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禁忌のメイガス  作者: Ι
No.2.5 story break
6/18

we swear the "avenge"

三日だ。


この三日間はただただ無に溶かした。

何も手につかなかった。


作戦から本部に帰ってきて二日。

失敗したという事実が頭から離れない。

一時とはいえこちらが優勢であったことも、その事態に一層の拍車をかける。


直前までは行ったんだ……!!


悔しさばかりがこみ上げてくる。

自分にもっと力があれば、

きっと作戦も成功していただろう。


『ハワード中尉。

 16:30までにC棟801室までお越しください。』


壁に着信音と共にテキストが表示された。


いよいよか…


俺は嫌いだった。

あの部隊にいるのが。

自分が、このカイン=ハワードが特別でないことを見せつけられる。


俺は好きだった。

あの部隊の連中が。

憎しみの存在理由を見つけられる。


このE棟からC棟までの距離はさほど遠くない。

約束の時間まではあと1時間ほどあるし、

もう少しゆっくりしようと思った。


だが、この三日間心が休まることはなかった。

いつもちらつく。

あの白い機体。

落ち着こうと思う度、

あの戦闘がフラッシュバックする。


あいつのせいだ…


俺はコクピットから見ていた。

あの奇跡を。

いや、悪魔の所業と言うべきか。


おそらく今回の議題もそれだろう。


くそっ!!

あいつのせいで思い出してしまう。


あの独立の日を。


目を閉じれば見えるだろう。

灰が。雲が。炎が。

戦う理由が。


憎しみが。


俺はあの日に思いをはせる。

決していい思い出ではないのに、いつまでも浸り続ける。

さもなくば存在理由を見失いそうになる。




気が付けば45分も経過していた。

最近こういうことばかりだ。

自分を肯定するために時間を使いすぎる。


俺は少し急ぎ目に部屋を出てC棟へ足を運んだ。

今日に関しては少し足が重い。

当たり前だ。

心当たりが多すぎる。


俺は大きくため息をつきながらエレベータに乗り込んだ。 

目的地が近くなるほどあの戦闘を想起する。

頭はもうそれしか考えられなくなっていた。



気が付けば俺は801室の扉の前にいる。

約束の時間まではまだ7分ある。

あの連中の中では早いほうだろう。

そう思いながら少し臆病気味に扉を開けた。


驚いた。

あの自己中の塊みたいな連中が全員いるじゃないか。


俺が少しあっけにとられていると、奥でふんぞり返っているライルが言う。


「やっと来たぜ。戦犯様がよぉ!!」


図星をつかれたので若干心に痛みが走る。


「やめてあげなさい。彼は懸命に働きました。

 何せ彼はまだレプリカが使えない。」


ヘンリーは俺を庇う様にライルに反論した。


その言葉で気を悪くしたのかライルはヘンリーにつっかかる。


「レプリカが使えねぇってことは、一般人と変わらねえってことじゃねえか!!

 そんな奴がこの隊で何ができるってんだ?

 あ?」


「やめろ。二人とも。」


一番奥に座っていたルークが場を沈めた。

続けて俺にこう言う。


「お前はまだアークフォトンが完全に馴染んでいない。

 レプリカがまだ発現していないのも当たり前だ。

 それに、それを承知で今回の作戦を立てたのは俺だ。

 だから私はお前を責めたりはしない。

 気を悪くしないでくれ。」


「それでも。 

 

 俺があいつを仕留めていればよかった話だ。

 結局、原因は俺にある。」


俺はそっけない返事をして席に着いた。


こういうことも慣れっこだ。

この部隊でレプリカを使えないのは俺一人。

さらに、ここでは俺が一番新人だ。


故に、色々と言われる。

言ってこないのは彼女、シェリーくらいのものだ。


「今日集まってもらったのは他でもない。

 先日の作戦のことだ。」


ルークのその言葉を聞いて全員の目が変わる。

 

「我々は性能実験も兼ねて13機のタブー機それぞれにCODEを1機ずつ向かわせた訳だが、

 結果は映像で見てもらった通りだ。

 奴らの4機の新型の投入。

 作戦は失敗し、我々はCODEを4機も失った。

 それのパイロットたちもな。」


「しかしあんたも人が悪いな。

 ほんとは予測してたんだろ?

 こうなることを。

 だから()()()()()()だったんだろ?」


ロイズは煙草をふかしながらそう聞いた。


それに関しては俺にも思うことがある。

我々が束になってかかれば一点を突破して対空シールド内に侵入することは容易だったはずだ。

だが今回の作戦、それをしなかった。

答えは今になってわかる。

これが被害が()()()()()()()()()

それを彼は作戦開始前から見抜いていた。

流石は"神を堕とした男"というところか。


「どうだかな。

 とにかく新型の中でも特にあの白い機体には謎が多い。

 タブーなのかどうかも含めてな。」


「性能実験はもう終わりだ。

 あの機体もろとも島を落とすぞ。」


その言葉を聞き、全員に緊張が走った。

それが戦いの合図だったからじゃない。

それが底が見えない深い闇に飛び込むことだったからだ。


俺は心の中で誓った。


今度こそ、


今度こそ俺は…… 

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