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禁忌のメイガス  作者: Ι
No.1 split of fate
2/18

origin period (second order)

メイガス。

それは15年にも及んだ第三次世界大戦を終わらせた兵器。

そして独立記念日を作った機体。

俺たちの…



正直自信が無かった。

そして今の状況も全くと言っていいほど把握していなかった。


だけど、ここに鳴り続けるアラートが俺の体をつき動かす。

あいつの言葉が俺をコクピットへ。


俺はあれに乗らなければいけない。


揺れる地面、上から聞こえる確かな爆発音。

そのすべてが脳を揺さぶるように繰り返す。


あいつが使えと言ったんだ…

乗れる…


この機体は乗れるはずなんだ…!!


気が付けば俺はコクピットに座っていた。

初めて座るはずなのに、どこか懐かしい気がする。


「大丈夫。大丈夫…」


そう念じながら俺はカードをスロットに差し込んだ。


差し込んだ瞬間、ディスプレイに光が灯る。


『新人類拡張戦闘補助AI、ノルン起動に成功しました。

 バイオメタリクス認証完了。

 パイロット:ノア=フィルツェン

 メイガス起動シークエンスに移行します。』


アナウンスと共にコクピットは完全に機体へと収納されていく。

コクピット内は仮想粒子で満たされていき、俺の体を固定用の器具が覆う。


『フォトニックスーツ着用を確認できませんでした。

 スーツ着用状態とみなし、プロトコル01から26移行。

 シークエンス127の処理を短絡化。

 接続プロセス02を実行します。』


最後に残った背後の器具がゆっくりと脊髄に近づくのを感じる。

次の瞬間


「い゛っっ!!」


背筋に悪寒と激しい痛み。

これが生体回路をつないだ間隔…

スーツを着ればもう少しましなのだろうか。


『システムオールグリーン。

 メイガス Project Peace起動します。』


その白い人型兵器の20mはあろう巨体が動き始める。

目には光が灯り、体の各部位に光の線が入った。

ボディイメージが完全に機体に移っていることを改めて実感する。


『カタパルトデッキに移動開始。

 同時に各制御機構、冷却システム、プロトコルすべてをスキャン。

 スラスター、フォトンスプレンダー、レイウイング共に異常無し。

 光電子カタパルト電圧規定値を突破。

 カタパルト開放完了。

 射出タイミングをパイロットに譲渡します。』


「了解。

 機体のロックをすべて解除。


 …行くぞ!」


その瞬間その白い機体、Project Peaceはカタパルトの中で加速していく。

体にかかるGが現実感を助長させ、やがて空中へと飛翔するのを肌で感じる。


『メインウイング、レーザーコーティングチェーンブレード展開完了。

 出力安定。座標、制御共に速度、加速度に影響無し。

 オーガナイズシンクロシステム若干の誤差あり。

 修正を完了。

 目標、間もなく接触します。』


島の上空に射出された俺は今起こっていることを視野角に確かにとらえていた。


「どうなってんだ…」


あちこちで瞬くような閃光と身が震えるような轟音が現れては消えるを繰り返していた。

それはまるで世界の終末を彷彿とさせる光景。

体を這うように鳥肌が覆う。


その中で最も俺の意識を掴んだものがそこにいた。


「ザイレウス…!!

 どうやって…!?

 ここはシールド内部だぞ!!」


モニターには7機の人型兵器。

応戦しているとみられる量産型メイガスは尽く壊されていく。


しかも7機のうちたった1機。

藍色の禍々しい雰囲気を放っている機体。

あの機体に大半は破壊されていった。


『目標補足確認。

 最大出力上限リミッター解除。

 同時にライセンスn…』


ノルンの声などもう聞こえていなかった。


俺は察する。

こいつだ。

こいつは不条理そのものだ。


こいつのせいで…



「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


俺は無我夢中でその藍色の機体に突っ込んだ。

目標へと近づくにつれ自分の速度が上がっていくのを感じる。 

スラスターの出力は全開。

チェーンブレードの回転する音と自分の鼓動が混ざり合い、俺の意識を遷移させる。


もう少しだ。

もうすぐでその外装ごと貫ける。

これで決別だ。


「ぐっ!!」


機体を襲う強い衝撃。


受け止められたのか…!!?

この距離で…!!


互いのブレードが摩耗する音が空に溶けていく。


なぜここからびくともしない!?

なんなんだあの機体!!

まったくどこまで不条理なんだ…!!


その藍色の機体は易々とチェーンブレードを薙ぎ払うと左手に装備していたレールガンを俺の目の前に合わせた。


「まずい!!」


俺は左右のレイウイングのスラスターをそれぞれ逆方向へ噴射し、機体を急速回転させる。

発射された弾丸はコクピット横約70㎝を通過し、海の彼方へと消えていく。


回転の勢いのまま、続くブレードによる2撃目を渾身の力で薙ぎ払った。


その時だった。

周りを四方八方から飛んできた弾がいずれも機体をかすめ、飛んでいく。

撃ってきたのは他の6機のザイレウス。


「邪魔をするなぁ!!」


俺は一発分しかないカートリッジ式のホーミングレーザーを作動させた。

翼から出た5本の光の線が藍色を除く6体のザイレウスの腹部を貫く。


機体が爆発四散する音と閃光、煙が視界を覆う。


どこにいる。

どこからくる。

正面か?後ろか?それとも左右どちらかか!?

考えろ!!


煙が晴れるにつれ、辺りの視界が戻っていく。


いない。

前後左右どこにもいない。


まさか!?


機体を襲う二度目の衝撃。


くそっ!!

反応が遅れた!


そう俺は斜め上からの攻撃に対応しきれなかった。

攻撃は受け止めたものの、そのまま流され島の岩肌へと激突する。


『右腕部に軽度の損傷。

 ライトレイウイングに重度の損傷。スラスター出力20%ダウン。

 敵機ブースターの上昇を確認。』


「あの機体、さらに出力を上げられるのか!?」


俺にとっては想定外だった。

とっさにブースターを噴射しようにも、離れない。

その間にも、機体のあちこちからエラーメッセージが表示される。


このままでは…


頬から嫌な汗がしたたり落ちる。

機体が崩壊していっているのを脊髄で感じていた。



ほんの少しでもいい。

なにか……




『権利移行第一段階完了。

 これにより認証によるTaboo Systemの発動が可能になりました』


ノルンのその声を聴き終わると同時に、おれはその声にしがみつく。


「なんでもいい!!

 やってくれ!!」


『了解しました。

 認証を開始します』


正直ぎりぎりだ。

あと一秒かかるようなら、おそらく右腕は完全に折れる。

それは操作している俺が一番わかっている。

そして右腕が完全に折れた時、それはこの命が尽きる時だ。


だから頼む…



『認証完了。

 Taboo System No.14を作動します。』


メインモニターに"Taboo"の文字が表示される。


「なんだ…!?」


自分でもやったことに理解できなかった。

ただ必死だった。


自機の装甲が展開され、各部のジェネレーターが露出し、そこから出た光の波が広がっていく。


目の前の藍色の機体は光の波に飲み込まれ数十メートル吹き飛ばされた。



「なんなんだよ…これ…」


俺の単純な疑問にノルンが答える。


『これがメイガス Project Peaceに与えらたタブーとしての機能。』


「タブー…」


タブー。

確かにノルンはそう言った。

俺はそこで改めて考えるべきだったのかもしれない。

この機体に乗ることの本当の意味を。

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