we swear the "avenge"
三日だ。
この三日間はただただ無に溶かした。
何も手につかなかった。
作戦から本部に帰ってきて二日。
失敗したという事実が頭から離れない。
一時とはいえこちらが優勢であったことも、その事態に一層の拍車をかける。
直前までは行ったんだ……!!
悔しさばかりがこみ上げてくる。
自分にもっと力があれば、
きっと作戦も成功していただろう。
『ハワード中尉。
16:30までにC棟801室までお越しください。』
壁に着信音と共にテキストが表示された。
いよいよか…
俺は嫌いだった。
あの部隊にいるのが。
自分が、このカイン=ハワードが特別でないことを見せつけられる。
俺は好きだった。
あの部隊の連中が。
憎しみの存在理由を見つけられる。
このE棟からC棟までの距離はさほど遠くない。
約束の時間まではあと1時間ほどあるし、
もう少しゆっくりしようと思った。
だが、この三日間心が休まることはなかった。
いつもちらつく。
あの白い機体。
落ち着こうと思う度、
あの戦闘がフラッシュバックする。
あいつのせいだ…
俺はコクピットから見ていた。
あの奇跡を。
いや、悪魔の所業と言うべきか。
おそらく今回の議題もそれだろう。
くそっ!!
あいつのせいで思い出してしまう。
あの独立の日を。
目を閉じれば見えるだろう。
灰が。雲が。炎が。
戦う理由が。
憎しみが。
俺はあの日に思いをはせる。
決していい思い出ではないのに、いつまでも浸り続ける。
さもなくば存在理由を見失いそうになる。
気が付けば45分も経過していた。
最近こういうことばかりだ。
自分を肯定するために時間を使いすぎる。
俺は少し急ぎ目に部屋を出てC棟へ足を運んだ。
今日に関しては少し足が重い。
当たり前だ。
心当たりが多すぎる。
俺は大きくため息をつきながらエレベータに乗り込んだ。
目的地が近くなるほどあの戦闘を想起する。
頭はもうそれしか考えられなくなっていた。
気が付けば俺は801室の扉の前にいる。
約束の時間まではまだ7分ある。
あの連中の中では早いほうだろう。
そう思いながら少し臆病気味に扉を開けた。
驚いた。
あの自己中の塊みたいな連中が全員いるじゃないか。
俺が少しあっけにとられていると、奥でふんぞり返っているライルが言う。
「やっと来たぜ。戦犯様がよぉ!!」
図星をつかれたので若干心に痛みが走る。
「やめてあげなさい。彼は懸命に働きました。
何せ彼はまだレプリカが使えない。」
ヘンリーは俺を庇う様にライルに反論した。
その言葉で気を悪くしたのかライルはヘンリーにつっかかる。
「レプリカが使えねぇってことは、一般人と変わらねえってことじゃねえか!!
そんな奴がこの隊で何ができるってんだ?
あ?」
「やめろ。二人とも。」
一番奥に座っていたルークが場を沈めた。
続けて俺にこう言う。
「お前はまだアークフォトンが完全に馴染んでいない。
レプリカがまだ発現していないのも当たり前だ。
それに、それを承知で今回の作戦を立てたのは俺だ。
だから私はお前を責めたりはしない。
気を悪くしないでくれ。」
「それでも。
俺があいつを仕留めていればよかった話だ。
結局、原因は俺にある。」
俺はそっけない返事をして席に着いた。
こういうことも慣れっこだ。
この部隊でレプリカを使えないのは俺一人。
さらに、ここでは俺が一番新人だ。
故に、色々と言われる。
言ってこないのは彼女、シェリーくらいのものだ。
「今日集まってもらったのは他でもない。
先日の作戦のことだ。」
ルークのその言葉を聞いて全員の目が変わる。
「我々は性能実験も兼ねて13機のタブー機それぞれにCODEを1機ずつ向かわせた訳だが、
結果は映像で見てもらった通りだ。
奴らの4機の新型の投入。
作戦は失敗し、我々はCODEを4機も失った。
それのパイロットたちもな。」
「しかしあんたも人が悪いな。
ほんとは予測してたんだろ?
こうなることを。
だから一人一体ずつだったんだろ?」
ロイズは煙草をふかしながらそう聞いた。
それに関しては俺にも思うことがある。
我々が束になってかかれば一点を突破して対空シールド内に侵入することは容易だったはずだ。
だが今回の作戦、それをしなかった。
答えは今になってわかる。
これが被害が最小限で済むからだ。
それを彼は作戦開始前から見抜いていた。
流石は"神を堕とした男"というところか。
「どうだかな。
とにかく新型の中でも特にあの白い機体には謎が多い。
タブーなのかどうかも含めてな。」
「性能実験はもう終わりだ。
あの機体もろとも島を落とすぞ。」
その言葉を聞き、全員に緊張が走った。
それが戦いの合図だったからじゃない。
それが底が見えない深い闇に飛び込むことだったからだ。
俺は心の中で誓った。
今度こそ、
今度こそ俺は……