arise (first order)
「今の内だ…!!」
ハンドルを握り直し、上体を起こそうと操作する。
だが、
「どうした…!?」
俺の心と対をなすように機体はピクリとも動かない。
スラスターを使おうにもうまく作動しない。
態勢のせいなのか、レイウイングの損傷が原因なのか、とにかく瞬間的な出力が出ない。
まずい。
ますいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい。
光の波に吹き飛ばされた藍色の機体は態勢を立て直し、今再びレールガンをこちらに向ける。
身が凍り付くのを感じた。
背筋には嫌な感覚と汗がびったり張り付いている。
このままでは死ぬことくらい5歳児でもわかる。
銃を突き立てられたものは死ぬ。
当然の道理だ。
目を閉じること数秒。
祈りはしない。
神など信じる価値はないのだから。
ただ時刻変化的違和感が俺に気づかせる。
「どういうことだ…!?」
一向に撃たれない。
相手は銃をこちらに向けたまま、硬直しているようにも見える。
『この光は救済の光。何人たりとも傷つかず傷つけない。
傷つけようとすればその行動は世界から拒まれる。平和の象徴。
それがこのタブーに刻まれた意味。』
タブー…
俺はその言葉の意味を考えながらロックされている自分の武器を見つめた。
10秒程経っただろうか。
その藍色の機体はおとなしく銃を下ろし、その場を去っていった。
行く先は島と反対方向。
とりあえず何とかなったと考えてもいいだろう。
俺は緊張が解け、同時に安堵した。
『敵撤退を確認。
敵が射程外へ出たことでTaboo Systemを解除します。』
「…待って。」
いきなりコクピットに響く女の子の声
通信…?
いったいどこから…?
アクセス源は…
!?
Project Hope…!?
「あなたにはやるべきことがもう一つある。
だから解除しちゃダメ。」
「どういう…」
俺がたずねようとした瞬間、コクピット内のアラートが鳴る。
『高速物体接近。距離12。
望遠モニターにより観測。
形状をネットワークの候補より照合。
処理しています。
完了しました。
対象の正式名称はN-417 スプリガン
弾道核ミサイルです。』