時は楓奏とそのまま呼ばれているが胡桃と一緒にいる時はクルクル兄弟と呼ばれていた。本人は特になんとも思ってはいないようだ。

「あぁ、いいね。そうだな、どこかこの辺でおすすめの店とかある?」

楓奏がそう聞き返すと胡桃は困った顔をしてこの辺何があるかまだわかんねぇんだよなと呟いていた。暫く二人で悩んでいるとグイッと間に割り込んで来て、何の話してるの?と一人の女の子が話しかけてきた。三宅聖(みやけひじり)というその少女は興味津々、交ざりたそうな顔でそう言った。

「あー、っと三宅さんだったよな。今度の放課後二人でラーメン食おうぜって話してて.......」

「ほんと!私も行きたい!」

聖は食い気味に楽しそうな顔をして軽く飛び跳ねつつそう言った。二人は困ったような顔をして女子一人と男子二人でってなぁ、といったような顔をしていた。だが聖はその悩みを見透かしていたかのように「友達一人連れてくから!お願い!」と深々と頭を下げてきた。そんなことまでされて断るのも悪いと思って二人は渋々了承した。これが高校三年間をずっと共に過ごす友達との出会いだとはこの時はまだ誰も知る由はなかった。


当日、聖はあまり乗り気でなさそうな女の子を一人連れてきた。

「もー、聖ってばほんと勝手なんだからさぁ。」

なんて呟きながら引っ張られて彼女は連れてこられた。二人は誰だろうと思いながら顔を見合わせたりしていた。

「おまたせー!約束通り友達連れて来たよ。ほれ自己紹介をせよー!」

いかにもテンションマックスといったような感じで聖が友達の肩をペチペチと叩くと彼女は自己紹介を始めた。

「えー、と田中夕美(たなかゆみ)です。今日はよろしく.......ってか今日何するんですか。」

それを聞いてあれ?言ってなかったっけ?と聖は首を傾げる。若干のグダグダさを感じつつ楓奏が細かく説明すると夕美はあぁそれで、と勝手に納得してしまった。聖はニッと笑って、私行きたいお店あるの!と夕美を引き連れて早々に走り出してしまった。俺らの企画なのになぁと思いつつ二人はあとを追いだした。


到着した場所は少し汚れた如何にも気難しそうな店主がやっていそうな店だった。聖は勢い良くドアを開けるとおじさん来たよ!と大きく手を振る。

「ここ、三宅さんのおじさんがやってるとこなの?」

と楓奏が聞くと聖でいいよ。と言って返した。

「お友達かい?すまんねぇ、どうせこいつ勝手に連れて来たんだろ」

と店主は困った顔をして笑った。いや、と胡桃が答えるのに目もくれず早く座りなよと聖は奥のテーブルの前に座り手招きをした。早く行かないと機嫌悪くなっちゃいますよ、と夕美は呟き店主に軽くお辞儀をするとさっさと座ってしまった。それを見て二人も軽くお辞儀をすると焦って夕美の後を追っかけて座った。

「ここのラーメン美味しいんだよ!塩?醤油?それとも味噌?」

とこなれた風に聖は三人に注文を聞いて店主に伝えた。よく来るの?と二人に楓奏が聞くと聖は月一は来るかな、と答えた。

「えーと、田中さんは?よく来るの?」

そう聞くと夕美まさか自分に聞いているかと思っていなかったかのように驚いた。

「いえ、私は初めてです。と言うかさっきから気になっているのですがお二人は聖と仲が良かったのですか?」


「いや無理矢理割り込んできたっつーか、なんつーか.......」

と胡桃は言葉を濁すとふーん、と呟き何か警戒するように夕美はこちらをじっと見つめていた。なんとなく話す言葉に困り少し沈黙が流れた。そしてその沈黙を壊すようにドンっとラーメンが運ばれてきた。

「味噌二つと塩と醤油一個ずつだね。唐揚げおまけしとくよ。沢山食べて育ちな。」

店主はニッと笑って厨房へ帰っていった。

いただきますと手を合わせて四人は各々一口、口に含んだ。胡桃が美味しい、とつぶやくと聖は店主と似たような顔でニッと笑った。


とてつもなく美味かったそのラーメンの味は今でも覚えている。

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